表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/96

1章 5 説得~蠢く陰謀の影

程なくして村の者達が協力してくれて、気絶した4人は村に運び込まれた。縄で捕縛し動きを封じると目覚めるまでしばしの休憩


「説得する自信は?」


「ない」


4人を見つめるイノに聞くと即座に返答が返ってきた。まあ、だろうな・・・こりゃあ俺も一考せなならんか


昼飯を食べ終えた辺りから、1人・・・また1人と目を覚ます。最後のグリムが目を覚ましたのは夕暮れ時だった。4人に水を飲ましいざ説得の時間だ


「・・・グリム・・・」


イノは4人の前に立ち、絞り出すように声を出す。4人の反応は薄い。すでに諦めたようにイノを見ず何も無い所を睨みつけていた

こちらは何かあった時のためにナタリー、トーマス、俺がイノの後ろに陣取る。場所は村長宅・・・そういや村長見てないな


「グリム・・・聞いて欲しい・・・」


グリムはハーとため息をつくと、ようやくイノを見据え苦々しく吐いた


「今更何を?」


一旦目を閉じ、イノを見据えた目には視線こそ鋭いものの感情は見当たらない


「・・・ここの人達は、わたしに説得の機会をくれたの・・・わたしは・・・あなた達に死んで欲しくない」


「説得?誰を?・・・死んで欲しくない?ハッ!なら、アムスを殺す手伝いでもしてくれるってか!」


「なにぃ!?」


横で聞いてたトーマスがイノの前に出ようとするが、俺が制する。ナタリーは腕を組みじっとグリムを睨みつけていた


「生きる死ぬはもうたくさん・・・お願い・・・聞いて・・・」


「ああ!聞くことしか出来ないからいくらでも聞くさ!だがな!生憎組織には通達してある・・・お嬢の離反についてな!ここで俺らが見逃したとしても、地の果てまで組織は追ってくる!どんな手を使っても・・・必ず捕まるぞ!」


「見逃す?ああ、勘違いさせて悪いな。お前らも組織とやらには戻れんぞ?」


「ああ??」


俺が口を挟むと勢いよく俺を睨むグリム


「彼の言う通り・・・あなた達は掟に背いている・・・」


「はぁ?どこが!お嬢が離反した事による不測の事態だ!指示を仰ぎ今後の展開次第では罰は受けるが掟に背いてはいない!」


「そう・・・わたしが離反した事を組織が知っていればの話」


「・・・なに?」


「組織は知らない・・・現状何が起きてるのかを・・・」


「はん!言っただろう!もう既に通達してある!組織は動き出している・・・!?」


スっと懐からナタリーから預かった文を取り出すイノ。それを見てグリム達4人の顔は凍りつく


「ここの村の人が撃ち落とした」


「撃ち・・・落としただと!?」


俺はこの瞬間、心に秘めていたあの思いを伝えるべく口を開く


「その節は大変おい・・・」


美味しく頂きまして・・・と続けようと思ったが、ナタリーに口を閉ざされた。振り返ると鬼がいた


『これ以上続けるなら常識の時間2です』


小声で耳打ちされ、コクコクと頷く


「おい・・・?」


グリムは俺の言葉の続きが気になるのかじっと俺を覗き込んでいる・・・言わない・・・言わないぞ


「・・・鳥は死に、もう通達の手段はない・・・このまま拠点に戻っても、あなた達が受けるのは罰ではない・・・制裁」


グリムを除く3人はイノの制裁という言葉に激しく反応した。皆絶望の表情を浮かべる。グリムに至っては『マナが・・・』と呟いている。マジか・・・名前まで付けてたのか・・・言わなくて良かった


