3章 番外編 6番隊始動
番外編です
未定ですが、何話か続けてみたいと思います
あらためてグロウより6番隊隊長に任命され、隊員も配属された。俺を含めて15名の隊になるが、そこにリオンの姿はない。と、言うのも・・・
「隊長ー、挨拶挨拶ー」
2番隊隊長であったカイトが、隊長をやめて6番隊に入ると直訴。それを受けたグロウが2番隊にリオンを配属させる・・・しかも隊長として・・・。大丈夫か?この傭兵団と思ったが、そもそも赤の称号を持つ者が俺らを除くとグロウとメンスと他2人のみ。2番隊はリオンの実力も見てるから大丈夫との話だが・・・実力の前に性格が・・・ね?
「ん、6番隊の隊長となったアシスだ。よろしく頼む」
カイトに即され、簡単な挨拶を隊員にする。なかなか濃い人が集まっているように見える。もしかして、爪弾き者の集まりとか?
「キャロンだよ~よろしくね~隊長の攻撃を食らって、下半身の膜が破けたっぽいから責任とってね?」
訳の分からんこの間延びする喋り方の女の子、キャロンは見た目ロリロリで、俺より年下に見える。が、実際は2歳ほど年上の18歳らしいのだが、髪を頭の上で2つにまとめ、ピンクの髪の色に童顔、喋り方からも年上に思えない。その見た目とは裏腹にリオンの付けているようなハーフプレートを着込んでいるから、子供が背伸びして傭兵ごっこしているように見える。武器はハンマー・・・と言ってもヘッドの部分が小さく、棍棒にトンカチを足したような形状だ
「キュロン・・・私は上半身の膜が破けたわ・・・責任ね」
キャロンの双子の妹、キュロン。同じ背格好で髪型も装備も一緒。正直見分けがつかない。人見知りするらしく話も途切れ途切れだし、意味も分からん。姉にベッタリらしく片時も離れないとの事
「デクノスだ。前回は紙一重だったが、次はそうはいかない・・・首を洗って待っていろ」
顔合わせの時は剣が抜けず、気付いたら倒れていたらしい。カイト曰く残念性能の持ち主で、未だに黄色の称号らしい。実力もお察しで、口だけの男だが、容姿が良く雰囲気だけは出来る男に見られる。ゆえに残念性能
「エーレーンだ」
不機嫌そうに名前を言ったのは、巨乳の槍使い。皮の鎧からはち切れんばかりの胸がこれでもかと主張してくる。シーリスといい勝負だ。不機嫌な理由は俺に何も出来ずに負けたかららしい
「エーレーン、凄かったね~隊長の攻撃でバインバインだったね~」
「前も後ろもバインバイン」
「言うな!キャキュロン!」
顔を真っ赤にして双子を合わせて呼んで追いかけるエーレーン。・・・なんだこの状況は・・・。ほっといて次の少年を見ると
「クピトじゃ。弓を使う。よろしくのう」
見た目は子供、喋りはジジイ・・・俺より絶対年下と思われた少年は実は俺の倍以上の年齢らしい。アークと同い年くらいにしか見えないのに・・・カイト曰く「年を忘れてきた」らしい。どこにだよ
他の面子の自己紹介も終わり、シーラの番になる
「シーラです。今は怪我で足でまといですが・・・よろしくお願いします」
「知ってる~大変だったね~」
そう言えば捜索を手伝ってもらってたな
「知ってる・・・捕まって・・・ボン」
いや、爆発してねぇ
「君が望むなら如何なる辛酸も舐めよう」
その前に腕を磨け
「・・・羨ましい」
何が?目線を追うと・・・胸!?
「生きていれば同い年くらいかのう」
誰が?・・・孫!?
ツッコミに疲れ果てているところで、カイトがポンと肩を叩く
「ちゃんとまとめてねー、隊ちょー」
ニヤニヤしながら言うカイトの手を振り払い、睨みつけてカイトの自己紹介を即した
「ふふ、カイトだー。元2番隊隊長だが、晴れて一兵卒として6番隊に来たー」
「じゃあ、カイトが副隊長な?」
「・・・やだ」
ニヤニヤしていた顔が真顔に変わり、全力で拒否。晴れてって言ってたし、職に就くのを嫌ってるのか?
