第十一章
「部長、帰んないの? もう暗いけど」
「ええ、私はまだ残ります」
「じゃあ、鍵お願い」
「ええ――――」
バタン。
部員たちが帰った教室内は、静まり返っている。
教室には私だけ。一人で、最後まで残っていた。
「なんで……、何でうまくいかないの!」
机を殴る。拳が痛い。
『号外』の新聞は完成した。各学年の教室前廊下に張り出した。それなのに。
「くそ教師どもめ! 何が、『生徒たちが怖がるから』だ! その生徒たちが、何人も死んでいるのに! それでもまだ! 学校の体裁の方が大事か! …………うぅ」
新聞はすべて処分されてしまった。教師たちが、胡散臭いもので学校を汚すなと、すべてはがしてしまったのだ。
生徒も生徒で、実際に保健室に殴り込みに行く者なんていなかった。目の前で見た死体に怖気づいたんだ。
「花織……、私許さないから。悪い奴なんか、私が直接断罪してやるんだから!」
悪事を働いた時点で、そいつはゴミになる。それが私の持論。あの時、親友が死んでゆくのを目にした時に、生まれた思考。
胸ポケットから、カラフルな錠剤を出す。
ネットで見つけた。これはリミッターを外してくれる薬らしい。潜在能力をフルに使って、本当の全力の力が出せる。
「待ってて、花織……この社会を綺麗にしてあげる」
そう、学校は、小さな社会。正義があって、悪がある。
ある分の錠剤を一気に、口の中に放りこむ。
ちょっとじゃ足りないかもしれない。
「途中で力が切れたら、洒落にならないものね」
ごくん。
嚥下するとすぐに、体が軽くなった。
「ああ……これで勝てる、『殺人部』に勝てるよ!」
襲い掛かってくる幸福感。これなら、あいつらも一捻りだ。