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ルビーアイ Noah's memory ~神の追憶~  作者: アゲハ
4章 地球からの来訪者
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82話 対価

ダストとの戦いを終え、彼女はこの世界、カタストロフィの地上へ降りた



足元に浮遊岩を次々と創り、階段を降りるかのように一歩ずつ1歩ずつ……





降り立つ先には僕が居る





フワリと形を霧のように変えたラピスの鎧


泉はソレを体内へと戻した








僕の元に着いた時を見計らい語り掛ける




【大したもんだ…… 恐れ入ったよ】



「ありがと♪」





彼女は満面の笑顔で答えた





【完全にモノにしたな? ラピスラズリを……】



「多分ね……」



【そっか♪】





あの使い熟し方で、多分か……


それは充分というべき戦いだろ……


この女、どれだけの完成度を手に入れたいんだよ





そんな思慮を巡らせた時だ


彼女は心配そうな視線を僕のお腹の辺りに向けた




「大丈夫だった?」



【ああ、問題ない…… 修復は済んでいる】



「良かったわ♪」




良かった?


良かっただと!?


軽い…… 軽すぎんぜ、お前の言葉は!




【が!!】



「が?」



【修復は済んでいる、が!! 痛かったぞ、マジで!! テメーのせいだからな! 謝罪しろ!!】




そう言いながら詰め寄る僕




「ゴメンね!!」




両手を合わせペコペコと頭を下げる彼女




【ダメだ! 許さん!! この世界で一万年は働け!! ソレで許す!!】



「ええ!? これから本番の戦争よ!? 無理よ!!」



【ダメだ! この扉は通さん!!】



「そんなぁ…… あの時ほっといて扉から出れば良かった……」




なんて言い草だ!


謝罪の欠片も見えん!


テメェ……




【言ったなコラ!?】



「冗談よ!! 本気にしないでよ!! ちゃんと謝るからさぁ!!」



【ダメだ!!】





僕に向かって何度も深々と頭を下げる彼女








その動きが()()()()()()()()







コイツ……


謝罪は終わりってか!?


()めてやがる






ゆっくりと顔を上げた彼女



その表情には悔しさと、嬉しさとが混ざり合ったような奇妙な笑いが見えた




【おい、愚物…… 何ヘラヘラしてんだ、コラ! 僕をバカにしてんのか!? あぁ!?】



「してない、してない!! ただね……」



【あぁ!?】



「信じてくれて居たんだなぁって思ってさ……」



【何がだ!?】



「私の全てを、よ」





そう言い、彼女は自身のポケットに手を入れた



そして《ある個体》を取り出す



掌に乗せ、3つのソレを僕に向けた






個体を確認した僕は……



固まっていた







おいおい……


チョット待て……






僕は必死の平常心を保とうと努力する



いや、無理だ……



コ、コレの前で……



平常心など…… 不可能……






彼女の掌から視線を上げた先にある泉の顔



最初こそ固まっていた表情はプッ! と吹き出し笑顔を見せる



バカにされている……



でも…… でも……



平常心は、冷静は保てそうに無い!




【ぐ…… 愚物…… コレは…… もしや……!? しかも…… まさかの3つだと!?】



「コレで通行料になるかな……?」




そう言った泉は僕の手を取り、その3つの個体を掌に乗せた






プルプルと震える僕の手






泉と掌を交互に見返す






な、何て事だ……






【3つだぞ!? 良いのか!? 今更返せって言っても渡さねーぞ!?】





いや、ダメだ!



もう返す気は無い!!



返せって言われても返さん!!





僕は即座に受け取ったその手を背後に回した



そんな姿を見た彼女はまた笑い、言った




「良いよ♪ 私は(から)すぎて食べられないから……」




受け取ったのは()()



以前咲子が暇潰しと言って僕にくれたハードブラック・ガムだ






ヤバい……


本気で嬉しい!!


3つだぜ!?


1個じゃねぇ、2個でもねぇ…… 3つ♪





おいおい……





テンション上がるじゃねぇか!!!





【ほ、ホントだな!? ホントに返さねーゾ!?】



「だから…… ホントにあげるってば……」



【う……】



「う?」



【ウオォォォッッッシャャャャャャャャャャァァァァァァァァァ!!!!!!】




僕は天高く吠えた


彼女は少し後退る





その表情は少しヒいていた





「そ、そこまで…… 喜ぶかね……」



【最初はな、カラすぎて食べられなかったんだけどよ…… 食べてるウチに慣れたわ! 美味(うめ)ぇーよな、コレ!!!!】



「そ、そーなのね…… そりゃ良かった……」




精一杯の言葉を選んだと思われる泉が、一呼吸置いてまた話し掛ける




「あのさ? コレで通行料…… どう?」



【いいだろう♪ いいだろう♪ とっとと行け!】



「そんな粗雑な……」





明らかに苦笑いを浮かべる彼女だが、そんなのは知ったことじゃ無い



もういい!



早く食べさせろ!





「じ、じゃ…… 気が変わらないウチに行くね!」





彼女は(きびす)を返した



砂漠をサクサクと鳴らして扉に向かう



そして扉に手を掛けた






おっと、待てよ?


