師の剣
さっきとは違った…少しずつ重くなっていく剣。
「ふん!」
「うぁ!」
くぅ…吹き飛ばされた…かなりの傷を与えているのに。
何故? 怪我をしていけば行くほど、師匠は強くなっていく!
「あぁ、懐かしい、なんとも懐かしい感覚だろう。
過去、お前に剣の稽古を付ける度に感じた感覚。
強くなっていくお前を見て、負けないように自分を奮い立たせていた感覚」
師匠の眼差しは、過去、何度も何度も敗れていた時の力強い眼差しになっていた。
あの間に何があった? いや、そんな事はどうでも良い。
「ふ、ふふ…」
嬉しい…あぁ、なんて嬉しいんだろう。
理由はどうでも良い、理由は何だって良い。
私は……私の目の前にいる師匠は…あの時の師匠!
「心が躍る、何度も超えようと思い続けていた剣
その剣が今、私の目の前にある!
師匠! 私はあなたを越える! 今! あなたを越える!」
「越えてみるが良い! 我が愛弟子! 師の背を越えてみろ!」
「はい!」
剣を構え、再び間合いを詰める。
「はぁ!」
「ふん!」
私の剣を師匠はすんなりと流した。
師匠は同時に私に攻撃を仕掛けようとしてくる。
「く!」
その剣を、私は防ぎ、後方に押し返された。
「ふん!」
「う!」
師匠は吹き飛ばされた私に接近し、剣を振るう。
私はすぐにその攻撃を防ぐが。
「どうした! エリス! さっきまでの勢いはどうした!?」
「く…うぅ…く!」
さっきとは違う、前、私は師匠の剣を押し返せていた。
でも…今は押されている、確実に師匠の方が弱っている筈なのに
それなのに私はゆっくりと師匠に追い込まれている。
「うらぁあ!」
私は一か八かの勝負で剣を滑らせ、師匠の剣と剣の間に自分の剣を入れ
大きくその剣を左右に広げた。
「ふ、良い判断だが」
「かは!」
師匠はすぐに私の腹を蹴り飛ばす。
「前にも言ったかも知れないが、戦いは剣だけでする物じゃない。
実戦は殺し合いだ、どんな手を使ってでも相手を屠れ」
「えぇ、言われましたよ」
ニールにもこの言葉を伝えた、どんな手段を使ってでも相手を屠れと。
師匠から教わった言葉。
「そうか、だったら反応が遅いと言うことか、まだまだだな」
「…まだまだ結論には早いですよ、師匠! まだ勝負は着いていない!」
まだだ、まだ私は師匠に負けたわけではない!
「威勢だけは良いな、相変わらずで安心した。
その根性も、その才能も、その実力も…その心も」
「私は負けない!」
一気に師匠に向って間合いを詰める。
師匠に対して防御に回るのは愚作でしかない!
単純な剣技も経験も力も師匠の方が圧倒的に格上だ!
そんな相手に防御は愚作! 攻めるしか無い!
「猛突な奴だな、しかし、私と同じ動きをしても、私は越えられない。
それは、前に教えただろう!」
「分かってますよ、分かってます!」
私は師匠に攻撃を仕掛ける瞬間に左方向に移動した。
正面から戦ってはまず勝つことが出来ないだろう。
だから、私は正面から戦う事は避ける!
「不意を突くつもりか?」
「そうなりますね」
素早く師匠に接近して攻撃を仕掛ける。
だが、師匠はその攻撃を軽く防ぐ。
私はすぐに師匠の横を通り抜け、再び激しく動く。
「だが、そんな動きをいつまでも続けられると思うか?」
「でしょうね」
何度も何度も同じ様に動き続け、師匠に攻撃を仕掛ける。
だが、師匠は私の攻撃を全て軽く捌いていた。
このままだと私の体力が尽きるだけ。
しかし、正面から打ち合うのは非常に危険だろう
「はぁ!」
「ふん」
師匠は私の剣を防ぐ、私はその剣に体重を乗せ後方に跳ぶ。
「お?」
そのまま師匠の背後に回り、すぐに攻撃を仕掛けた。
「ふふ」
「く!」
虚を突いた攻撃だったと思うが、師匠は私の攻撃を防いだ。
だが、少しだけ焦りの表情が見えた。
「ふ、そんな手で来るとは予想外だったぞ、エリス」
「……やはり、そう易々とは師匠は倒せませんか」
すぐに後方に飛び下がり、再び構え直した。
「さてどうする? 少し呼吸も乱れているようだが?」
「…ふぅ、やっぱり師匠は強いです、本当に」
「ふ、お前の師だ、そう易々と越えられてたまるか」
「でも、私はあなたを越えます!」
私はすぐに距離を詰めた、ここで勝負を仕掛ける!
一か八かの賭けになるのは間違いないだろうが!
「ふん、最後は単調な突撃か、まぁ、力比べというのも良いだろう!」
「正面から戦って、師匠に勝てるなんて最初から思ってませんよ」
私は力強く振り下ろされた師匠の剣を流して、カウンター攻撃を仕掛けた。
「ここでカウンターとは、また良い賭けだが」
腹を蹴ろうとする動作…前にもあった気がするな。
確かニールと鍛えていたときだったか。
あの時、私は師匠の立場だったと言う事だろう。
「最悪の事態を考えてない攻撃は」
「危険…ですよね」
「つ!」
私は師匠の蹴りを足で受け止め、その勢いを利用して空中で1回転。
そのまま着地と同時に間合いを詰めて、師匠を斬った。
「ぐ!」
「これも結局賭けでしたけど…私の勝ちでしたね」
「…ふ、初めてだな、お前が私に攻撃を加えたのは。
まぁ、私が暴走していたときには、何度も攻撃を加えれた様だがな」
「師匠、教えて下さい、何があったかを」
「良いだろう、だが、私に勝てたらな」
「えぇ、勝って見せます!」
必ず師匠を超える…師匠を助けるためにも、私は師匠を倒すんだ!




