第九章
「新聞部の、緊急集会を行います」
部活動というより、葬式を言った方が正しいような雰囲気が漂っていた。
教卓から、部員たちを見回す。鼻をすする音、腫らした目、握った拳。
これじゃあ駄目だ。
「皆さん、新聞を作りましょう!」
なるべく、強気な声で。
部員みんなが、顔を上げる。
みんなが、鬼を見るような眼で見てくる。心無い人間を見るような眼で、見てくる。
「……部長は、辛くないの? いい記事が作れれば、それでいい? ……人が死んでるんだよ? 新聞なんか書いてる場合じゃあ――」
「だからこそです!」
声を張る。泣きそうになって、奥歯を噛みしめる。
「部員が、殺された――だからこそ、新聞をつくらないと! ……彼の死を、無駄にする訳にはいかないんです!」
今更、言葉は濁さなかった。現実を見つめないと。それが、記事を書く者の義務だと思うから。
悲しい、辛い……。大事な部活仲間が死んだ。私だって……。
でも、悲しんでいる間に、仲間がどんどん傷つけられていくのを見るのは嫌だ。耐えられない。今にも崩壊しそうな精神が、持ってはくれないだろう。
「私に、記事を書かせて!」
立ち上がったのは、元部長。
「私が、書きたい……お願い部長!」
頭を下げた。彼女の一つに結った髪は、ぼさぼさだった。肌は華の女子高生とは思えない程くすんでいて、目の下の隈が目立つ。
「わかりました。お願いします」
「時間返上で新聞の作成に臨みます! 一秒でも早く、生徒たちに真実を知らせるのです!」
今の私を動かしているのは、正義心なんて綺麗なものじゃない。
憤怒。それだけだった。