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ルビーアイ Noah's memory ~神の追憶~  作者: アゲハ
4章 地球からの来訪者
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87話 時を越える力

何はともあれ、僕は永命の(シード)と白い直刀を鞘に入れてモリサダへと手渡した



笑顔で受け取る彼は、鞘から半分だけ刀を抜き、まじまじと覗き見る




【どうした? やはり形がマズかったか?】



「いやいや! ホント素晴らしい出来(でき)ですわ♪ さすがスね!」



【素晴らしい出来?】



「うい! 持ち主でも無いのにさ、()()()()()()()()()()()()()♪ コイツの心がね! 魂の奔流を感じる…… 生きが良い刀スねぇ」



【なら良かった♪】




ホッとしたのも束の間だった


不意に目を向けたモリサダが目を閉じて居た


どうしたのだろう?


そう思った時と同じくして彼は口を開き、静かに言った




兼光(かねみつ)…… か」



【カネミツ?】



「コイツの名前…… ビンビン響いてくるって言ったっしょ♪ 俺にだって語り掛けてきてるわ」



【そうか♪ なぁ、カネミツ……】




呟いた僕は柄から刀身へ…… そして鞘までをツツツとなぞる




【お前の主…… ミヤの力となって、この世界を救ってくれな】




そう伝え、指を離した瞬間だった





カタカタと刀が揺れる



それと共に、キィィィィィィィィンンと耳の奥にまで届く音色を奏でた



嫌なメロディーでは無い



妙に心地良い響きだ




「了解…… って言ってますねぇ♪」



【ああ…… 頼んだぜ♪ 期待してるからよ!】




僕は刀に目を向け、また笑い掛けた







【さて…… とりあえず咲子や泉のみならず、モリサダの逃れられない戦いも済んだ訳だ♪ ミヤが白眼のダイヤモンド・ナイツになるかはお前に任せる事だし、それも安心させて貰う】



「うい♪」



【だからまた同じ事を聞くわけだが、お前はこれからどうする?】



「そうスねぇ……」




彼は腕組みをしては空に目を向け、そしてまた足元へ目を向ける事を繰り返していた




【決めてないのか?】



「んーー…… 先ずは藍と…… ちゃんと話し合って…… それから、かな?」




初めて聞く名前だ


記憶の中に、それが当てはまる者は居無い




【誰だソレ?】



()()()ですよ! 俺の元嫁さんのね♪」



【アースだと!? アースの地球での名が《藍》というのか?】



「そうスよ♪」



【そっか…… で?】



「うい…… 藍の承諾を貰って…… 親御さんの承諾を貰ったら、このカタストロフィに連れて来ようかと♪」



【そっか♪ で…… ()()()()()()()()、お前は……】




彼は僕の問いにブンブンと首を振った




「まさか! そんな事はしないスよ! でも…… 似た状態なのかなぁ…… 一旦ラピスのゲートに入って貰ってさ…… この世界で再構築、体と心をココで創るってのが理想かもなぁ」



【確かにな…… その方法なら霊体としてこの世界で生きるよりも実体が在り、ヒトらしく生きられるだろう…… 地球でのアースは消えた状態になるだろうから、実質的に地球での生命体としては終わりとなる】



「そうスね…… だから…… 彼女の周り全てからの承諾が必要になるかも、スねぇ……」



【うむ、承諾は取っておけ…… じゃ無いと何処かしらには悔恨と私怨が残るかも知れないからな】



「ですねぇ…… まぁ、先ずは神様就任の為に水星のマーキュリー様始め、姉上方にもご挨拶をしなきゃならねぇわな……」




そう言ったモリサダは砂漠に腰を下ろして空を見た



つられた僕も見上げる



ソコには今日も青々とした蒼天が映っていた





そのまま少し(たたず)み、僕は口を開いた




【……なぁ、プルートゥにも会うのか?】



「もち!」




僕の問いにはそう答え、彼は微塵の不安も映らない笑顔を向ける




【そうか…… 大丈夫か?】



「バレるかどうかなら問題無いっしょ♪ だって兄上の画策とか《余計な事は何も知らねぇ》んスから」



【ま、そうだな♪】




とはいえ、僕に見えない先の未来がコイツには見えているのは明確だ



僕とは違い、モリサダの《知らない》は《知っているが、知らないフリ》という事



話半分で聞かないと疲れてしまう……




「うい! で、調和を取りながら地球に出向いて藍や親御さんらに信用して貰わなきゃならねぇ……」



【ああ、やる事は沢山ある】



「ですねぇ…… だが、藍だって迷うかも知れない…… 1年位掛けて信用を積み重ねますわ♪ その頃には泉と咲子に子が産まれる…… その辺をリミットにし無きゃな」



【彼女達の子供か……】



「そ! 《娘》を産む未来が俺には見える…… で、彼女達には戦争終結の際にも伝えましたが、泉と咲子の娘達に継承されたラピスを俺が一旦預かる」



【預かる? どうして?】



「そうなれば能力眼、ルビーアイを持っているのは泉の母親である胡桃の覚醒ルビーの左眼だけだ…… 赤子にラピスはマズいからさ♪ 欲しい物を無闇矢鱈と創られちゃ教育に良く無いし」



