巨人領の監視
「まぁまぁ、そう落ち込みなさんなって」
「私は安全地帯でのんびりと過ごしたかったんだ。
それなのに、まさか早速巨人領への偵察とは…」
まさかメアリーと2人とは…新神に対して容赦ないな。
巨人族は神々とも渡り合えるほどの実力があるはずだ。
そんな危険な化け物が闊歩している領土に
ちょっと前にバルキリーになった私達を送るとは。
しかも、2人だけだ…意図くらいは分かるがな。
「しかも、お前と2人だろ? 全く…激務過ぎる」
「複数で巨人領の偵察なんて、バレる危険性が増すだろうしね」
「はぁ…それは分かるが、だからといって、何故私達2人だけなんだ。
普通そう言う仕事は先輩達が行なうはずだろう?
それなのに、まさか私達2人とは…全く」
「それだけ評価されてるって事でしょ」
「やはり評価など願い下げだな、面倒極まりない」
「本当にぶれないわね、あなた」
「私は怠惰に部屋でゴロゴロとだな」
「なんであなたみたいなタイプがそこまで実力を付けたのか不思議よ」
「前まではやりたい事があったからな、今は…無い」
「…そう」
昔の私は必死だったな、今では懐かしい思い出でしか無いが。
そのせいで、私は妙に実力を付けてしまった。
…だが、昔の自分を責める気には一切ならない。
あの時、私はその行動を確かに正しいと考えていたからな。
今でも正しいことだったとも思っている。
結果が伴わなかっただけだ。
「さて、こんな話は後としよう、任された以上引き返せないからな。
巨人共にバレたりしたら一大事だ、面倒極まりない」
「そうね、バレたら戦闘は避けられないでしょうしね」
しかし、巨人共は何をしているんだろうな。
何かを作っているように思えるが。
「何を作ってるのかしらね」
「塔だろう、何故塔を作るかは分からないが」
「…あれって確か霞の巨人だったっけ?」
「霞の巨人? 知らんな、なんだそれは」
「あなた何も教わってないの? バルキリーなのに?」
「知らんな、授業も聞き流していたから」
「良くそんなのでバルキリーになれたわね…」
「何故か物覚えは良くてな、で、霞の巨人とは何だ?」
「最古の巨人、ユミルから生まれた巨人の一族よ
巨人の中でもかなりの実力がある巨人達よ」
「複数人も居るとなると、何だかありがたみが薄れるな」
「ありがたいわけ無いでしょう? 巨人よ巨人」
「そうだな…しかし、何故塔を作るのだろうか」
「さぁね、分からないわ…神々への攻撃って可能性は無いでしょうし。
そもそも、塔を使ってどうやって攻撃するのよ」
「やはり奴らは敵対してるんだな」
「そうよ、あいつらと神々は敵対してるわ」
「そもそも、始祖であるユミルをオーディーン様が殺して
大地を作ったと聞いたし、あいつらが敵対していると言うよりも
神々が暴走して復讐しようとしてるって感じでは無いのか?」
「いやまぁ…でもほら、やっぱりね」
「ユミルを殺した理由も力試しだと聞いたし…神々の方が悪党では?」
「……いえまぁ、否定はしないけど、あまりそう言うことを言わない方が良いと思うわよ」
「そうか? まぁ、確かにオーディーン様に目を付けられると大変だからな」
そもそも、巨人と敵対する理由とは何だろうな。
あの者達を見ていると、確かに異形の姿をしている。
しかしだ、やっている事はただ家を建ててるだけじゃ無いのか?
そもそもだ、姿形が違うだけで敵対というのも…なにやら極端な話だな。
確かに話は通じそうに無いがな。
だが、恨んでる理由は恐らくオーディーン様達が色々とやったからであって
それは至極真っ当な怒りなのでは? …うーむ、疑問しか残らないな。
「まぁ、とにかく私達の役目はあいつらを監視する事よ」
「それは良いのだが…まぁ、監視するだけなら問題は無いだろう。
所でメアリー」
「何?」
「もしも巨人達に見付かった場合はどうするんだ?」
「そりゃあ…排除でしょ?」
「……敵対しなかった場合は?」
「そうね、口封じを考えると排除の方がいい気がするけど。
でも、敵対してない相手を殺すのは…私としてもあまり好ましくないし」
「なら、その場合は放置、と言う事で良いのか?」
「そうね、それで良いと思うわ」
私としても、こちらに敵意を抱かない相手を殺すのには抵抗があるからな。
とりあえず、その後、しばらくの間私達は巨人達の監視を続けた。
しかしだ、やはり巨人達に動きはあまり無い。
ただ塔を作っているだけだ。
その理由も少しずつ分かってきた気がする。
たまに来るより力が強そうな巨人が住むための家だろうな。
何故塔なのか…恐らくだが、防衛をしやすくするためだろうな。
塔ならば昇る際に下層から昇るしか無いからな。
しかしだ、塔を破壊されてしまえば…意味ないと思うが。
トール様なら容易に出来そうだしな。
「しかし、フルングニルがここで塔を作らせているとは思わなかったわ」
「誰だ?」
「巨人よ、霞の巨人の中でも結構実力がある巨人。
正直、私達じゃ分が悪いわね」
「そんな巨人が居るのか」
「本当に何も知らないのね、あなたって」
「興味が無かったからな、ずっと無気力だった。
ただまぁ、ニールのお陰で少しはマシになったがな」
「それでマシなのね」
「そうだ、む? おいメアリー」
「何よ」
「巨人共、こっちを見ているように思えるのだが」
「気のせいでしょ、流石にバレないと…あれ? これバレてる?」
「こっちに来ているように思えるな」
「……不味いわ! 何でバレたのよ!?」
「派手に動きすぎたのかも知れないな」
「く! ま、不味いわよ! 急いで逃げましょう!
流石にあの数の巨人! 更にはフルングニルまで来るのは分が悪すぎるわ!」
「私もその意見に賛成だ、面倒事はごめんだからな」
全く、面倒な事になったな…とにかく逃げるしか無いだろう。




