足を治す方法
ミョルニルの奪還、それに成功することは出来た。
私はトール様に背負われながら、バルハラへ帰還した。
トール様の背中は本当に大きく、安定感が凄かった。
…何故だか少し嬉しい気持ちになった。
あぁ、まるで父親の背中だ…
「……戦いか」
父の死因はなんだったか、確か戦死だったと思う。
…戦争の種は色々とあった、何故戦争が起ったのか
多々ある可能性の中では分からない。
「…ねぇ、エリスちゃん」
「はい、なんでしょう」
「あなたは戦争ってどう思う?」
「…そうですね、ない方が良い事だと思います」
その戦争で命を落とした人を私はよく知っている。
私は運良く戦火は免れたが、師匠は戦争で親を失ったと言っていた。
やはり戦争は無くさないといけない…きっとスルズの本当のご両親も
戦争で命を落としたんだと私は思う。
やはり争いなんて物は無くなった方が良いと思う。
争いがあれば面倒事が増えるばかりだしな。
「それはなんでだ?」
「やっぱり、戦争なんてあったら…色々と面倒じゃないですか」
「め、面倒? この話題では初めて聞いた単語ね」
「戦争の度に人を集めるのも、戦争の後の後片付けも。
戦争で傷付いた誰かの傷を癒やすのも。
戦争でズタズタになった地形や国を直すのも、全部面倒でしょうし」
「はは、確かにそいつは面倒だな、でもエリス。
それなら全部がなくなれば、その面倒事は全部生まれないぞ」
「…いぇ、全部がなくなったら、面倒とかそう言うレベルじゃないでしょう」
「ま、確かにそうだけどね」
ロキ様の奇妙な笑顔、何を考えているのか分からないな。
トール様とのやり取りではそんな禍々しい気配なんて感じなかったのに。
「全く、ロキは本当に恐いことばっかり言うわね。
ま、私としても戦争はない方が良いと思うけどね」
「巨人を殺戮してるお前が言うのか?」
「害をなす物は排除するのよ」
「その考えが戦争の始まりだというのはちょっと考えれば分かるだろ?」
「全くもって正論です…」
「ま、お前が戦争をどう思おうと、戦争は終わらないのさ。
種族が違えば亀裂は生まれ、利害が一致しなければ殺し合いだ。
かといって、お互いに足を引っ張り続けてたら結局滅ぶ。
まぁ、つまり何が言いたいかと言えば、戦争を無くしたけりゃ
根本を断つ事だ」
「その言い方だと、種族が違う相手とか
邪魔な相手を全部排除しろと言ってるように聞えるけど?」
「……は、ま、そう言うことだ」
今の間は? 少しだけ気になってしまった。
何故少しだけ間があいた? 他の答えがロキ様の中にあったのか?
だが、その疑問を抱いたのは私だけで
トール様はそんな疑問は抱いてないようだった。
「それじゃあ、排他的すぎるし、競争も生まれないし」
「馬鹿だなぁ、戦争をなくす事と利益、どっちが大事なんだ?」
「うぅ…でも、利益とかそう言うのが無いと、結局滅びそうだし…」
「そうだ、だから戦争は終わらない、戦争を終わらしたければ何も生むな」
「難しい事言うわね、あなたは本当に意味が分からないわ」
「おいおい、お前は僕か? いくら仲がよかろうと相手を全て知ることは無理さ。
ま、僕はお前をお前以上に知ってるがな」
「何それ告白?」
「気持ち悪い事を言うな筋肉ダルマ」
「なぁ! 私だって女の子よ!? 気にしてんのよ!?」
「だったら鍛えるのを止めれば良いだろうが」
「いやぁ、ここまでゴリゴリになっちゃうと、筋肉を鍛えてないと
こう、お肉になっちゃうから、スタイルがね」
「安心しろ、今のままでも太ってもお前に言い寄ってくる奴は居ないだろうし」
「喧嘩売ってる? ミョルニルでぷっちゅんされたい?」
「ごめん! 言い過ぎた! だからミョルニルを構えるな!」
「分かれば良いのよ分かれば」
「やれやれ、そんなんだから脳筋とか言われるんだよ」
「あなたは特別に上半身を吹き飛ばしてあげるわ!」
「待った! 暴力は良くない! 少しはこう、言葉で僕を圧倒してみろ!」
「そう、だったら、殺されたくなけりゃ、黙って私の言う事を聞け」
「そう言う意味じゃない!」
は、はは…何だか本当にこのお2人は仲が良いな。
仲が良いとは違うような気がするけども。
「ふーん、まぁ、この話はここまでにして
ロキ、エリスちゃんの怪我を治す方法あるの?」
「あぁ、エルフ達に頼めば傷は癒やせるだろうな」
「エルフ? あまり交流無いけど」
「あいつらは魔法の担い手だ、戦乙女達のホーリーリリース
あの根本の作ったのがあいつらだ」
「そう言えばホーリーリリースの技に回復の技ってあったわね」
「あぁ、そんな技が使えるんだ
なら、その根本を作ったエルフなら可能だろう」
「よーし! じゃあ、このままエルフの所に行くわ!」
「トール様! 速すぎです!」
「…やれやれ、トールは本当に考え無しの脳筋だな」
私はトール様に運ばれて、エルフが住むというアルフヘイムへと連れて行かれた。
トール様の交渉は上手くは行かず…中々に治してはくれなかった。
少しずつトール様がイライラしていくのが分かる。
このままではエルフ達が大変な事になりかねない…
「ぐぬぬ! こ、こうなったら、このミョルニルで…」
「待てトール、そんなんだからお前は筋肉ダルマなんだ」
「な! ロキ! あんた今まで何処に行ってたのよ!」
「息が上がってるの分からないのか!? お前が無駄に足が速いせいで
必死に走って追いかけてきたんだよ! 本当にお前は全く!
