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第六話 リィベの作るハチミツ入りのホットミルク その1

「ごちそうさま」

「おそまつさま。食器下げちゃうわね」


  夕飯を食べ終えたボクは彼女が洗い物を終えるのを座って待つ。


 昨日は不覚にも寝落ちしちゃったけど、今日こそは彼女の正体を聞かないと。


「ふ〜んふ〜んふふ〜ん」


 キッチンでハミングしながら洗い物をしている後ろ姿は何だかとても幸せそうに見える。

 

  洗い物をして嬉しいことなんてあるのか?


 最初はそう思ってたけど、お風呂掃除を手伝った時、白く綺麗に輝く天井や床を見て、ちょっとだけ心が晴れやかになった自分がいた。


  もしかしたらそういう感覚なのかな?


  こればっかりは直接聞いて見ないとわからない。


  だから早く話してほしい。


  けれどこちらから急かすのも、恥ずかしい。


  なので用事が終わるまで座って待っているのだ。


 ピンクのワンピースを着た後ろ姿だけ見れば、ただの人間の女性だけど、頭頂部の二本の角がそれをきっぱりと否定している。


  彼女の正体はきっと……。


 何となく予想はついている。でもそれは本人の口から聞かなければいけないと思う。


「お待たせ」


  物思いにふけっていると、洗い物を終えたらしい彼女がいつのまにか対面の椅子に座っていて、二つのカップをお盆に置いて運んできたようだ。


「はい。どうぞ」


  ボクの目の前に置かれたカップからは、ふんわりと湯気が立ち上っている。

  中には真っ白な液体が注がれていた。


「これ、ホットミルク?」

「ええ。でもただのホットミルクじゃないわ。ハチミツ入りなのよ」


  洗い物しながら作ったのか。全然気がつかなかった。


「ハチミツ、ふうん」


 両手で持つとじんわりとした熱が伝わってくる。まるで母親が子供に注ぐ愛情なような……って何言ってんだ。


  とりあえず一口飲んでみる。


  あっ、ハチミツが入っているからか、思ったよりも甘い。

  それに身体の中が温まってきて、何かが解れていくような感じがする。

  牛乳の味はあんまり得意じゃなかったけど、コレ好きかも。


  でも今はこれを味わうよりも……。


「なあ、そろそろ話してくれよ。あんたの正体。そして、何でボクなんかに優しくしてくれるのかも」


  真っ直ぐ視線を向けると、彼女は微笑みながら金の視線を交差させて来た。

  相変わらず恥ずかしくて正視できないから、どこかで聞いた眉間の間を見つめる事でなんとか凌ぐ。


「少し長くなるけどいいかしら」


  ボクは頷く。謎が解けるなら朝までかかっても構わない腹づもりだった。


「分かったわ。改めておかあさんの名前はリィべ、リィべ・ムトセラピア。ユーちゃんに助けてもらった竜なの」


 彼女は言葉を選ぶように、もしくはボクの頭に染み込ませるように、ゆっくりと語り始めた。


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