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ルビーアイ Noah's memory ~神の追憶~  作者: アゲハ
5章 思い出話の終わりに……
99/109

98話 女神の丘、それは……

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ーーーーー

ーーー



語りたかった事は(ほとん)ど話せた


こんなにゆっくりと話す機会は、これからいつ有るか解らない


だから今日は本当に幸せな一日だったと心から思える






さぁ、思い出話を閉じるとしよう








この女神の丘に来た時の様に、空へと顔を上げた僕






ずっと続くであろう安寧を祈りながら優しく空に語り掛ける




【なぁ、精一杯…… やったよな…… 色々とさ】






空は何も答えない






僕はそんな青く広がるソレから視線を落とした






正面には壮麗な景色が広がる






遠くに見える大河カタストロフィ



野山や田畑



元気よく収穫に励む、遠すぎて米粒の様に見える民



背後には女神の丘に来るまでの山道



そして僕の右側には(そび)える立つ、大岩






僕は大岩に目を向け、微笑んだ






【頑張ったな、本当に…… 本当に有難う】




そんな事を語り掛け、大岩の前に歩みを進めた



そしてまたニコリと笑い掛け、そして右手を岩肌に向けて指を擦らす



その中央には溝が彫られてあり、ソレを()()()()





優しく、柔らかく、なぞる





【なぁ…… この世界も…… 星々も…… 藍も…… 愛してくれて有難う】




そう大岩へ語り掛け、向けていた右手を下ろした




そしてもう一言




【精一杯…… 生きてくれて…… 有難う】




感謝を口にし、そして僕は岩肌に掘られた文字を読む




【モリサダ・ムーン・カトウ……】




呟く様に口にした言葉




ゆっくりと視線を足元に向け、目を閉じる




そして今度は2、3歩移動した




大岩の蔭




そこにも大岩と寄り添う様に鎮座する隣の岩よりは小振りな真円の岩があった




だが、それは石の様な灰色の物では無い




マーブル模様の付いた岩




()()()()()()僕が創った




その中央にも文字が彫られている




そこに書いてあるのは、《アイ・アース・アサダ》



その2つの岩は、()()()()()()()()の証だった







大切な2人が、逝った





モリサダは藍を……


藍はモリサダを……





一生懸命に愛して、そして逝った





モリサダは『いずれ藍がこの世界に来たら一緒に永命の儀をする』と言っていたが、ソレを…… 行って居無かった


判明した時に僕は2人へ永命の儀を済ますよう提案したが、彼等は拒否した


それこそが本来の在るべき姿と……


そう言った





人は生きているから輝ける


命は有限だからこそ、その決められた一生を大切に生きていくべきだと……





彼等が互いを特別に、大切に……




だから選択した有限の生




後悔はしていないはず




だって2人がこの世を去る間際の表情が今でも心の中で生きている




無限の命は幸せとはいえない




本当の幸せは、小さな一握りのソレに気付けるかだ




青々とした空がもたらす恵みも、民達が笑顔で居られる憩いの場も、有難いお節介も、ちょっとした感謝の言葉も……


そして足元に咲く、1輪の花に微笑む事も……




そんな小さな幸せを積み重ね、そして心が潤う


潤いをまた、他人に分け与える


それこそがモリサダが追い求め、辿り着き…… そして実行した究極の幸福循環


モリサダの真意





小さくても良い


欠片程度でも良い


一瞬一瞬を大切に生きる事


無限の中に埋もれる幸せは気付きにくい





だから……





これからの人々へ伝える為にソレを選んだ





なぁ、モリサダ…… 藍……





幸せだったよな?





僕は君達に会えて、一緒に居られて幸せだったよ





それでも常に共に居た時には気付かなかった





居無くなって、そして解った





どれほどソコに幸せが在ったのかと……





世界から離れたお前達は、今も幸せか?





いや、愚問だったな





ムーン、アースとして愛し合い、生まれ変わったモリサダと藍


それでもまた君達は会った


愛を持ち、逢った


そんなお前達が幸せで無い訳が無い





大丈夫





僕がこの世界を守るから





人々も、アースが愛した地球も守るから





だから重荷は下ろして良いよ





今はただ、寄り添い……





ココでは無い何処かで永遠に共に居てくれれば、それだけで良い



それだけが僕の最後の願いだ









僕は彼等の墓前に座り、ミヤが持参してくれた大吟醸、朧月夜をワイングラスに傾ける



そしてモリサダの眠る大岩に供えられていたワイングラスへ、ティンと甲高い音と共に幾度目かの乾杯のメロディーを奏でた



自分のグラスを口元に傾け、コクリと咽を鳴らす



不意に視線を向けた先は藍の岩




【あ、僕等だけ飲んで申し訳なかったな! 藍も酒はイケる口か?】




そう話し掛け、ニコリと笑う



彼女が膨れた顔を見せた、そんな気がした




【悪かった、悪かった! 僕のグラスで良いか?】




僕は自分のワイングラスから半分まで減った酒に注ぎ足し、藍の前に差し出す



酒が減りこそしないものの、彼女もまた美味しそうにグラスを口に流し込む姿が目に浮かんだ








そんなゆっくりとした時間を感じ、風を感じ、幸せを感じていた時だった






背後にある女神の丘への山道から聞こえる足音に耳を傾け、振り返る






ソコには寄り添う様に歩み寄る2人の姿



この場をミヤが立ち去る前に話していたレイジと彼の妻だった




「ノア様、ご機嫌麗しく♪」




そう言い、深く頭を下げたのは()()()




【ああ♪ ミヤが間もなく2人で来るだろうと言っていたよ】



「そうでしたか♪」



【それより、こんな坂道を身重の女性と訪れて問題無いのか?】




そう話し掛けた僕は()()()に顔を向ける



彼女のお腹はポッコリと膨らみ、脱ぎ着し易く余裕のあるワンピースを纏って居た



大変な山道とはいえ、彼はもとより彼女も息1つきらしては居無い



そんな彼女が僕に笑い掛け言った




「大丈夫だよ、ノア様♪ この位なら平気平気!」



【そっか! でも無理はするなよ?】



「うん!」




僕に微笑みながらお腹をさする彼女



隣に居るレイジも彼女の腰の辺りを優しくさすっていた




【まあ、先ずは座ったらどうだ?】



「そうですね!」

「そうだね♪」




2人が答えた時、さっきまでは気にもとめていなかったレイジの背中にリュックサックの様な荷物入れが担がれて居たことに気付く



彼はソレを目の前に持ち替え、開いたリュックの口からブルーシートを取り出し広げた



それなりに大きめのシートへ僕と妻を促し、また荷物入れから取り出したのは箱が2段に積まれた弁当



それを僕達3人の前に蓋を開けて置いた


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