「あなた達の選択枠は少ない・・・このまま身を隠すか・・・戻り制裁を受けるか・・・その2つ」


ジジイを殺しに行くって選択もあるが、その選択をした瞬間にここで消されるからあえて選択枠には入れてないんだろうな


「逃げる・・・?無理だ・・・どんな手を使っても組織は裏切り者を見逃さない・・・知っているだろう!首領の性格を!」


「どこを探すと言うの?私達が旅立ってからどこに向かったか分かるはずがない。最初から裏切ったと考えれば、大陸中を探さなければならない・・・そんな人員を・・・」


「・・・メディア国にいる組織の者と定時連絡している・・・現在の位置・・・状況・・・5日に1回だ・・・それが途絶えると組織より部隊が派遣される・・・」


「え?」


「知らないのも無理はない・・・部隊長のみが知り、隊員にも教えない秘匿。すでに最後の報告から5日経過している・・・メディア国から組織へと連絡が行っている頃だろう」


そっか・・・行ってらっしゃい頑張って来てね~で放置するほど信頼も油断もないって事か・・・こいつが知らないだけで監視も付けられてる可能性もあるってことか


「俺からの緊急連絡が届いてないって事は、離反か任務失敗と認識された・・・追っ手が来るのも時間の問題・・・終わったか」


グリムは深いため息をつくと床に目を落とし呟いた。後続部隊が来るまでの間の命・・・そう考えてるのかもしれない


「っ・・・」


見通しが甘かったとイノは悲痛の表情だ。でも・・・


「それこそ逃げれば良いんじゃないのか?」


「無駄だ・・・今回の任務失敗の概要を知らないだけに全力で来る。任務中以外の全てを動員する可能性すらある。どこに逃げようが必ず捕まる」


グリムは首を振り床を見ながら答える。何人いるか知らんがジジイ1人に大袈裟な


「マナの・・・鳥のトラブルを踏まえ、メディア国より斥候は放たれてるはず・・・同時に組織への報告がなされ・・・後は先程も述べた通りだ・・・もう遅い・・・何もかもな・・・」


「・・・」


イノは拳を握り何かを決意したように4人を見つめる。


「わたしが・・・迎撃する・・・事の発端はわたし・・・わたしが始末をつける!」


「今はそんなファンタジーに乗る気分ではない・・・あれか?俺らを助ける為に実の父と姉を殺すかぁ?」


グリムは自嘲気味にイノの言葉を否定する。イノ・・・お姉さんいたんだ。イノは言葉を失い・・・また黙り込む。はい、殺しますとは言えんわな・・・仕方ない


「良いだろう・・・代わりに俺が出よう。鳥のお礼もあるし・・・」


「アシス様!」


今まで無言を貫いてたナタリーが叫ぶ。いや、ほら、受けた礼は返さないと・・・だから常識の時間2はヤメテ


「ハハ・・・たしかに貴様は強い・・・が、我ら『カムイ』を、侮り過ぎだ」


「「カムイ!?」」


ナタリーとトーマスがハモる・・・流石夫婦


「お前一人でどうこう出来る話ではない・・・縁もゆかりも無い貴様に助けられる義理もない」


「勘違いするな・・・阿家としてだ」


「アシス様!いけません!カムイは・・・カムイは危険です!」


「ほう・・・そんな危険な集団から狙われてるのは誰だ?」


「ウッ・・・それは・・・」


「そんな危険ならますます放っておけないな」


「カムイはダメです!以前吽家も争い、当時の吽家の、家主が・・・殺されてます!」


おおーなんだ、意外と狭いなこの世界


「以来、カムイとは不可侵を貫いております!奴らの方も相当な被害が出た為、我らに手は出してなかったのですが・・・」


「また仕掛けてきた・・・しかも阿家に」


「奴らが自ずと仕掛けてくるとは思えません!恐らく裏で何かが起きています!ここは慎重に・・・!」


「ジジイとこいつらが殺されるのを待つか?」


「っ・・・」


「事は動き出してる・・・これ以上後手に回るのは」


「アムス様にお伝えし・・・適切な判断を」


「・・・今の家主は?」


「!・・・アシス様です・・・」


「ジジイには伝える。狙われてる事はね・・・でも、判断は俺が下す・・・いつの間にかなっていた家主だが、それなりの覚悟はある」


ナタリーは言い返す言葉が見つからないのか、目を伏せ震えている


「こいつら4人とイノを阿家の庇護下に置く!全員動員しカムイとやらの撃退に臨む・・・我らの人数は?」


「・・・10人です」


え?ボソッ言われた言葉に耳を疑う・・・まてまて・・・10人?


