第二章
「これから、新聞部の緊急会議を執り行います、礼!」
部長の私だけれど、いつも部員の視線がこちらを見ていると思うだけで、緊張してしまう。でも、今回は違った。いつもと違って、冷静で、理性を保っていられる。けれどそれは、嬉しい事ではない。
今日とうとう、起きてはならないことが起きたから。
「今朝『殺人部』が動き始めたことは、皆さん知っていると思います」
語尾が震える。これは、緊張から来たものではない。
部員たちを順に目で追っていく。部員は先輩ばかりだ。なぜなら、私は異例の一年生部長だからだ。
しかしあんな事があったからだろう。上級生らしい、凛々しさを持った顔つきの人はいない。恐れ、子犬のように縮こまり、周りを窺っている。
今朝の事を詳しく口にするのは止めにした。余りにも、口にしがたい事ばかりだ。
「落下してきた死体の撮影には成功しましたが、それの入手までには至りませんでした」
あの時はしばらくシャッターを切っていた。だけど夢中になっていたら、突如死体が上空に上り始めた。透明なワイヤーが、太陽光に反射して光って見えた。どうやらそれを使って巻き上げたようだ。
「実際に『殺人部』の存在が証明された以上、私たち新聞部の役目は、スクープを撮る事です。そのスクープとは勿論――」
深く息を吸う。落ち着け……。
「――『殺人部』の部員を撮影すること。そして、実名で記事にすること」
スクープが欲しいとか、そんな浅ましい考えじゃなくて。
『ねえ、しんこ~、来週の文化祭、楽しみだねぇ!』
花織の事を思い出していた。親友だった。私は轟振子といういかつい名前をしているが、それを「しんこ~」と呼ばれると、可愛い名前な気がしたものだ。
のんびり屋で可愛い子。あんな、あんな目に遭わなかったら――今も生きていたはずなのに!
どす黒い何かが、込み上げてくる。
悪い奴を、野放しにする訳にはいかない――――
「皆さん、全力で臨むように! 解散!」