3つも貰えたガムに我を無くして居たが……


よく考えたら等価交換としてなら彼女の方に分が悪くないか?




【おい、愚物!】



「ん?」




彼女は足を止め振り向く


そのキョトンとした表情には疑問を映していた




【3つは貰いすぎだ…… 対価が合わない】



「大丈夫よ! 1つは謝罪、1つは通行料、1つはレクチャー料よ♪」



【そりゃ違う…… 通させないと言ったのは、僕の苛立(いらだ)ちからだ…… つまりは僕の腹に穴が空いた件! だから通行料と謝罪は一緒だ♪】



「え……? でも……」



【お前が僕の腹を修復したのは有難く受け取っておくとしても、2つ残ってる…… レクチャーなどした覚えは無いしな? 借りを作るのはキライなんだ、僕は】



「どうして?」



【いつ返せるか解らない借りなどするもんじゃ無いだろう?】



「そうね…… でも…… 欲しい物は無いしなぁ……」



【なんか探せよ! 欲しい物!】



「そう言われても……」





そこまで言った時、ふと、ある人物が脳裏を過ぎる





ソレはモリサダ





彼が優しい世界を創ろうとしている相棒


片翼と呼んでいた2人の少年、アーサーとラインフェルト


当時少年だった彼等であったが、ディープ・サファイアを与えられたのは意識があったラインフェルトのみ


そしてラインフェルトは咲子と合流している


ラインフェルトはアーサーの双子の兄弟


この世界に来たばかりの泉はアーサーを心配していた……






地球に戻った泉の周りに咲子が居て、双子が居るハズ……






ならばお前の為にも《コレ》は役に立つだろう





【じゃあ、コレをやる】





僕は右眼を閉じ、《蒼い涙》掌に落とした



手の上でソレが個体になる



そして彼女に向けて手を預け、泉もまた手を上げ、ソレを白くスラリと伸びた指で()()()()




「コレは?」



【シードだ】



「シード? 種?」



【そう…… これからの戦いに役立つかも知れない…… サファイアのシード】



「サファイアのシード……」



【ああ】




つまんだ種を空にかざして眺めていた彼女は、その後僕に笑顔を向けた




「ありがと♪ 確かに頂いたわ♪」




そう言って彼女はポケットにソレを入れる


そしてニコリと笑った




「じゃ、今度こそ、かな♪」



【いや、もう1つ分ある】



「もう1つ?」



【ああ、ガムもう1つ分…… そうだな…… 何があるだろうか……】




多めに恩義を受けるというのは面倒なものだな


そんな事を不意に思う




「無理に探さなくて良いよ……」




さて、どうしたものか……


真なる神の力(ピュア・ラピス)




いや、そりゃマズいだろ……


それ以外に渡せる物か……


中々に難しいな





僕は腕組みしながら空に視線を移す





【ふむ…… 空…… か】



「ちょ!! 空なんていらないわよ!?」



【やらねーよ! 阿呆(あほ)か!!】



「な、なら良いけど……」




空を見て、空を渡したくなった訳じゃ無い


空で思い付いたのは《脅威の力》だ


咲子の敵が《高田》という男なら、泉の敵も、アーサーやラインフェルトの敵も《高田》だ




そして奴は《双眼の覚醒ルビー》




使わずに済むならそれに越した事は無いが、念の為という意味でも伝えるのは有りだ





だから僕は彼女へ言った





【アルトロン】



「アルトロン?」



【覚えているか? 2匹の化身を……】



「勿論よ! 凄かったね、アレ! 紫色の空が墜ちてきたみたいだった!」




ふむ、ちゃんと見ていた様で安心した




【そっか♪ ちゃんと見てたな?】



「うんうん♪」



【もう一度言う、ちゃんと見てたな?】



「だから見たってば!」




ソレで良い


有事の際に思い出せる為の念押し


聞き逃す事は容易い


心に(くさび)を打つ為の二言(にごん)




【忘れるなよ、アレを】



「え? どういう事?」




いや、しかし双龍を召喚となるとイメージが大切か……


もっと語るべきか?


いや、モリサダがスティとして泉に会い、伝えたモノは《少々の知識》と《多量の自己解決》


本当に召喚せざるを得ない時には、出来る強さを持っているだろう


だからココは信じるべきだ、彼女を……





そういえばモリサダは言っていたな






《あの子》を見つけた、と






どんな姿かは解らないが《あの子》の魂は地球の神



地球の申し子だ



咲子の親友だとすれば、今回彼女達の戦いに同行している可能性が甚だ高い



《あの子》ならそのつもりは無くとも知識を持っているだろう




魂に住む、《アース》の優しさがな




【きっかけはアースに貰え】



「アース? 地球?」



【それだけだ……】



「だから、どういう事!?」



【コレが3つ目の対価だ】



「ふーーん……? よく解らないけど、ありがと♪」




彼女は笑顔を僕に向け、手を伸ばした




【ん? この手は?】



「握手を♪ ホントお世話になったから♪」



【こちらこそだ…… 楽しませて貰ったよ♪】





僕達はそれぞれの手を組み、どちらが先かは解らないが、手を離す



軽く深呼吸をした泉は僕に言った




「ねぇ、ノア…… 私とも友達になってくれる?」

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