85話 モリサダの帰還
双龍達も納得してくれた訳だし、コレで万事問題は無いだろう
事の成り行きはモリサダが見守っているハズだし、あくまでも僕は部外者……
地球での今後の事は、先有る若者達に任せようじゃないか
だからこそ、だ
僕が考えなければならない事案は1つ
冥王神プルートゥの件
反逆だというのか…… プルートゥが……?
信じられん
信じられんが…… ダストは最期の言葉にそう言った
死ぬ間際、冷静にそんな戯れ言を言えるとは思えない
となると、真実に当てはまる
何を考えているんだ、奴は……
問い質すのが1番なんだろうが、どうしたものか……
呼び出し聞いたとして、本意を言うかは別の話だ
ダストの、魔物達の苦し紛れの言い訳と切り捨てられるだろう
確証も無く問い詰めても逃げられる
何がベストなのだ……
そんな考えを巡らせる
確証なんて有るわけも無いのだから当たり前だ
密に交流があったとされる現状と証拠が必要
だがソレは難しいだろう
書面を残してどうこうと云う事はあるまい
魔物が居て、プルートゥが居る
そして、魔物達をプルートゥが危害を加えて居無い時
そんな現場に立ち会わない限り立証は困難といえる
やれやれ、だな……
僕が頭を抱えて居た時だった
目の前にバチバチと稲妻を迸らせ、紫色の穴が開いた
ん?
流れ出るオーラは…… アイツか……
ゆっくりと大きくなるラピスのゲート
ソレが次第に小さくなった時、アイツが立っていた
僕は微笑み、彼へと話し掛ける
【お帰り、モリサダ♪】
「只今戻りました♪」
彼も笑ってそう答えた
【どうだった?】
「はい、万事抜かり無く!」
【そうか、良くやった♪ ……で、マスターとやらは?】
「次元の狭間、監獄へ幽閉を…… あそこは時が止まってますし、奴には死なれちゃ困る」
【だな♪ 最善策だ】
僕は大きく頷く
モリサダはニヤリと笑った
【そして…… どうだった?】
「どう、とは?」
【彼女達は…… どうだった?】
「素晴らしいですよ、ホントに♪ ラフレシアの魂を継ぐ者だって事もさることながら、マジで大した娘達です…… 正直、高田をあそこまで追い込む事が出来るとは思ってなかったから……」
【ん? だから?】
「あはは……」
【なぜ笑う?】
「いや、実は…… 敵には大勢の操り人間達が居たんでね…… 強い共鳴が働いていたんですわ」
【ふむ?】
「まさかそれらが創り出した共鳴込みのルビーの盾を…… んーー…… 1500枚くらいかな? 突破してマスターをぶっ殺しそうになったもんで…… さすがに焦っちまってさ…… 敵を守っちまったんですよ」
【た…… 大した娘達だな…… 確かに……】
「ですね♪ まぁ、俺の娘で、ノア様の孫娘ですから♪」
【ククク…… だな♪】
ひとしきり笑う僕達だったが、タイミングを見てモリサダへと僕は改めて向き直る
【モリサダ】
「はい? なんスか、改まって?」
【この世界での泉とダストの戦いの際、聞いた件がある】
「それは?」
【冥王神プルートゥが反逆を起こした可能性がある】
「兄上が!?」
【ああ…… ムーンとしてなら直接お前の兄にあたる者だ…… 信じたくは無いだろうがな】
「……ん ……いや、大丈夫ですわ」
【なにが?】
「解ってたんで♪ さっき驚いたのは意外と行動が早かったなぁ…… って思ったダケなんでね」
コイツ……
本当に何が見えているというのだ……
僕にも見えない物事が見えているようだ
そうとしか思えない
【双龍達を会わせた時も聞いたが、お前…… 何が見えている?】
「双龍達に会わせて頂いた時にも言いましたけど、まだ秘密ですわ♪」
【…… この野郎……】
僕はゆっくりと拳を振り上げる
そしてその拳に紫色の光を纏った
「チョイ! 待った待った!! 意味あっての秘密スよ!!!」
引き攣った顔でブンブンと大きく手を振るモリサダ
意味あっての秘密か……
何かしらの予定調和が見えているのだろう
僕は拳からラピスを解き、また彼へと向き直る
ホッとした表情に変わったモリサダへ僕は問い掛けた
【で、意味とは?】
「そ、それも……」
【秘密か? やれやれだな……】
