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無気力系戦乙女  作者: オリオン
39/57

ターニングポイント

あの宴会から数ヶ月の時間が経過した。

中々にヘルへイムへの捜索許可は下りない。

私達はいつも通りに魔物を排除し、依頼を処理し続けていた。

そんな時、神々の間である遊びが流行っているという話を聞く。

確かバルトルと言う人物に物を投げる遊びらしい。

実際、やっている事はただのいじめでしか無いのだが

どうやらその人物は不死身だという話を聞く。

どんな物で刺されようとも痛くもなく死にもしないとか。

どうもオーディン様が生物や無生物に彼を傷付けないように約束させたとか。

しかし、そんな方法で傷付かずなると言うのはまた奇異な物だ。


「本当に怪我とかしないんですね」

「そうだな」


しかし、ダメージを与える事が出来ない物までは約束させてない気がするな。

意外と葉っぱとかには何も約束させてないかも知れない。

こう、ヤドリギとか、そう言う殺傷能力が無い植物とかな。

まぁ、確かにヤドリギで誰かを殺すなんて無理だろうな。

実際、全ての生物・無生物に約束させるなんて面倒極まりないだろう。

だが、顔も良く、身なりも良く、コネクションも素晴らしく。

更にはほぼ死ぬ事が無い人間か…随分と優遇されて居るな。

羨ましいとは感じないが、正直、そこまで恵まれていると

何をするにも成功していて、大して努力もしていないのに幸福とはな。

不幸のどん底にいたりする者からして見れば妬ましいを通り越して

殺意が湧きそうな程に恵まれているな。


「でも、なんで物を投げるんでしょうね、意味あるんですかね?」

「祝い事よ、特に理由はないわ」

「フレイヤ様も参加していたのですか?」

「まぁ、折角騒いでるわけだし…で、あなた達は参加しないの?」

「しませんよ、あのバルトル様は確かオーディーン様のご子息だとか。

 その様な方に物を投げるなんて、とてもとても」

「まぁ、確かに恐縮しちゃうわね」


しかし、オーディーン様は結婚していたんだな。

と言う事は、あの子はオーディーン様が生んだのだろうか。

しかし、オーディーン様の隣に居る方はたまに見るが

その方はいつも女の人に見えたんだが…女の巨人、フリッグ様だったか。


「それに、バルトル様はかなりのイケメンよね」

「はい、それは思いますね!」

「いけめん…と言うのは?」

「格好いいと言う事です!」

「格好いい? そうか?」

「格好いいでしょ? 何、女の子なのにそう思わないの?」

「えっと、格好いいというのは見た目だけでは…

 中身がしっかりとしていなければ格好いいとは違うのでは?

 私はあの方の中身は分かりませんし」

「あなたは顔よりも中身で選ぶタイプなのね」

「はい」


そもそも、誰かを見て格好いいなどと思ったことは1度も無いがな。

可愛いはあるんだが、格好いいというのは分からないな。


「本当、あなたはかなり美人なのにそう言う感じだから誰とも付き合わないのかしら」

「そもそもそう言うのに興味はありませんし…」

「うーん、あなたって恋とかした事あるの? 人間だった時代とかに」

「いえ、1度も、そもそもそんな余裕、私には一切ありませんでしたし」

「あぁ、確かにそうね」


母の看病と剣の稽古、後はニールの訓練、恋とやらをする時間は無かったし

そもそも、恋という物がどう言う物かさえも分からない。

たまに女の子達がそんな話をしているのを聞いたことはあるが

どの感情も私には理解不能だった。


「話は戻るのですが、私にはあの光景はいじめにしか見えないのですが」

「ま、まぁ、あまり状況が分かってない人が見たら

 完全にいじめというか、集団リンチという感じだけど

 でも大丈夫なのよ、バルドル様は怪我1つしないで」

「ば、バルドル様が!」

「え!?」


…どんな道具でも死なないというのに、バルドル様は血を流し倒れていた。


「なん!」


胸には小さなヤドリギの木が刺さっていた。


「そんな! どうしてヤドリギが!?」

「え!?」


まさか、あの不死性の弱点がヤドリギの木だったとはな。

まさか適当に考えた弱点が本当に弱点だったとは…

しかし、誰がそんな真似をしたんだ!?


