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ルビーアイ Noah's memory ~神の追憶~  作者: アゲハ
4章 地球からの来訪者
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96話 門番交代

紅、蒼のゲートを必要以上に大きくし無かったのは彼等の配慮を感じさせる



両隣に空いた穴から見えるのは、それぞれのゲートと同じ大きさ、同じ真円の《大きな瞳》





ルビーのゲートからは《蒼い瞳》


サファイアのゲートからは《紅い瞳》




本来の力とは対称の色




大きな瞳の中に黒い菱形の瞳孔を僕に向け、同じく大きな(まぶた)が数秒毎に落ちては開いた




彼等はルビーとサファイアの守護龍、ホンとツァン




元々1匹の生物だった者を彼等の為、2つに分けたからこそそれぞれの欠片が真逆の瞳なのだろう




主様(ぬしさま)、少々よろしいでしょうか?】




先に声を掛けたのは眼が蒼く、瞳の大きさに調整したゲートからは姿の見えない紅き龍、ホンだった




【ん? どうした?】



【主様は先の戦い…… 天魔大戦の折、ムーン様の件をご存知なのでしょう?】




言いたい事は解っていた


充分過ぎる程に理解している




僕は天魔大戦後にも地球の神を続けている


今現在、門番をしているのはアーサーとライに頼んだ一時的な門番交代


咲子と泉に会う為だけであってその理由以外は無い


そして皆には余計となる事を語るまいとし、僕だけが《ソレ》を受け止めていた





だから双龍にも、こう応えた




【ああ、知っている】



【知っていて…… なぜ……】



【アイツは…… モリサダは《ソレ》を選んだからだ】



【選んだからとて……】



【思いも、そして想いも…… お前達は踏みにじるのか?】




僕は表情を変えず、両隣に視線を移す


大きな真円の各ゲートを埋め尽くす彼等の瞳


ソレを包み込む大きな瞼がゆっくりと閉じる






そして






沈黙が流れた






僕はモリサダを軽んじて居無い


双龍もまた同じだ


彼等は以前、僕を祖父と呼んでいた


だがモリサダこそが、かつての祖父


僕は彼等にとっての曾祖父




モリサダはムーンとして生きていた時代、妻であるアースと共に地球を繁栄させていた


直線的に愛情を注がれた訳では無いが、それでもモリサダを慕って居る事は理解出来る






【すまなかった…… 意地の悪い話をしたな】



【いえ……】

【いえ……】




僕は彼等に頭を下げた



瞳だけを向けた双龍



元々表情の変化はあまり感じられない



それでも1オクターブ下げた声からは淋しさを感じる




【なぁ、ホン…… ツァン…… モリサダに会ってこい! 今は宮殿に居るだろうから】



【良いので…… しょうか?】



【良いも悪いも無いだろ? お前達はモリサダと藍の孫だぞ♪】




そう言い向けた僕の笑顔


彼等の瞳孔が大きく開く




【そう、ですね…… 何だかお会いしたい気分です…… 母上の匂いを思い出したので淋しくなってしまったのかもしれませんな…… ハハハッ♪】




匂いを感じた?




ああ、そうか……




感じたのは()()()()()()




