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プロローグ
少年はいつものように木の上で惚けていた
修行の合間には木の上────遠くを見渡せるお気に入りの場所で思考を巡らせる
祖父と2人森の中での修行の日々
たまに来る剣士との試合
たまに行く近くの村
それらが彼の生活の全てだった
だから、祖父がたまに話してくれる大陸の話が大好きだった
北の国は服を何枚も着込むだの
中央の国はいろんな人が居て毎日がお祭りだの
祖父が経験したあらゆる事を話してくれた
もうすぐ16歳・・・祖父と約束した旅立ちの時
立つくらいの短くしてある黒髪に、少し垂れている両目と薄い唇、中肉中背だが鍛えられた筋肉が身長を低く見せる
美少年とは言えないまでも整った顔立ちの少年は期待に胸が膨らんでいた
ふとすると眼下に久しく見なかった大型の獣がいる
その姿を見定めた時、今日の夕飯が決定する
「さあ・・・行くか」