89話 家族思い
突然の感謝に目を丸くしたアーサー
だが直後、目を細めて僕に微笑み頭を下げた
「僕なんですよ、感謝を口にするのは…… ありがとうございます、ノア様…… 貴方様から頂いたサファイアの種が有ったから今の僕が居るんです」
【そうか…… 受け取ってくれてありがとうな】
「それも僕の言葉です♪ ありがとうございます、ノア様」
【こちらこそだよ】
お互いに笑い合い、そして空に視線を移した時だった
ギイィィィィィィと本日も幾度と鳴った開閉音
終焉の門が開く
開けた瞬間に流れ出る蒼き力
直ぐに理解する
暗闇から指先が、爪先が……
肘が、膝が……
胸板が……
そして、頭部がゆっくりと光を浴びて浮かび上がる
ずっと語り合い、もはや見慣れたアーサーの顔
瓜二つの顔が、ソコには在った
そりゃそうだ…… 双子なんだからな
そんな愚問を思い、語り掛ける直前
扉から現れた彼は僕の隣に居たアーサーに一度目を向けコクリと頷く
そして改めて僕へ向き直り、深く頭を下げて口を開いた
「お久しぶりです、ノア様♪ 今も影のお姿なんですね…… お変わりないようで安心しました」
【ああ…… アーサー同様、逞しくなったなぁ…… お帰り、ラインフェルト】
「只今帰りました♪ まぁ、逞しくなったかはよく解りませんけど…… どうなんでしょう? でも、ただ……」
【ん?】
「精一杯…… 生きた事だけは自慢出来るかも知れません♪」
【そうかそうか♪ その自慢が自信として表情に出ているよ】
「良かった…… では門番として着任させて頂きます!」
【よろしく頼む♪ そして2人が揃った訳だ、説明させて貰うとする】
青年2人が顔を見合わせ、ニコリと笑った
僕は最低限解って居る事を問題がない程度まで彼等に話した
モリサダは秘密にしておくべきだと言っていたが、これだけは別件の事案
門番はそんなに軽い職では無い
仕事内容の難易度をいっているのでは無い
ココは僕がいずれ起こる事を知らされている戦争、その入口と遜色ない場所
ココから歩き去る強大な悪意を所持する死者を止めねば魔物に成る
それはプルートゥに繋がり有る部隊、奴等の力そのものの底上げとなる
だから僕は彼等2人までを特別として内々に話した
門番職の重さ
可能性の有無は解らないが、ゼロでは無い
それは敵からすれば1番狙われ易く、尚且つ占領されれば圧倒的に不利となるほど重大な拠点だ
万一にも冥王神プルートゥが素知らぬ顔で終焉の門へ来た時、敵とは知らず不意討ちされて2人が消されるなどという事があっては最悪だ
この説明は世界、そしてこのモリサダの両翼達を護る為の話だった
だから最優先に話さなければならない
1つ目
冥王神プルートゥは世界転覆を謀っている事
2つ目
その件に際し、知らないフリをする事
3つ目
この先の最善が見えているモリサダを全力で信じ切る事
そしてもう1つ、これは4つ目
桃花と樹、モリサダが言った事を大前提とするならば今より1年後に来訪するカタストロフィの救世主だ
この件は説明も理解も難易度も容易い
この世界に下り立った彼等を終焉の門から帰してはならない
それだけの事
だが、絶対条件でもある
モリサダが見えている戦いが真の未来であれば、奴が僕に言った事は最重要となる
《アイツらが居無いとキツい》
あの言葉は彼女達の力を表していると思われる
それだけ強い力を持っているのだろう
元々強い力を持って現れるのか、この地で更に強い力を磨くのかは解らない
だからあくまでも戦争終結まではこの世界に居て貰わなければ困る
それらを事細かに彼等へ伝えた
驚く顔を見せるアーサーとラインフェルト
それもそのハズだろう
ある意味、1番重要な拠点を任されているのだから
だが、彼等の驚きは僕の予想とは違っていた
そしてソレは彼等が、やはり家族を愛し……
この世界も愛してくれているという言葉だったのだろう
そう、彼等はモリサダが高い信頼を置いていた片翼達
2人合わせて両翼
モリサダの願う希望の未来へ羽ばたかせる器なのだから
そんな彼等が言った
僕の前で僕を蔑ろにし、お互いを笑顔で……
そしてバンバンと肩を叩き合いながら言ったんだ
「聞いたかライ!?」
「聞いたって! 僕だってココに居るだろ!!」
「お前の曾孫が…… 桃花が世界を守るんだってよ!」
「何言ってんだ!? お前の曾孫、樹が世界を守るんだってよ!」
「そっかぁぁ…… 俺等の血を継いだ子供らがなぁ…… 会いてぇなぁ」
「会いたいよなぁ…… 僕等は2人の顔を見る前に…… だからなぁ」
「でも、1年後だ!」
「だな、1年後だ!」
「楽しみだ!」
「うん、楽しみだ! サポートしてやろぅぜ♪」
「だな! 世界の為に!」
「そうさ! 全世界の為に!」
「救世主の曾ジジィだぜ、僕等!」
「おう! 僕等も…… そして今回も全力で世界って奴を守ろうぜ!」
温ったかいな、お前らは……
モリサダがお前達を選んだ理由、解った気がするよ
正直、重要拠点であるこの門を彼等であっても無くても、2人程度の人数で大丈夫かと感じた時がある
だが、彼等は2人じゃ無い
1人を2人に分けた双子
個人としては1人1人
でも、2人で1つの意志
右を見ながら左を見れるような感覚
1人に4つの眼
ソレを更にディープ・サファイア
下手したらどの2人1組にも勝てるほどのペアだろう
最強の2人が門番
最強の家族想いが門番か……
何だろう……?
変なものだが、何て言うんだろうな……
妙な感覚だ
戦争に関して勝ち負けとか、そういうんじゃ無く…… 不安みたいなものはあった、少なからずな
でも……
彼等を、アーサーとラインフェルトを見ていると……
2人の信頼、そして、全てに対する愛情を見ていると……
うん、負ける気がしねぇな♪