そもそも、お前みたいな短絡的な奴に交渉なんて出来る物か!」
「なにぃ!」
「まぁ、そこで見ていろ、僕が本当の交渉というのを見せてやろう」
ロキ様はなれた口調でエルフ達に色々と交渉を始めた。
さっきまで殆ど話を聞いてくれなかったエルフ達だが
ロキ様の言葉には耳を貸し、私の怪我を癒やすことを了承してくれた。
エルフ達はすぐに私の元に来て、私をトール様から預かり
何処かの家の中に連れて行った。
そして、足をしばらく撫で続ける。
「随分と酷い怪我をしましたね、ここまで骨が砕けるとは」
「えっと…ありがとうございます、しかし、何故私を助けようと?」
「いえ、あなたの事を色々と教えて貰って、助けようと思ったのです」
「え? ですが…」
「あなたのお母様の事も…お父様の事もロキ様に教えて貰いました。
本当に苦労したんですね」
「……」
「なので、助けてあげたいと思ったんですよ」
「同情はあまり…」
「それに、超が付くくらいの美少女ですからね!」
「…え?」
「いやぁ、実は私たちエルフって、男の人が居ないんですよね。
だから、美少女には目が無いのです!」
「……は、はぁ」
「で、実はあなたを癒やす条件として!
あなたの絵を描くことを許可して貰いました!」
「…は?」
「うん! やはり絵は美少女の絵に限りますね!」
…何故だろう、実は私、結構危険な状態なんじゃ?
それに、他のエルフ達も集まってきたし。
「絵を描くのは怪我を癒やした後ですが、逃げないでくださいね?」
「ま、まぁ…ロキ様が約束を取り付けたというなら…逃げはしませんが」
「素直で可愛いですね! では、癒やしましょう!」
エルフ達の力で、私の痛みはみるみると引いていった。
これがエルフの力か…ただ私を見る目が少し恐いが。
「はい、では、絵を描きます!」
「は、はい、お好きにどうぞ」
「動かないでくださいね、この感動を永遠に残したいですし」
「あ、はい」
少し大変そうだが…が、我慢しよう。
「…所でロキ」
「なんだ?」
「なんであなたが交渉したらエルフ達はすんなりと受入れたの?」
「エルフ達は面食いだぞ? 美少女には目がない。
それと、辛い過去がある相手にはすぐに同情する甘ちゃん達だ。
更には悲劇のヒロインが大好きとか言う変態ばかりだ。
お前は本当に情報収集が下手なんだな、いや、興味が無いだけか」
「うっさいわね、他の国とかよく知らないし」
「後、絵を描くのが趣味みたいでな。
だから、あいつを引き替え条件に売ったんだ」
「えぇ!?」
「大丈夫だ、約束では絵を描くだけだから、それ以上はしないだろう」
「凄く不安なんだけど!?」
「なぁ、トール、お前はなんでそこまであの子の肩を持つんだ?」
「え? それはあの子がスルズちゃんの先輩だから」
「それだけでそこまで肩を持つのか?」
「……本当の事を言うと、あの子に悪いと思ってるからよ」
「何故?」
「…なんだっていいでしょ」
「ま、別に大事な質問でもないから良いけどな、とりあえず待つか。
多分、しばらく掛かると思うがね」
「悲鳴が聞えたらエルフ達を全部殺すから」
「お前は戦争が嫌いだとかいっておきながら、本当に好戦的な奴だな」
「仲間に危害を加えてくる奴は排除するだけよ」
「全く、恐ろしい奴だ」