僕の醸し出す苛立ちに苦笑いを浮かべては居たが、少々の間を置いた彼は何か思い立った表情を映す
それに対しても問い掛けてみようと思った僕だったが、先に口を開いたのは他でも無い、モリサダだった
「でも……」
【ん?】
「コレだけは伝えておこうと思うんスけど…… 《時間と力の摂理》…… そして《在ってはならない時間の混在》…… それがタイミングへと重なるんでしょうよ」
【何だそりゃ?】
そう聞いた僕へ返答しなかったモリサダだったが、その顔は真剣そのものに見える
そして彼もまた、改めて僕に向き直った
「ノア様……」
【何だ】
「兄上を…… プルートゥ様を問い質すつもりスか?」
【いや…… 確証が無ければ問い質したところで逃げ文句を並べ立てられるだろう】
「そうスね…… だからさ……」
【だから何だ? はっきり言えよ】
「今はまだ…… 兄上を泳がせておこうと思うんスよ」
【なんで?】
「問い質したら俺らの動きよりも速く先取りしたいと思うのが常っしょ? だったらまだ、のらりくらりと…… でも、俺らの思慮外での水面下で動いて貰ってた方が楽だ」
【ふむ…… 一理あるな】
「だから、この件は俺らの中にだけ仕舞って置かないスか?」
こちらはどんな事態にでも対応出来れば良い
《知っている》と気付かれるのは危険だ
モリサダが言うように先手を打たれるのは民にも危うい
万一、プルートゥと出会っても思惑全てを知らないと思わせるのは実に相手へ優越感を与える
それは共に《隙》となる
水面下、つまり僕等が知らないところで動いて居たのは今に始まった事じゃない
なら、全く知らず…… これからも知らない
やりたい様にやらせ、陰でほくそ笑むプルートゥを横目に、僕等が完全な対処を静かに確立させていくのは最善だ
部隊を整え、それをもしプルートゥから聞かれたとしても、はぐらかせる
しかも容易に……
なぜなら、プルートゥが表立って反逆するプランを《知らない》のだから
この場合の《知らない》は安全地帯となる
どんな時でも対処出来る強さ、ソレが絶対不可欠ではあるが
意外と策士だな、モリサダは……
【まぁ…… お前がそう言うなら……】
「ありがとうございます♪ しかもその方がタイミングが測り易い」
【さっきも言ってたな? 何だソレ?】
「これからまだ先の未来で兄上が確実に反旗を翻す…… その時には、この世界の強者達、ダイヤモンド所持者の出番となるでしょうね……」
【それがタイミングなのか? 在ってはならない時間の混在とかどうとか?】
「そうスね…… 今、兄上に動かれちゃ困る…… 《アイツら》が参戦してくんなきゃ…… ちぃと…… キツいかもしんねぇから」
モリサダはこの場所に来てから何度目かの苦笑いを見せ、そう言った
【アイツら…… って誰だ?】
「……後世、プリンセスとプリンスって呼ばれる2人…… ですねぇ」
【プリンセスとプリンス? 王女と王子?】
「まぁ、呼ぶのは民なんで♪」
【ほう…… で、名は聞かせてくれるのか?】
「うい! ノア様にだけね! 他には言っちゃダメすよ?」
【なぜ?】
「タイミング♪」
正直にいえば秘密は絶対厳守するとして、僕に位は話して欲しいと思う
だが、僕に見えない未来がモリサダには見えているということは、話さない理由すらもタイミングなのかも知れない
【やれやれ…… 良いだろう…… 約束は守ろう】
「ありがとうございます♪ で…… 名は《桃花》と《樹》すわ」
【珍しい名だな? この世界の者か?】
「いや、地球ス♪」
【何言ってんだ、お前…… どうやって地球から、このカタストロフィへ訪れると?】
「だってアイツらは《ラピス・ラズリ》持ってるんで♪」
【モリサダ…… 頭でも打ったのか? 今現在ラピスを持っているのは泉と宮殿のリンリン…… 咲子はそれから少し劣るニア・ラピス…… ピュア・ラピスを持ってるのは僕とモリサダ…… つまりラピスという分類なら5人なんだぞ?】
「ええ、つまり人数は変わりませんよ」
【は? だから…… お前、話を聞いてたか……?】
「在ってはならない時間の混在スよ……」
なんだ?
この確信めいたモリサダの表情は……




