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ルビーアイ Noah's memory ~神の追憶~  作者: アゲハ
4章 地球からの来訪者
95/109

94話 67年後の世間話

泉から目を離さず微笑むと、アッと何かを思い付いた表情に変わった


そして泉は自分の左手に視線を移した先には()()()()()が握られているようだ


何かも解らぬその左手を彼女はおもむろに僕へ向けた






どうしたのだろう?


僕は疑問をそのまま彼女へ掛ける




【ん? コレは?】



「お土産(みやげ)だよ♪」




首を傾げる僕


そのビニール袋へ無造作に手を掛け受け取った






ズッシリした重さ


袋の膨らみはかなり大きい






僕は泉と袋を交互に眺め、そして両手で袋の口を開く






その瞬間、()()()()()()()()()






マジか……






久しぶりに()()()を楽しめると……






そういう事なのか!?






【コレは…… ()()じゃ無いか!!!?】




泉が訪れた時よりも1オクターブ高い上ずり声




「うん、好きでしょ?」




彼女は優しく微笑んだ






違う!



そうじゃ無い!




【好きじゃ無い!!】




そうさ


好きじゃ無い!




「え?」



【大好きだ!!!】




好きなんかで終わらせるのはガムに失礼だ



だからこの答えが正解



僕は……



僕は心からガムを愛している!




