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無気力系戦乙女  作者: オリオン
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ポッカリと空いた穴

……夢、何故夢を見たのだろう。

悪夢を見る覚悟は出来ていたが、まさか…こんな夢を見るとは。

なんとも懐かしい夢だろうか。


「……」


目を覚まし、目の前に見えるのはただの天井だった。

私の心は何処か穴が開いてしまった様な感覚だ。

昔の夢というのも、何処か虚しくなってしまうな。


「あら、おはよう」

「お、おはようございます」

「はい、もう料理も出来たわ、かなり疲れていたみたいね」

「あ、ありがとうございます」


もうすでに用意されているとは…何故、ここまでしてくれる?

寂しいからとは言え、ここまでするのは…

とにかく食事を取るとしよう。


「ねぇ、エリス」

「……」

「エリス?」

「あの、何故私の名を?」


私はヘルに自分の名を告げては居ない。


「あぁ、それはリリアスから聞いたからよ

 大事な弟子が居たって、それがエリスという戦乙女だってね。

 で、あの子があなたの師匠だって事は、ま、あなたが師匠と呼んだからね」

「なる程」


師匠はヘルに私の事を告げていたのか…少し嬉しい。


「それでエリス、あなたってなんだか強いわよね」

「え?」

「もしかして、誰にも甘えたりしてない?」

「なん…そんな事は」

「無理しなくて良いわ、強いって大変だもんね。

 そのイメージを維持するために、誰にも甘えることも出来ないし

 誰かに甘えようとしても、変な目で見られる」

「そんな事はありません…」

「だからね、エリス、私には甘えても良いのよ?」

「何を…」


ヘルは私の方に近付いて来て、下を向いていた私の顔を起こし

私に顔を近付けてきた。


「あなたは強すぎる故に誰にも甘えることが出来ない。

 でも、誰にも甘えることが出来ないって言うのは辛いでしょ?

 だから、あなたは私に甘えても良い、誰かに甘えても良いのよ?」

「わ、私は…私は…」

「辛い事も沢山あったでしょ? 思い通りに行かないことも沢山。

 その度に、誰かに甘えたいとか思ったりしたでしょ?

 でも、あなたは誰にも甘えることが出来なかった」

「……」

「当然、今だって甘えたいと思ってるでしょ?」

「……」


甘えたい…そんな事を感じた事は…感じた事なんて…1度も…

1度だって……


「失敗したとき慰めて欲しい、怪我をしたときに心配して欲しい。

 そうは思ったことはないの?」

「…あ、ありません、そんな事、1度も…

 甘えるなんて、誰かに心配を掛ける事なんて、決して」

「ふーん、そう、まぁ良いわ、変な事を聞いたわね」

「い、いえ」

「それじゃあ、食器を片付けた後に仕事に戻るわね」

「はい、ありがとうございます」


ヘルが部屋から出た後…私はベットの上でしばらく時間を過した。

やることも無く、ただ部屋で過すだけ。

その間、私の頭は考える事を止めなかった。

何もすることがないから、考える事は止まらない。

もしもを考えても意味が無いと言う事くらいは分かってる。

だが、どうしても、そのもしもを考えてしまう。


「……」


もしも母が病では無く、元気だったら…私はどう育っていたんだろう。

母に甘えることも出来て、自分がやりたいことを見付けて。

その為に努力して…素直な性格だったのだろうか。

他の子供達と楽しく会話をしたり、学園でも友を沢山作っていたんだろうか。

……もしも、もしも…神々が母を救ってくれていれば…

私は、こんなにも無気力にはならなかったのかも知れない。

幸せに、常に笑い、母と共に料理を作ったり、ケーキを食べたり。

美味しくご飯を食べたり…お買い物に行ったり…母に…怒られたり、褒められたり。

もしも戦争がなければ、そこも父も居て、家族3人でご飯を食べに行ったり。

家事をしたり、一緒にショッピングをして。


「……あぁ」


だが、こんな事を考えても、私の目から涙などはこぼれない。

きっと、もう私の涙等は枯れてしまったのだろう。

母が死んだと、そう告げられたあの時に。

私は…独りぼっちになった、独りぼっちに。

今の私には家族など居ない、母も父も居ない。

姉や兄も妹も弟も居ない…もしも、私に兄妹が居たらどうなっていたな。

姉が居たら、一緒に母の看病をしていたかな。

妹が居たら、母と妹のお世話をしていたかも知れない。

兄が居たら、一緒に剣の稽古をして。

弟が居たら、一緒に遊んでいたのかも知れない。

今も、1人でこんな事を考えていなかったかも知れない。

姉に甘えて、姉の為に努力をして居たかもな……


「いや」


そうだったな、私には妹が居たか、可愛い妹。

血の繋がりなどは無いかも知れないが、私の可愛い妹、ニール。

今、ニールは大丈夫だろうか。

いや、メアリーが居るから大丈夫か。

巨人と戦いになって、怪我などはしてないだろうか。

心配という感覚は、こんな感じなのか。

母がいつも私の事を心配だと言っていた、その感覚がこれか。

確かに不安になる…そうだな、不安というのは辛い。


「…あぁ、もうこんな時間か」


ずっと何かを考えていると、いつの間にか遅い時間になっていた。

初めてだ、こんなにも時間の経過が早いと感じたのは。

とにかく、今日も風呂に入った後に寝よう。

このまま起きていても、何も得ることは無いからな。

だが…また夢を見たりしないだろうか。

少しだけ不安だ。

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