「隊長命令だ」
「なんでさー?赤の称号のシーラちゃんがいるじゃないー!」
「シーラは怪我をしてるし、カイトは隊長経験者だろ?だから、副隊長はカイトだ」
「ノー!せっかくお気楽極楽傭兵生活を満喫しようと思ったのにー」
そんなお気楽極楽傭兵生活を送らせてたまるか!頭も切れそうだし、物怖じしない性格も実力もある。副隊長にはうってつけだ。もし何かあったら、カイトに丸投げしよう
「と、言う訳で俺が隊長でカイトが副隊長でいこうと思う。何か質問は?」
「隊長はシーラと付き合ってるのかい?」
何の質問だ何の!デクノスの質問に隊の連中は固唾を飲む。え?何この状況?誰得よ?
「隊長~エロエロ~」
「隊長・・・上半身の膜・・・返して」
「付き合ってなければ、ワンチャン・・・いや、ツーチャンあるな」
「不潔な・・・穢らわしい」
「孫?いや、曾孫になるのかのう?」
「それは気になるなー。どーなん、隊長ー?」
好き勝手に言いやがって・・・。しかし、ここの対応を間違えると不味いぞ・・・どうする?
「・・・エロエロでないし、上半身の膜って意味もわからん。ワンチャンもツーチャンもないし、不潔でもない。子供も出来てないし、クピトと血縁もない・・・が」
「がー?」
「付き合っている」
おー!と隊員達が歓声を上げる。シーラは寝耳に水といった感じで目を見開いてこちらを見ているが、今は無視だ。シーリスが居ない今、帰ってきた時にシーラに彼氏が出来ました・・・なんて言ったら俺が殺される。色んな意味で守らないとな・・・
「つまんない~玉の輿失敗~」
「玉は・・・後1つ・・・」
「くっ・・・殺せ!」
「どうせ耐えられなくなって・・・穢らわしい!」
「初々しいのう」
「ヒューヒュー」
玉の輿ってなんだ?そんな金持ちでもないし、玉ってどこの事だ?デクノスは殺せって命懸けだったのか?・・・なんだかんだでエーレーンが1番妄想している気がする。ジジイの遠い目とカイトの冷やかしを無視して、これ以上ないかと尋ねると、カイトが手を上げる
「隊長ー、昨日の戦いの時の最初の技・・・あれ何ー?」
「ああ、震動裂破か。通常放つと大気を震わせる程度だが、双龍の型を使用してから使うと、同時に力も乗り周囲にダメージも与える事が可能になる。まあ、離れる程に威力は弱くなるがな」
「???何それー?反則だろ?」
「震動裂破・・・はて、どっかで聞いた事が・・・」
クピトが技の名前に心当たりがあるのか考え込む。そして、思い出したのか手をポンと叩き叫んだ
「そうじゃ!『戦神』アムスの技がそのような名前だったような・・・」
「ああ、それ俺の爺さんだ。技も爺さんから学んだ」
「「「なにー!」」」
「な、なんだよ」
全員が大声で叫ぶから思わずたじろいでしまった。グロウから聞いてないのか?
