懐かしい記憶
「…お母さん、大丈夫?」
「うん、心配掛けてごめんなさいね」
お母さんは凄く身体が弱い。
それは昔からみたいだけど、最近はいつもにマシて酷くなっていた。
お父さんも…死んじゃって、お母さんもあまり動けない。
だから…だから、私が頑張らないと!
「えっと、えっと…これを切って…痛い!」
うぅ…今まで料理なんてしなかったから、指を切っちゃった。
急いで絆創膏を貼って…よし、頑張るぞ!
「痛い!」
…ただお野菜を切るだけで、5箇所も指を切っちゃった。
でも、なんとか切ることが出来たし、次だよ!
「お母さん…」
「あら、どうしたの? エリス」
「ご、ごめんなさい…お料理、こ、焦げちゃった…」
うぅ…真っ黒になっちゃった…折角、お母さんの為にお料理を作ったのに。
これじゃあ、お母さんがご飯を食べられないよ…
「あらあら、ふふ、エリス、ありがとうね」
「だ、だけど!」
「大丈夫よ、お母さんは怒ってないわ。
痛かったわよね、エリス…こんなに指を切っちゃって」
「良いの…私の事は、それよりもお母さんの方が…」
「何言ってるの? 私はエリスの方が大事なの」
「……」
「だけどエリス、痛かったら泣いても良いのよ?」
「…いや、私は泣かないよ」
私は泣かない、泣いて、お母さんに心配を掛けたくないから。
「本当に強いわね、だけど、それだけが心の強さじゃないのよ?」
「…うぅ」
「それじゃあ、エリス、そのお料理を私に頂戴?」
「え!? でも、焦げちゃって…」
「大丈夫よ、美味しそうですもの」
「お、お母さん…」
お母さんは私が作った料理を美味しそうに食べてくれた。
美味しいわけがないのに、美味しそうに私の料理を食べてくれた。
「…お母さん」
「何?」
「私、絶対に美味しいお料理を作るから! お母さんの為に頑張るから!」
「…ありがとうね、エリス…だけど、無茶はしないでね?
大変だったらお母さんに言ってね?」
「うん!」
お料理だけじゃない、お母さんはいつも洗濯物も干してた。
大変だったはずなのに、洗濯物やお料理、その全部をやってた。
お父さんが死んじゃう前は、お父さんがしててくれたみたいだけど…
お父さんは、もう…居ない…だから、私が頑張るんだ!
お母さんの為に頑張らないと!
それから2年、私はなんとか料理も出来るようになった。
洗濯もお母さんのお着替えも出来るようになった。
「お母さん」
ずっと、お母さんの為に頑張った。
お母さんが元気になるように必死になって頑張った。
だけど、お母さんの状態は悪化する一方だった。
このままだと、お母さんの病気は悪化するだけ。
「……」
どうすれば助ける事が出来るのか…村の人達全員に聞いて回った。
だけど、皆、治す方法はないって嘘を吐く。
本当はある筈なのに、皆嘘を吐く。
「教えて! 助ける方法! なんでもするから!」
「そう言われてもね……」
「教えてよ!」
「……えっと、難しいし、大変だし…何があるか分からない方法なら」
「何でも良いから教えて! お母さんを助けるの!」
「…えっと、エリスちゃん、あの…戦乙女って聞いたことあるかい?」
「戦乙女?」
「あぁ、バルハラの神々に付き、魔物を退治したりする神様なんだよ」
「え?」
「その戦乙女になる事が出来れば、神様達に話をして
運が良ければ…助ける事が出来るかも知れない」
「本当!? なる! 私、戦乙女になる!」
「ただ、強くないと…戦乙女になる事は出来ないんだ。
バルハラ学園と言うのがあると聞いたことはある。
そこに入学するときに多少強さを見せれば
もしかしたら、神様達が声を掛けてくださるかも知れない。
その時にお願いをすれば…もしかしたら」
「強く…なれば良いんだね!」
「うん、でも、そんな簡単な事じゃ」
「大丈夫!」
これでお母さんを助けることが出来るかも知れない!
強くなって! 強くなって、お母さんを助ける!
でも、強くなる為には剣が無いと駄目!