「あ、そう…… ですね……」




僕の熱とは真逆の表情を向ける泉は少し、ヒいていた



そんな事は知ったこっちゃない



僕は袋の中に顔を突っ込む



そしてスゥ…… ハァ……



大きく深呼吸を繰り返した






なんと愛らしい香りだ……






ヨダレが落ちそうになる感覚を無理矢理押さえ込む






ヤバいヤバい……






我を無くしてしまった






正気を取り戻し、ビニール袋から顔を出し、チラリと向けた僕の視線は終焉の門




そこから泉の肩越しにチラチラとこちらを伺う女性へ向けて言った




【さて、もう良いいんじゃ無いか?】




僕から目を離さない泉は首を傾げる




「何の事?」




その瞬間を彼女は見逃さなかった




「ヒャァーーー!!!!」




泉に背後から覆い被さった女性






勿論、咲子だ






その場から飛び退き見る泉の丸くした目






彼女からすれば居るはずの無い人間



それこそが咲子の思惑




「驚かせないでよ!!!」




本気で声を張り上げる泉




「ふふふ…… サプライズっしょ♪」




それに対して、ヘラヘラと笑う咲子




「アンタねぇ…… 趣味悪いよ、咲子!!」




驚きよりも最早、呆れ顔にも見える





だが泉はフゥと深い溜め息か深呼吸をした後に、咲子へ向けて微笑み言った








「ただいま♪」








咲子もまた、微笑み返す






そして、






「お帰り♪」



そう応えた








僕達3人は砂漠に腰を下ろし、談笑する



お土産のガムをついばみながら今までの事を色々と語った






その間にも扉が開き、また、閉まる







人が通り、犬が……



猫もトカゲも蟻も……



通り逝く生き物という生き物



見慣れている僕からすればいつもの光景だが、彼女達からすれば新鮮だろう




蟻は列を成して歩んで行くのがこの世界でも通例だが、魚が砂漠を泳ぐ姿は美しさすら感じる




砂の海を何にも縛られる事無く元気に跳ね回り泳ぐ




前に居た彼等の世界でも、これ程まで爽快に泳いだ事は無いだろう




転生の門までの短い時間であったとて、敵の居ない自由を体全体で表現する魚の舞いは実に力強く、そして美麗だった








彼女達にとってそんな珍しい光景に魅せられ、時折驚きで仰け反りながらも談笑を続ける








沢山話した








これでもかと言えるほどに話した








ふと、泉が呟く




「ねぇ、()()()()()?」




そう言い、キョロキョロと辺りを見回す




「泉? 何の事?」




突然の不思議な言葉と雰囲気に問い掛けたのは咲子だ




「ん? あーー…… 私達の大切な人よ♪」



「大切な人?」




そう言って咲子は首を傾げた




【そっか…… 思い出したんだな?】



「うん…… 最後の最後にね……」




少し悲しみを浮かべた泉


それでも精一杯の笑顔で彼女は言った




誰の事かは直ぐに理解する



今《思い出した女性》は、あの日この世界から離れた泉の記憶から消えたはずなのだから



それこそが前世の女性、ラフレシアだ




【そっか♪ でも、ココには居無い…… あの子は、あの子の力と共に移動したからな♪ この世界には居る…… ただ、モリサダの所に今は居る♪】



「加藤さんのトコか…… 挨拶位はしたかったんだけど…… しょうが無いよね……」




呟くように口にし、泉は少し(うつむ)いた



そんな泉と僕とを交互に見る咲子




「ジャッジメンター! 泉! 私1人だけ()け者!?」




叫び声と共に脹れっ面を彼女は向ける



僕と泉は顔を見合わせ笑う



だが泉は1度空に目を向け、そして目を閉じ……



その後ゆっくりと咲子に顔を向けた




「咲子…… あの人は…… いや、あの方は私達そのものよ♪ あの人は私、私はあの人…… あの人は咲子、咲子はあの人なのよ♪」



「はぁ? 言ってる意味が解んないんですけど……」




そう言った咲子に泉はまた笑う



咲子の素っ頓狂な表情に笑った訳では無いだろう



ラフレシアはこのカタストロフィから戦地に赴く直前の泉へ全てを話した



咲子は知らないが泉は知っている



泉がラフレシアの魂を受け継いだ者



そして咲子もまたラフレシアの魂を受け継いだ者だと知っているんだ










それからもまた僕達は話し込む






あっという間さ






実に長い世間話






あの戦争の事






あの戦争の後






子を産み、色々行ったテーマパーク






入園式や入学式






調理の失敗や、ちょっとした勘違い






孫が生まれ、また楽しい生活






両親が他界し、泣いた夜の事






アーサーとライがこの世に召されるまで彼女達を愛してくれた事






そして、曾孫が産まれた事






泉は僕へ問い掛けた






「そう言えばさ? この世界の戦争は、いつなの?」




彼女の問いに僕は笑う




【終わったよ♪ 無事にな!】




泉のみならず咲子までもが表情を固める



だが先に問いを次いだのは泉だった




「え!? 私、今日死んだのよ!? 樹と桃花は!?」




ん?



なぜその名を知っているかと思ったが、先の戦争時にモリサダが話したのだろうと思い付き質問の返しはし無かった




【樹と桃花は素晴らしい活躍をしてくれたよ♪ 素晴らしい…… 本当にその言葉に尽きる…… 有り得ないほどの力だったよ…… お前達の力を、お前達以上に使いこなすとは…… 大した曾孫だな♪】



「いや、だから…… あの子達は、まだラピスを受け取って無いってば!」




なんと説明すれば良いのだろう?



霊峰エアロス山の奇蹟?



それとも桃花の起こした奇蹟?



いや、真実の名を持つ御方の……



どれも伝えるには不充分だ






そう






なぜなら、あの戦いは全ての奇蹟と愛、そして……




優しい世界を創ろうと尽力した者達、総てが起こした奇蹟なのだから






でも天魔大戦にて間違い無い事実はある






それは、桃花と樹が居たから戦争が終わった事だ






しかも、未来から来たという事もだ






【なんつーかな…… 僕にも予想出来なかった事が起きた…… のかな? まぁ、モリサダは解っていたようだが…… 矛盾した《時間と力の摂理》、そして《在ってはならない時間の混在》…… それにより、世界は救われた】




僕にも全部が全部、理解しているわけでは無い



だから深く聞かれても困る



解っているのはモリサダが僕に伝えたこの言葉だけ








彼女達は目を丸くしていた




「それって……」




そう咲子が呟く



泉はその顔を見て、頷いた




「その言葉…… 加藤さんが言ってた言葉だね……」



【そっか! 大したもんだな、モリサダは♪】




モリサダは彼女達にも伝えていたか……



やはりアイツを神にしたのは間違いじゃなかった




「つまり、どういう事?」




どういう事、か……





元々この為に咲子を待たせた


それこそが僕の予定調和





大切なお前達を離れ離れになどさせるものか……



これは僕から君達に贈るプレゼントだ






友としても






先の地球における戦争の功労者であり救世主としても






このカタストロフィにおける戦争を終結させた素晴らしい曾孫を育てた者達としても






その全てを込め、君達には特別な家庭に……






幸せな家庭に生まれ付いて欲しい






だから彼女達に伝える言葉はコレだ





【ま、それはいずれ2人から聞けよ♪】



「2人から? 樹と桃花から?」




隠して言った言葉が即座にバレてしまうとは思いもよらない


だが間違っていないことを取り繕いで否定する必要も無い


だから僕は笑顔で答えた




【ま、そういう事だ♪】




それ以上、僕は余計な言葉を口にしなかった



だってそうだろ?



元、神であっても個々人に特別な処置をしてはマズいからな



それが仲の良い者達であっても、前世の孫であっても……



だから伝えられるのはココまでなんだ

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