「ダーニにいる2人を含め10人です・・・これ以上でも以下でもありません・・・」


「プッ・・・ハハハ・・・たった10人で我らに挑むか・・・ククク・・・ハハハ・・・」


「・・・アイリン様の代になり、空白の期間が続き・・・1人また1人と吽家に、流れました。アムス様が代行されましたが時すでに遅く我ら10人を残しみな・・・」


まだ見ぬ母よ・・・何やらかしてんの?


「我ら10人は粉骨砕身アシス様に仕えるつもりです!ですが何卒ご再考を!」


確かに10人で大陸中に展開してる感じの組織に対抗するのは自殺行為・・・道理で必死なはずだ。


「悪いな・・・決定は変わらない・・・ただ方針を変える」


現状の戦力を加味して、計画変更・・・座して待つのはやめにする


「直ちにジジイへ報告・・・村にはジジイとラクスについてもらう」


「ラクス・・・『大剣』ラクスか!」


グリムが呟きナタリーはラクス様を巻き込むわけには~とか、叫んでる


「俺はそのカムイって所に行く・・・どうせ中央に行く予定だったし・・・中央なんだろ?拠点は」


イノが家は中央デニスにあると言っていた・・・それが本当なら拠点は中央にあるはず。イノを見ると目が合いコクリと正しい事を示す


「もういい・・・状況は分かった・・・このまま首をはねてくれ・・・足掻きはせん・・・」


グリムは疲れたように言い放つ。まるで夢物語には付き合ってられないかのように・・・だが、残念


「グリム以下4人及びイノを阿家に迎える。これで15人・・・1.5倍に増えたぞ」


「バカな・・・言ったはずだ。俺らはお前に助けてもらう義理はない」


「義理じゃない」


「だとしたらなぜだ!?」


「願いだ」


「なに?」


「彼女がお前らの生を願った。それを俺が承諾した・・・ただそれだけだ」


俺はイノに視線を向けグリムに告げる。グリムもイノへと視線を移す


「俺らがそれを望んでないとしてもか?」


「望んでないにしてもだ」


グリムは観念したのかそれ以上何も言わなかった。元から生殺与奪の権利はこちらにある。これ以上は不毛と感じたか


そんな折、ガチャリと玄関が開くと見知った顔の2人組が入ってくる。今回のターゲットとその他1名


「なんじゃ、とっくにダーニ辺りに着いてると思いきやえらいモタモタしておるの」


「・・・ジジイ」


「「アムス様!」」


約1名存在を無視されてるが気にしないでおこう。村に入り話を聞いたのか、捕まえた4人の顔を見てフムと呟く


「暗殺者を送られるとは・・・何年ぶりじゃろ」


「ボケたか」


「いや、ここは忘れるくらいすごい昔だったんだなーと思う所じゃろ!?・・・まあ、良い・・・して、話はどうなっちょる?」


「要約すると、彼らは仲間になり、カムイと戦うって感じになった」


「要約し過ぎじゃろ!?どうしたらそうなる?」


「いや、なんだかんだで・・・ちなみに家主ってどういう事だ?聞いてないぞ」


「お主がワシを待たずに行ってしまうから説明する時間がなかったのじゃ!これまでお世話になりました的な感動的な場面があってもよかろうに」


「いや、ラクスと立ち合ってる時に居ただろう?」


「気づいておったか!?」


「ラクスが家とは反対側に歩いて行き小便って言った時点でな・・・ラクスならその場で出す」


「出さねえよ!?」


やっと会話に入ってこれたラクスだが、今は関係ないので無視して話を続けよう


「しかし『カムイ』か・・・厄介じゃのう」


「総勢18人でカムイを打つ」


「18?」


「元からの10人、新たに加わった5人、後は俺とジジイとラクスの3人で18だ」


「え?」


「確かに仲間になったと言っておったが、色々とふわっとし過ぎじゃ」


ラクスが俺?みたいな驚きの声を上げ、ジジイが詳細カモン的にナタリーへと視線を向ける。ナタリーが説明すると長くなりそうなので、俺が答えよう


「この5人は阿家となった。ので、ジジイとラクスはこの村でみんなを守る。俺はその間にカムイを潰す・・・以上!」


「え?」


「阿家にって・・・仲間って門徒にって事なのか!?ちょっと待つのじゃ・・・え?」


どうやら話のスピードについてこれないようだ・・・ナタリーとトーマスはいつの間にか片膝をついてジジイの方に向いていた。俺はナタリーの肩をポンと叩くと呆れたように言い放つ