【まぁな】



「だから受け取って、そしてその後また返しに行く」



【泉と咲子にか?】



「いや、桃花と樹に♪」



【ほう?】



「タイムテーブルは決まってる…… 先ずは今から約55年後に地球での生命に終わりを告げて両翼が現れる」



【両翼…… アーサーとラインフェルトか? 彼等の訪れる時期は僕にも見えている】



「うい! そしてソコから約1年後に桃花が現れる」



【ふむ…… ん? 樹は?】



「彼は時間差を置いて桃花の少し後かな♪」



【ほう?】



「それから更に間もなく、だ」



【何が?】



「兄上…… プルートゥの反逆発起スよ」



【……そうか】



「多分、その時代から未来の桃花と樹がこの世界に()ってくる…… タイムパラドックスなんて事にはならないでしょ…… これは決められた流れへ既に干渉している物事だ」



【だとしても、お前の言っている事を整理すれば…… 無理が無いか?】






そう、矛盾点は否めない






モリサダが言っている事を整理すれば、カタストロフィでの戦争時に桃花と樹はまだ産まれていない



彼女達が産まれ、そしてある程度成長した頃にラピスを返しに行く



その後の未来、ラピスを使い熟した2人がこのカタストロフィを救いに訪れる



だが、彼女達が下り立った世界は、後に勃発すると思われるカタストロフィでの戦争直前となるのだろう



地球では彼女達が産まれる前の出来事のはずだ




【本当に可能なのか?】




モリサダは自信が映った表情で大きく頷いた




「大丈夫、大丈夫♪ ソレを可能にする力を…… うん…… 桃花は持っているスから」




なんだと?


どういう事だ


ラピス所持者とはいえ、一個人が()()()()()()()()()()というのか……?




【そんな事が…… 本当に可能なのかと聞いているんだが……】



「うい…… スゲェよな、実際さ…… あの子の感性と勘の良さは咲子譲りス♪ 桃花は…… 己の覚悟と泉から伝えられた想いで《四門(しもん)》を開く」



【四門とは何だ?】



「真実の門…… かな」



【真実の門?】



「うい♪ 《トゥルース・ゲート》ですわ」



【その門の先には何が()るんだよ?】



「《有る》じゃ無くて《()る》かな? で、ソレは真実スよ」



【何言ってんのか解らんが……】



「んーー…… つまりスね、表の裏は裏、裏の裏は表っス」



【もっと意味が解らん…… なぞなぞか?】



「なぞなぞじゃ無いスよ! 真実ですってば!」



【真実?】



「というよりも真理かなぁ……?」



【真理……】



「そ! 別な表現すれば…… そうだなぁ…… 光の反対は影っしょ? だから影の反対は光って事♪ 光と影は2つで1つ、ワンセットだからさ」



【ほう? 深く聞いても秘密だろうし…… まぁ、何はともあれモリサダは優しい世界が見えている…… そう捉えて良いんだな?】



「うい! 絶対に約束を違える事はしないと誓うス♪」



【解った、全てお前を信じて世界を託そう】



「任せて下さいよ♪」



【で、モリサダ…… ミヤへはお前の判断で永命の儀を済ませる事も了承したとして、お前自身の永命の儀はどうする?】




僕の問い掛けに彼は一瞬顔をしかめた


それを見逃す僕では無い




【どうした?】



「あーー…… いや、何でも無いス…… 俺は嫁さんをこっちに連れて来てから彼女と一緒に行うスわ♪ 俺は独自でも(ほどこ)せるんで」



【ほう…… じゃあ僕に永命のシードを頼む必要も無かったんじゃないのか?】



「ま、まぁそうスね…… でもミヤに永命のシードを創るのは俺じゃ無く、ノア様からのが都合良いんスよ」



【また予定調和か?】



「そんな所ス」



【まぁ良いだろう…… お前のやり方に口出しはし無いさ】



「うい♪」





笑顔で答えたモリサダは若干逃げ去るように砂漠から、僕の居る終焉の門前から飛び去った






後ろ姿を見送り、座る



そして門へと背中を預けるように寄り掛かった





アイツには何が見えているのだろう?





そうは思っても聞きはしない


聞いても言わないだろうし、知らない方が最善と言ったのはモリサダ自身だ





まぁいいさ……





自分に語り掛けた疑問を曖昧な形で答えにし、僕は少し顔を上げ空を見る






軽い喪失感と虚無感





ソレを感じた





意外なもので、僕は人が好きだったのだろうと……




そんな事を不意に思う




ずっと門番をしているが、特別、暇を感じた事は無い


今も開閉し死者を呼び込む門


強大な悪意を宿す魂は消し去る


だから暇を感じはし無かった





だが……





僕は、僕のレプリカであるモリサダに会った



レシアの魂を持つ咲子と泉に会った





楽しかったんだ、とても……





特に泉の件は、直接この場で進化を見れた


そしてレシアと話せた





どうしようも無く楽しくて、幸せで……





また長い時をひたすら待つのは苦しくて……





でも、自分で門を守護すると言った使命は絶対で……





僕はまた、僕の心を殺し、整えて門番を続けた


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