「もしかして~あ~うん~?」
「もしかしなくてもそうだ」
「あっ・・・うん」
「なんか違う感じだが概ねそうだ」
「ライバルに相応しい・・・か」
「お前はライバルに相応しくないがな」
「力を流すとか・・・穢らわしい」
「その妄想癖治した方が良いぞ?」
「『弓兵泣かせ』のアムスの孫か・・・」
「その二つ名は初めて聞く。さすが生き字引」
「まさかの阿吽僧かよー。そりゃ勝てねえ訳だー」
「僧じゃないが、そうだ」
一人一人に対応すると疲れるな。もうやめておこう。にしても、ジジイは意外に有名人だった。うーん、もしかして、色々やらかしてるのか?まあ、いいか
今日は隊を組んでの初日だから仕事もないらしい。拠点に集まりこうして話だけで終わるのも良いが、コイツらの命を預かる身としては、全員を強くしないといけないな・・・よし
「隊長としての責務を果たそう」
俺はニコニコ笑い、一番近くのカイトの肩に手を乗っけると呟いた。カイトは「え?なに?」って顔でこちらを見るが、何も言わずに力を込める
「阿・・・吽」
「があー」
だらしなく口を開けたまま気絶するカイト。周りは何が起こったのか分からずにカイトが倒れていく姿を見届けていた
「な、何を・・・」
「力が流れる感覚を覚えてもらいたくてね。なーに、ちょっと・・・ほんの一瞬だけ痛いだけで、強くなれる可能性があるんだ。嬉しいだろ?」
誰とも言えない質問を聞き、にこやかに返事をする。ジリジリと後退る隊員に怖くないよう笑顔でいるが、みんなの顔は青ざめていた
「き、気絶してるじゃねーか・・・ほんの一瞬って・・・」
「気絶する程痛いけど・・・気絶したら痛みも感じないだろ?」
呆けている隙にキャロンの肩に手をかけると物凄い勢いで首を振る
「待って~パスパス・・・心の準備がぁ~~~」
「おねぇ・・・この人でなしーーー」
「む、剣が、剣が抜けーーー」
「触るな!穢らわしいーーー」
「待て!待つのじゃ!そんなの食らったら逝ってしまーーー」
残りの連中にも分け隔てなく流し終え13名の死体が転がる。拠点はまさに死屍累々・・・死んでないけどな
「・・・わたしにはしないの?」
「シーラには毎日流してるだろ?」
「アレで良いなら気絶させる必要ないんじゃ・・・」
「最初が肝心って言うだろ?」
「・・・鬼」
「なんとでも」
その後、全員起きるまで待って、解散となった。起きる度に罵声を浴びせられたが「もう1回いっとく?」って聞くと、全員青ざめて口を閉ざした。トラウマにならなきゃいいが・・・。さて、これで何人が掴めるか
「掴むも何も・・・その前に気絶したら意味無いんじゃ・・・」
とシーラからド正論が飛び出したが、そこは何とかならんかね?死に直面したら火事場のなんちゃらとか出るって言うし
宿に戻り、シーラの部屋に入るといつもの巡りタイム。そこで疑問に思ってた事を聞いてみる
「そう言えば今更なんだけど、飯とかどうしてるんだ?最近下で食べてるの見ないし・・・」
両腕が折れてるから、飯を食べるのも一苦労・・・ってか、食べれるのか?
「姉さんが旅立つ前に給仕の人にお願いしたみたいで、食事の時や着替える時は手伝ってくれるよ」
さすがシーリス。その辺は抜かりなし
「て言うとトイレもか?」
急にもよおした時とかどうすんだろ?と単純に考えたから、聞いたのだが、背中を向いているのに、一瞬顔がこちらを向いたのかと思うくらいの勢いでこちらを見た
「それは1人で出来る」
ヒィと声を上げたくなるのを必死で抑え、コクコクと頷くと納得したのか正面を向いた。うーん、怖かった
「それよりも・・・なんであんな嘘をついたの?」
あんな嘘?あー、付き合っているってやつか
「シーリスが居ない間に変な虫がつかないようにな。それに・・・」
「それに?」
うん?俺は続けて何を言おうとしたんだ?
「いや、まあ・・・もしシーラに好きな人が出来たら、あの発言は嘘って言っていいからな」
何を言おうとしてたか忘れたので、適当に誤魔化す
「付き合ってるって事?」
「ああ。好きな人が出来て、そいつが今日の事をどこかで聞いていたら、身を引いちゃうだろ?だから、あの話は嘘だってそいつに言ってやれば・・・」
「・・・うそ」
え?よく聞き取れず聞き返すと、いつもの如くドアが勢いよく開かれる
「アシス!聞いてく・・・最中だったか?」
「「治療のな(ね)!」」
しまった!という顔をしているリオンに近付き、顔を両手で挟む
「なあ、ノックしろっつたよな?」
俺の両手で挟まれた顔を必死に上下に振ろうとするが、俺が固定しているため、上手く動かせずにいた
「そう言えば今日・・・隊員に力を流し込んだんだ。力の流れを強制的に体に流し込む事により、感覚で覚えてもらおうと思ってな。今、なんでその話をするか分かるか?」
首を横に振ろうとするが、もちろん動かない
「そうか・・・なら、逝っとけ・・・阿・・・吽」
「んーーー」
白目を剥いて気絶したリオンを引きずりながら、シーラにまた明日と告げて自室に戻る。こいつだけは・・・と思いながらも、先程のシーラの言葉の真意を考えるのであった




