3章 幕間 アシスとシーラ
かなり短めです
悪い夢を見た
友が死ぬ夢だ
目が覚めるといつもの宿屋のいつもの部屋のベッドで起き上がるはずだ
そして、リオンと朝稽古
その後にシーリスに遅いと怒られて
シーラに食べ方が汚いと怒られる
今日は6番隊に仕事はあったか?
なければ訓練だ
みんな嫌がるだろうが、強くなれば死ぬ確率も減るだろ?
俺はみんなで楽しく仕事をするのが好きだから
誰一人として死んで欲しくないから
考えているとふいに誰かに抱きしめられているように感じた。そして、息苦しくなるくらいその力は増してくる。意味が分からず目を開けると、ひどく懐かしい匂いがする
「な・・・んだ?」
口の中が乾いて上手く喋れない。目に飛び込んできたのは、白い布・・・体全体に風を感じる・・・浮遊感・・・落ちてる?
「アシス!・・・よかった!」
「シー・・・ラ」
目をグルグルと回し状況を確認する。俺は今・・・シーラに抱えられながら落ちている?何がどうなった・・・勝負は?・・・ナキスは!?
「アシス!アシス!」
違う!そうじゃない!泣きじゃくるシーラを見て、どうなったかではなく、今この現状を打破し、シーラを助けなくてはと気持ちを切り替える
落ちてる・・・どっちに?風は背中から・・・なら背中の方に向かって落ちてる。どうする?下に何がある?考える猶予はない・・・黒龍?
「掴まって・・・ろ」
俺は念の為シーラの腰に足を回してガッチリと固定するとマントの端を左手で掴む。そして、両手を上にあげマントを広げた
風圧でマントは勢い良く広がり、右手の中指とマントの端を掴んだ左手に衝撃が来るが、何とか耐えた。体はまるで上昇したかのように落下のスピードを急速に落とした
「ぐっ!」
マントのリングに通した中指が悲鳴を上げる。指が千切れるのではと思うくらいの痛みに我に返りこれまでの事を思い出す
「ナキス・・・」
あれが現実だったと嫌でも思い出させ、歯をくいしばる。助けられなかった事ではなく、なぜあの場でグロウが隣にいる事に気を回せなかったのか、自分の事しか考えてなかった自分に腹が立つ。だが、今は生き残る事に集中しなければと頭を振り、状況を確認する
「アシス・・・」
「大丈夫だ」
心配そうに呟くシーラに微笑んで返し、下を覗き込む。落下速度が落ちたとはいえ、まだかなりの速度を感じる。このままでは落ちる場所によっては・・・何とか下の川まで誘導して少しでも衝撃を軽くしなくては
「1か月前の・・・修行に出る前に言ったよね?」
突然話し始めたシーラ。もちろん覚えている。言葉は覚えているが、意味は分からなかったがな
「『あなたに嘘をついてることがある』って言ったよね?」
そうだ。いきなりそんな事を耳打ちされて意味が分からない
「あなたは言った。『私に好きな人が出来たら、付き合ってるって言うのは嘘って言っていい』って」
あー、確かに言ったな・・・そんな事を
「だから・・・うそ」
「何が・・・!」
俺が何が嘘なのか聞こうとすると俺の口を自らの口で塞ぐ。何が起こったのか分からずに目を見開いていると、口と口は糸を引き離れ、顔を真っ赤にしたシーラが目に映る
マントを操作しながら混乱した頭で考える。隊員達がシーラにちょっかい出さないように俺とシーラは付き合っていると嘘をついた。それで、その日にシーラに『好きな人が出来たら、アシスと付き合ってるのは嘘』と言ってくれればいいと話した。で、今シーラは俺と付き合ってるのが嘘と俺に言った・・・んん?つまり・・・
「バカ・・・鈍感」
ギュッと俺を抱きしめるシーラ。思わず惚けそうになるが、実の所死ぬかもしれない状況は継続中・・・
「話の続きは・・・生き残ってからだ!」
俺は熱くなった顔を引き締め、落ちる先を見据えシーラを再度強く足で挟み込む
決して離さないと心に誓い・・・
サブタイトルにフォーリンラブと入れたら・・・と考えましたが、意味も違うし、吹き出しそうになったのでやめました