「…何? 何がどうなったの?」


ヤドリギの木を投げたのはホッドというバルドルの弟様だったと言う。

だが、彼は盲目だという…どう考えても盲目では攻撃は出来ない。

場所が分からない状態で投げると言う事は考えにくい。

…じゃあ、誰が? 誰が何の為にこんな事をした?

確かに彼は命を狙われるような条件は十分あった。

神々に愛され、フレイヤ様やニーズまでもが格好いいと言うほどの美貌。

更にはどんな状況でも怪我をしないような身体を得ていた。

特に苦労をしたわけでも無く、自分の力で得たわけでも無い状況。

誰かが殺意を抱いてもおかしくは無い筈だ。


「…ん?」


あのホッド様の近くを少しだけ笑い、何処かへ移動していくロキ様が見えた。


「え、エリス先輩…ど、どうしました?」

「……ちょっと待ってろ」

「は、はい」


私はロキ様の後を追いかけた。


「ロキ様!」

「…あぁ、エリスか、どうしたんだ?」

「……えっと、聞きたいことがあるのですが」

「なんだ? 僕が答えられることならなんでも」

「…何故、バルドル様が死んだのに少し笑っていたのですか?

 何故、バルドル様にヤドリギを投げたホッド様の近くに居たのですか?」

「…やれやれ、君の観察眼というのはなんとも厄介だね」

「認める…と?」

「あぁ、そうだよ」


馬鹿な…何故ロキ様がそんな事をする?


「では、何故したかを教えてくれますか?」

「…気にくわなかったからさ」

「は?」

「考えて見なよ、何もしてないくせにあそこまでの美貌を持って生まれて

 何もしていないのに神々に愛され。

 更にはなんの努力も無くほぼ不死の身体を手に入れた。

 気にくわないだろう? 何もしてないくせに最上の幸せを手にするなんて」


確かに私も少しは考えた、何もしてないのにあそこまで幸福になったのは理不尽と。


「君も思っただろう? 君は生まれながらその美貌を持っていたが

 君は病弱の母を救う為に必死の努力をした。

 弱かった肉体に鞭を打ち、必死に鍛え続け

 母を救える可能性があるバルハラの神々に近付くために戦乙女を志した。

 だが、君の努力は報われず、君の母は命を落とす」

「……」

「何故必死に努力した君は報われず、何もしていないあの男は

 あそこまでの幸福を手にしたのか。

 君も理不尽を感じただろう? 何もしてないくせに

 何も出来ないくせに、誰からも愛され、誰よりも幸せな男」

「そんな事は…」

「殺したいと思うだろう? 何もしてないくせに幸せな奴なんて!

 だから、殺したのさ、その理不尽を壊しただけだ」

「何故…何故あなたがそんな事を…あなたは」

「神々が巨人を気にくわないから殺すのと同じだ。

 僕はバルドルが気にくわないから殺した…それだけさ」

「ロキ様!」

「…僕に剣を向けるか?」

「……オーディーン様に伝えねばなりません…ご理解を」

「名誉にも興味が無い君がかい? まぁいいや、勝てないだろうが

 抵抗も無く拘束されるのは僕の趣味じゃ無いんだ。

 だが、エリス、君も僕の言葉に全て共感できなかったわけじゃ無いんだろ?

 一切共感が出来なかったというのなら、そんなに動揺はしてないはずだ」

「か、神に向けて剣を構えているのです、動揺はするでしょう…」

「嘘が下手だね、君は」


……ロキ様の言うとおり、全てに共感できなかったわけでは無い。

私も考えていたことだ…少しも怒りを覚えていなかったというと嘘になる。

ロキ様の言うとおり、私は努力をしたのに報われず

努力をしてないバルドル様が報われているのは…おかしいと思っていた。

だけど…だからといって、あの人を殺して良い理由には…ならない!

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