「後は頼んだ」


「なっ!?別にワシの理解力が低いせいじゃないじゃろ!?」


俺はジジイの情けない言葉を背に、村長宅から外に出る。ジジイは必死に周りに同意を求めるが、虚しく響くだけだった・・・


────


アシスが外に出て、それを追ってイノも外に出た。残された8人は出て行った2人を見送った後、ナタリーは延々と現状の説明におわれていた


「・・・と、言うわけです」


「なるほどの・・・概ね理解した。お主らにはアシスを諌めて欲しかったが・・・まあ仕方あるまい」


「「申し訳ございません」」


ナタリーとトーマスは片膝をつきながら深く頭を下げた。


アムスは髭を弄りながら、グリムに向かい目線を落とす。グリムは目が合うと自嘲気味に口のはしを上げた。


「殺すか?」


「フム・・・家主であるアシスを尊重する・・・殺しはせんが・・・まさか門徒とはのう・・・」


自分を殺しに来た人物がたった2日やそこらで仲間になる・・・その複雑な状況にアムスはため息をついた


「アイツが勝手に言っているだけだ・・・アイツが村を出たら・・・好きにするがいいさ・・・」


「アシスの意見を尊重すると言ったじゃろう?まあ、門徒としての心構えはきっちり仕込ませてもらうがのう」


ニヤリと笑い4人を見つめるアムス。4人の背中に冷たいものが走る


「お前ら・・・どうかしてるぞ!」


グリムには状況がまったく飲み込めなかった。暗殺に来た者を殺さず、あまつさえ味方に引き込む。獅子身中の虫になりかねない相手に対し、まるで楽しんでる様子さえ伺える


「まずはその言葉遣いからですね」


ナタリーが指を鳴らしながら、グリムを睨みつける。


「フム・・・少し2人は席を外せ」


「なっ!それは!」


ナタリーとトーマスに対し、アムスが言うとナタリーは立ち上がり声を荒らげた


「2度言わせるな」


普段飄々とした物言いからは想像出来ないほどの威圧が込められた声色・・・2人はすぐさま「ハッ!」と返事をし村長宅を後にする。額にはびっしょりと冷や汗をかきながら


「さて、少し話をしようか」


先程の威圧は4人にも伝わっている。まるで蛇に睨まれた蛙のように生唾を飲み込む


「誰からの依頼じゃ?」


「しゅ・・・首領から・・・」


「その上じゃ」


「依頼主は分からない・・・本当だ!俺らは末端だ・・・依頼主の事など聞かされない」


「では、質問を変えよう・・・『誰を』殺せと言われた?」


「え?」


グリムは言っている意味が分からず呆然とする。先程までに何度も伝えてた内容・・・あえて聞く意味が理解出来なかった


「ワシを殺せと言われたか?阿家の家主であるワシか・・・それとも・・・」


射殺すような目線に、グリムは息をするのを忘れる。口がパクパクと開き、ようやく音を出せた


「ぁ・・・『アムス』を殺せ・・・と・・・」


それを聞き、アムスは視線を緩めると後ろのラクスに向ける


「だ、そうじゃ。どう思う?」


「アムス殿を狙う人物にあてがありませんね。カムイ自体の目的も然り。彼らは金をもらって動く暗殺者集団・・・火種に自ら薪をくべるとは思えません」


「となると・・・ハァ、厄介じゃのう」


「ええ・・・何かが動き始めてますね」


「引退して余生をのんびり過ごす計画だったのじゃが」


「よく言う」


ラクスはため息をつきながら、先日の試合を思い浮かべなが呟いた


────


村長宅を出てすぐに後を追ってくる気配に気づいた。


「ありがとう」


俺の横に並び開口一番に感謝してきたのはイノだ。俺を手をヒラヒラさせてそれを受け取る


「まだ何も解決してないがな」


グリム達の生け捕りはイノの願い。それは叶ったが、この後の生かし方は定まってない。自決、他殺・・・生け捕り以上は知ったこっちゃないが、どちらにしても夢見が悪い


「でもまだ道は続いてる」


「生きる道なのか死への道なのか」


