71話 ニア・ラピス
「そっか…… 大変ね」
彼女は苦笑いを浮かべ、そう言った
【まぁ、でも、ココは僕じゃ無きゃ抑えられないからね】
「そうね…… ポンポン生き返られたら困るものね」
【全くだ……】
フフフッと笑う咲子
まぁ、生き返る事だけを危惧している訳では無いんだがね
1番面倒なのは、魔物の動向だ
そんな事を知るよしも無い咲子は言った
「貴方も面白い人ね……♪ そういえば神様に言伝って言われても、アメリカは遠いし……」
そう言葉にし、彼女は首を傾けた
【あれ? キミからは残り香がするんだけどなぁ?】
「残り香?」
ん?
そうか……
モリサダは彼女に接触しただけって事か……
本題はまだ伝えるべきでは無い
そういう判断なんだな? お前は……
ふむ……
【まぁいいや…… さてと、キミはルビーだな】
そろそろ彼女を地球に戻すとしようか
力を解放した僕
余計な姿は見せまい……
影の姿のまま、僕は表面にルビーアイを映した
【そして、片翼はサファイア】
次に見せたのは蒼眼だ
勘の良い娘
この世界カタストロフィ
その立ち位置も解って居るだろう
最後にアレを与えるに足る者かどうか、最終試験といこう
【もう、解っているんだろう? ココが、ドコか……】
彼女は頷く
そして、静かに答えた
「死後の世界…… 黄泉…… ね?」
【正解♪ そしてキミは条件を果たした】
「条件?」
【解っていたんだろう?】
「ああ、そういう事ね…… 解らなかったわ…… ただ……」
【ふむ、ただ?】
「この世界を見たかった、ライと同じ世界を見たかった、ソレだけ」
やれやれ
ホント幸せ者だな、ラインフェルトは♪
【そっか! 片翼の伴侶には充分な素質だね♪】
「伴侶とか、まだ早いし……」
【いや、なるよ…… 僕なら解るからね】
「そっか…… じゃ、そういう事にしておくわ……」
ふむ……
【キミも本当に面白い子だ…… そして喜びをストレートに出す事が出来ない、不器用な子だな】
「大きなお世話よ……」
【まあ、いいさ】
レシアはどちらかといえば天真爛漫な娘だ
それに比べ、咲子は堅実というか…… ネガティブというか……
勘の良さは抜群だが、それでもレシアの雰囲気とは少々違うタイプの女性に感じる
いや、僕は見た事が無かっただけで、レシアだって落ち込みもするだろう
2つに分けた彼女の魂
その1つに現れた物が堅実でネガティブ、そしてソレらを補う勘の良さなのかも知れない
ある意味、レシアの持っていたであろう心を垣間見れたのは祖父として嬉しい限りである
僕は右眼に蒼眼、左眼に紅眼を現し彼女を見た
その中心より少し上
額にもう一つ瞼を見せる
モリサダに見せた紫の瞳がある瞼だ
だが、彼女にピュア・ラピスは渡せない
せいぜい渡すのはサファイア
だが、それでも充分だろう
それより何よりラインフェルト……
【この扉を壊す勢いで外から叩かれてる…… 大した片翼だよ…… 愛されてるねぇ】
「貴方にも良い人が出来ると思うわ…… 優しさを感じるもの」
優しさか……
僕にソレをくれたのは君だよ
君の前世、ラフレシアがね
【……フフ…… キミに会えてよかったよ、咲子…… 数分だが、何百億年とココに居る僕にとってコレほど楽しい時間は今まで無かったよ……】
「私もよ…… ジャッジメンター……」
【ありがとう】
「こちらこそだよ」
ありがとう
この言葉を多用する心をくれたのもラフレシアだ
全て……
全て君がくれた物なんだよ
【最後にルビーを持ちながら、この扉から現世うつしよに戻るキミに施そう…… だが申し訳ない…… キミはまだ真の覚醒者では無い…… 手前までしか開けられない……】
そう
彼女の限界値はヒトの器だ
今の咲子の力ではラピスの途中までが精一杯
【全てを開けるのはリスクだ…… キミが崩壊する…… だからニアだ…… ニア・ラピス】
淡いサファイアを与えよう
種では無く、それでも彼女の求める力が発動出来るレベルでの力を……
ニア・ラピスだ
「施す? 開ける? リスク? ニア? 何を言っているのか解らないよ……」
【解らなくても良い…… 今はまだ、その必要が無いから解らないだけだよ…… それに今現在、真の覚醒者は3人しか居ない】
「3人?」
【そう、1人目は神、もう1人は胡桃という女性だ】
「胡桃ママは、私のもう1人の母親よ♪」
なんと!?
なるほどな……
ただの人間が、この力をもって素直な成長を遂げられるとは奇蹟と思っては居たが……
【なるほど、どおりで…… まぁ、帰ったら親とも片翼とも仲良くしてあげてくれ♪ 今でもまだ片翼が神ならどれほど幸せで、僕も楽が出来るかと思うよ……】
「アハハ♪」
つい本音で言っちまった……
フフフッ……
楽しいな、ラフレシア……
君と話すのは本当に幸せだ
「あ、ちなみに3人目は?」
【色々な名前を名乗っているからね…… いちいち変わって覚えるのが面倒だ】
「そっか…… 大変ね……」
【君の今後ほどでは無いさ…… 近々運命を変える時が来る…… 変えるのは君だ…… そして君にしか変えられない…… ニアである君にしかね…… 君の選ぶ未来によっては…… 明日、この扉を1000人程度は通るだろう】
「重役だなぁ……」
【フフッ……】
いいんだ
君は進みたいように進めばいい
さあ、そろそろ与えようか
君が求めていた力を……
僕は額の瞼を開けた
そこには『紫の眼』が咲子を優しく見ていた
【さあ、帰るんだ…… 67年と138日4時間13分丁度にまた会おう♪ 今度はこの扉から現れるキミとね】
「その時はもう少し、ゆっくりと話しようね♪」
【楽しみにしてるよ】
ああ……
真実で本音さ
本当に楽しみにしているんだ、僕は……
また君に会える時を心待ちにしているよ
あ、待てよ……?
モリサダが決着をつけたい戦い
そのピースは咲子も担う者だ
名は……
やはり言うべき、か……
【ああ、思い出したよ……】
「ん?」
【3人目…… 真の覚醒者の今の名さ】
「へぇ! 何て名前?」
必要だよな……
うん、言うべきなんだ、コレは……
そして整えておけ
心も、強さも……
ラフレシア
いや、咲子……
君が新しい未来を……
優しい世界を創ってくれ
伝えよう
覚醒者の名を……
これが君の、倒すべき敵の名だ
【高田って男だよ】
彼女は固まって居た
知っているのだろう、敵を……
僕は扉に願う
彼女、咲子を地球に戻せと……
そしてラフレシアの魂を持つ女性は、光に包まれた