彼女達、泉と咲子の中にあったラピスの残骸




ソレを感じ取ったのだろう




本来死んだままの姿で現れるはず




彼女達はラピスを手に入れた全盛期の若さで終焉の門から現れた




守護龍として、センスのフィルターに引っ掛かったのだろう




だから僕は、彼等にそのまま伝えた




【ソレは匂いじゃ無い】



【は?】

【は?】



【感じたのは気配だ】



【あの…… 言っておられる意味が……】




僕は彼等に笑い掛けた


なぜ笑われたのか、彼等から感じる雰囲気は疑問が見え隠れしている




【居たんだよ、今さっきまでココにな…… 泉と咲子が♪】



【なんと!?】

【なんと!?】



【モリサダや藍に会う前に行ってこい♪ こっちの件は今この時しかないしな! そろそろ大河カタストロフィ付近だろう、急げよ】



【しかし……】



【しかしとかは要らねぇよ♪ 会いたい時に会いたい奴に会う…… それで良いじゃないか?】



【そ、そうですね!】



【それに彼女達には未来を与えた…… 優しい生まれ変わりをな♪ 運が良ければ来世でお前達を思い出せるかもな】




僕に向けていた大きな瞳


紅龍ホンの蒼い眼、蒼龍ツァンの紅い眼がキラキラと輝く




そしてソレを包む瞼が閉じた時、各ゲートの真下にボチャリと鳴り現れた大きな水溜まり




彼等が流した大きな涙の雫




感情を抑えようと自制を続ける彼等の静かな嗚咽と息遣い





【また逢えるのはずっと先の事…… 後悔はし無いように…… さぁ、行け♪】



【はっ!!】

【はっ!! 失礼します!】



【ああ♪】




そうして彼等の創り上げたゲートが閉じた








さて……








僕の中で1番楽しみにしていた事が終わった








本当に楽しい1ヶ月間








忘れる事は無いだろう








そうこうしていると、僕が居る砂漠の先から砂煙が見える



段々近付くソレ



砂漠に面した位置には緑色の箱の様な物が見える



サンドバギーと呼ばれる物らしい



砂地用の車だそうだ



《だそうだ》というのは、勿論人伝いに聞いた言葉であり、教えてくれたのはアーサーとラインフェルト



地球の知識を活用した《車》と云う物をこの世界に創った



そしてそろそろ門番交代の時間と感じ、戻ってきたのだろう




そんな彼等が僕の前に来た後、降車して大きく会釈した




「ノア様、只今戻りました! 遅くなりスミマセン」




そう声を掛けたのはアーサー




【遅いなんてとんでもない! むしろ早いくらいさ♪】



「それなら良かったです♪ では門番の職に戻りますね」



【ああ、頼む♪ あ、そうだ……】




僕が不意に思いついた考え


今思えば、もっと早めにソウできたハズだったが、この時まで忘れていたのは彼等の責任感に対して僕の甘えがあったからかもしれない




「どうしました?」



【うん、もう大きな戦いは終わったしな…… 今後は2人で門番をし無くても大丈夫だろうし、数日おきに交代ってのを提案するよ】



「それは有難いですね!」

「それは有難いですね!」




2人はお互いに笑顔を向ける


それより何より、どうでも良い疑問だが、双龍といいこの双子といい、互いの言葉がいちいちハモるのは元々1つの生命体が分かれたからだろうか?



いや、本当にどうでも良い話だったな、申し訳ない








何はともあれ、2人とも喜んでくれている様だし、今まで休暇という休暇も与えられていない



この世界には労働基準法などと云う物は無いが、それでも働かせすぎは問題だ



遅くなってしまったとはいえ働かせすぎを(とが)めず、僕の案に喜んでくれたのは良かったと思う




「この1ヶ月は急な休みだったから何して良いか解らなくて……」



「だよな…… もうちょっと予定立てて動きたかったよな……」




そんな会話を双子は交わす




「でもさ、次の休みは余裕持って《アレ》食べたくないか!?」



「《アレ》か! うん、そうしよう!」




ようやく取れる休暇にテンション高めの2人




というより……




《アレ》とは何だ?




【その《アレ》って?】




僕は双子を交互に見て、思った疑問をそのまま問い掛ける


彼等は同時に僕へ視線を移した




「ノア様、《アレ》っていったら《アレ》しか無いですよ!」



「そうですよ! 《アレ》はいまやトレンド食材ですよ♪」



【ほう…… そんなに注目集める食材なのか?】



「勿論!」

「勿論!」




またハモりやがった……




【まぁ、一応聞くけどよ…… 何て名の食べ物なんだ?】




彼等の顔は満面の笑み



そんな2人が一緒に開いた口から出た名は、




「ワームブレッドですよ♪」

「ワームブレッドですよ♪」




だった




後の世でミヤがケンシンに修練をつけて貰う際に土産として持参したワームブレッド、言葉が変われば《虫パン》


この時からのトレンド食材だったと思い返し、改めて吐き気をもよおしてしまう


長く親しまれている食べ物なのは理解くらいはしてやれもするが……




だが、やはり……




【ふざけんじゃねぇ! 僕の前で虫食うとか言うな!!】




と、当時の僕でも叫ばずには居られなかった




「えーー!! 美味しそうでしたよ!?」



【やめろ!】



「ふわふわのパン、レーズンの様に所々見える黒点♪」



【おい……】



「裂いた時に食欲をそそる芳醇な香り……」



【こら……】



「人々が嬉しそうに…… 美味しそうに頬張るワームブレッド……」



【話を聞けって……】



「ココに来る直前じゃ無く、もっと早くに気が付いていれば買ったのに……」




もはや彼等の心はこの場に無い



どこか遠い所に飛び去り、そして消えてしまった……




彼等に今後の門番を続けさせても良いのか、少し疑問を抱えた出来事であった


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