「どちらを歩んだとしても、それはわたしが選んだ道。悔いはない」


「あいつらは?」


「知らない・・・もう道は示した。後はどう歩こうが自分の意思」


「・・・なんだかなー」


思わずクスリと笑ってしまった。グリム達は決して村人達に危害を加えることはないらしい。ターゲット以外の殺生を固く禁じられてるからだ。組織を抜けたのだから禁じられてようが意味は無いように感じるが、その矜持は根深く刻まれてるらしくコロコロ変わるものでもないらしい


でも、俺襲われてねえ?って言ったら、あなたが邪魔をしたからだそうだ・・・まあ、ナタリーがしばらく監視すると言っていたから問題あるまい・・・今ならジジイ達もいるしな


「これからどうするの?」


「メディア国に行って傭兵登録した後に中央へ向かう。んで、カムイをぶっ潰す」


「簡単に言う・・・場所は知っているの?」


「知らない・・・だか、元々傭兵になり中央に行くのは情報収集の為だからな。カムイも見つかるだろ」


「呆れた・・・そんなんで見つかると思ってるの?」


「ああ」


イノは頭を振り、全力のため息・・・ものすごくバカにされてる気がする


「元々って何の情報を?」


「母親を探す」


「え?」


「ジジイから言われたんだ。母親を探して、このマントを見せろって」


「正気?」


「正気」


またしても、今度は聞こえるようにハァーとため息をつく。なんだろうこの精神をガシガシ削るような攻撃は・・・まさか光線?


「ねえ・・・お母さんの情報は?」


「いやだからそれを調べる為に・・・」


「道端で『わたしのお母さんを知りませんか?』って聞くの?」


「・・・名前は知ってる・・・アイリンだ」


「あなたの頭の中は何が詰まってるの?鳥肉?アイリン・・・いい名前ね!大陸中に果たして何人のアイリンさんが居るかしらね?アイリンさんを訪ねていちいち聞くの『僕の母親ですか?』って?あなた後何年生きるつもりなの?」


「60年・・・くらい?」


「そこは答えなくて良いの!皮肉で言ったんだから!しかも疑問で返すな!知るか!薄々勘づいてたけど、どんだけ残念な子よ!びっくりするわ!」


「あっ、そう言えば・・・」


びっくりするほど引かれてる最中、俺はジジイから紙を渡されてた事を思い出した。そこには似顔絵が書いてあった。これを頼りに探せと・・・俺は懐から取り出しイノに見せる


「・・・・・・・・・」


なんとイノは無言で紙を破いた・・・マジか・・・


「ねえ・・・どこの世界にこんだけ目が離れてる人がいるの?鼻の穴が1個しかないのはどうして?この口はなに?魚でもくっついてるの?まさか唇なんて言わないわよね?こんな分厚い唇あるわけないもんね?」


矢継ぎ早に言われてグウの音も出なかった。確かに・・・


「俺と顔が違い過ぎる?」


「そっこっじゃなっい!似てる似てないじゃなくて!こんな顔の人は存在しない!てか、化け物じゃない!会った瞬間卒倒する自信があるわ!」


「おいおい、それは人の親に対して失礼だろう」


「ちがーう!そうじゃない!コレはあなたの母親では断じてない!似顔絵って言葉にするのも躊躇うぐらいの落書き・・・そう落書きよ!」


「文句なら描いたジジイに言ってくれ」


「あのね・・・描いた人もアレだけど、これを受け取って長い旅路に出たあなたに開いた口が塞がらないの・・・もう一生閉じないのではないかと不安になるくらい・・・塞がらないの」


叫び疲れたのか、肩で息をしながら涙目でそう告げてきた。やばい・・・このままだと常識の時間~イノ編~が始まってしまいそうだ。時間も決められてないし、漠然と見つかれば良いか~なんて考えてました


「1からプランを練り直すか・・・」


「ええ、そうね!でも、まだ間違ってるわ!」


「?」


「1からじゃない・・・0からよ」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