「駄目よ」
「え? でも」
「絶対に許さないわ! エリス!」
…初めてお母さんに怒られた、戦乙女になるために剣が欲しいって言ったら。
「ご、ごめんなさい、やっぱり剣は高いから…」
「違うわ!」
「え?」
「剣が高いとか、そんな事はどうでも良いの! そんなのどうだって良い!
だけどエリス! あなたが…あなたが危ない目に遭うのは絶対に許さない!」
「でも、でもお母さん! そうしないと、お母さんが!」
「私の事はどうでも良いの! あなたさえ元気でいてくれたら、私は死んでも!」
「嫌だ! 私は嫌だ! お母さんが死ぬのは嫌だ!
お母さんは自分勝手だ! お母さんは私が危ない目に遭うのは嫌だって言うのに
私がお母さんに死んで欲しくないって言ったら別に良いって言う!
お母さんが居なかったら、私、生きてても寂しいだけだもん!」
「…駄目よ、駄目、絶対に許さないわ!」
「お母さん! 私、絶対にお母さんを助けるために強くなるんだ!
強くなって、戦乙女になって! 神様にお願いするの! お母さんを助けてって!」
「駄目よ、私の為に、あなたが自分の人生を棒に振るうなんて許さない!」
「…お母さんが、お母さんが許してくれなくても! 私は! 私は戦乙女になる!
そして、お母さんを助けるんだから! 剣を買って貰えなくても、お願いして貰うの!」
「………なんで、分かってくれないの? エリス…私は、あなたを心配して」
「私、お母さんを助けるためなら、なんだってするから!
私は、お父さんみたいにお母さんを護るんだから!」
初めてお母さんと喧嘩した…だけど、お母さんの為に頑張る!
「……もう、止めても駄目…ね」
「私、絶対にお母さんの為に強くなるの!」
「……分かったわ」
お母さんは納得してくれたみたいで、私に剣を買ってくれた。
剣は本当に重たくて、持つのも大変だけど、強くなる為に頑張る!
「えい! えい!」
お母さんのお世話をする時以外は、ずっと剣を振る。
それだけで強くなれるかは分からないけど、これ位しか分からない。
最初は凄く重たかった剣だけど、ずっと剣を振っていると軽くなってきた。
だけど、それだけ…これだけで、私は強くなれるのかな?
でも、やるしか無いんだ! 頑張ってお母さんの為に強くなるの!
「えい! えい! …はぁ、はぁ、あ、日が暮れてる、急いでお料理作らないと」
「…なぁ、君」
「は、はい!」
だ、誰かに肩を叩かれた、私はビックリして後ろを向いた。
そこには黒い髪の毛にピンクの瞳、そして、白い鎧を着た大きな人が立ってた。
腰には剣が…もしかして、この人って!
「君の訓練を見ていたのだが、剣を振るだけでは強くはなれないぞ?」
「え、えっと…あなたは…」
「おっと、自己紹介がまだだったな、私は戦乙女、リリアス」
「戦乙女!」
「そこに食い付いたと言う事は、君が強くなろうとしている理由は
戦乙女になるためか」
「はい! 私は戦乙女になります!」
「…何故、戦乙女になりたいんだ? その理由を知りたい。
お金が欲しいからか?」
「違います! お母さんを…お母さんを助けるために! 私は戦乙女になるんです!」
「お母さんを? どうしたんだ?」
「お母さんは…病気で…治す方法がなくて…でも、神様なら方法が分かるかも知れないって。
だから、戦乙女になって、神様にお願いするんです! お母さんを助けてって!」
「……そうか、良いだろう」
「え?」
「君、名前は?」
「エリスです、エリス・ビスキック」
「ならばエリス、私が稽古を付けてやっても良い」
「本当ですか!?」
「あぁ、だが、私の訓練はかなり辛いぞ、大怪我をするのも間違いない。
とても大変なのも間違いないし、もしかしたら死んでしまうかも知れない。
だが、確実に強くなると言う事は保証しよう…どうだ?」
「やります! 私、強くなりたいです!」
「…良いだろう、では、私の事は師匠と呼べ」
「はい! 師匠!」
絶対に強くなるんだ! 絶対に! お母さんを助けるんだから!




