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ルビーアイ Noah's memory ~神の追憶~  作者: アゲハ
3章 各々の成長
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61話 ムゥムゥの過去

メルは真っすぐ一途な女性だったように記憶している


無茶もするが思い立ったら即行動


ある意味、彼と似た者なのだろう





お互いに()かれ合い、僕の知らぬ間に2人は()()となっていたようだ





僕は彼女の同行を許可した


ムゥムゥを含めた侍女達も笑顔で祝福する





2人は寄り添いながらエアロス山を目指す





それから程なくして獣騒ぎはすっかり()()()()()()()()





彼等の功績だとは直ぐに理解出来る





僕はある時、ムゥムゥを連れて陣中見舞いをした





そして、《話の最初に戻る》





理解出来なかった件





彼等はエアロス山に《居無かった》





気配すらも無い





この世に、()()()()()()()()()()





有り得ない





ケンシンは元より、メルも宮殿で修練を積んだ手練(てだれ)





魔獣に喰われた?





それこそ有り得ない





ケンシンは強すぎる


子供の頃に軽くあしらった魔獣に倒される?


まさかな……


何より、僕が与えた武具を携えて、尚、強さを向上させた者


宮殿では誰からともなく剣聖とまで呼ばれた男だ





彼の消息は依然として知る者は居無かった








ムゥムゥの速さは折り紙つきだ


魔獣程度に負けはし無い


僕の絶対的信頼を彼女は裏切りはし無い


(ゆえ)に、僕とムゥムゥは手分けしてエアロス山を駆け回る事とした


大きな山だ


簡単な捜索とはいかないだろう




解っている




そんな事は解っている




だが、魔獣の集団戦で無傷の生還を果たせるのは当時、僕とムゥムゥ位なんだ




心の乱れは伝染(うつ)




1人が傷付き倒される事があれば部隊は瓦解しかねない




だからこその少数精鋭




僕が山の右半分、彼女が左半分の捜索とし、真反対にて合流する旨を伝えて走った




万が一にも彼等が魔獣の餌となってしまったとして、《彼等の骨》は残るだろう




ソレを僕らは探し回ったんだ








だが、()()()()()()()()








山々を至る所まで探しても痕跡すら無い



僕とムゥムゥは山の反対側で合流した








先に到着していたムゥムゥの後ろ姿


汗だくにして立ち(すく)


全身が濡れ、(ほほ)へまばらに張り付く髪


全霊を持った捜索


彼女の真っ直ぐな気持ち


2人を探したいという執念





ソレを、痛いほど感じた





僕は背を向ける彼女の肩に、そっと手を乗せる





振り向いたムゥムゥは……





僕に抱き付き、顔を(うず)め、泣いた





今までに見た事が無い程、大きな声で叫き散らすかの様に泣いた





メル、ケンシンと(うめ)きに混ざる名





そして僕に表情を見せぬまま、心の(せき)が切れた彼女は()えた




「ケンシン!! 貴方は私に勝ちを譲らないまま居無くなるのですか!? なんて酷い男!!! 最後に…… 最後に…… 最後の最後に…… 勝ち逃げだなんて……」








泣いて、泣いて、泣いて……








泣いて、泣き疲れて……








彼女は眠るように気絶した








メルの同行を笑顔で見送ったムゥムゥ


多分……


好敵手(ライバル)と呼ばれる以外の感情が見えた


2人が、周りの侍女達から向けられていた《憧れ》


彼女もまた、ケンシンに憧れて居たのかも知れない


そして……








本人も気付かぬ内に、別の物に変わったのだろう








《特別な(ひと)》と……








僕は彼女の体を担ぎ、山を降りた








その後も折を見ては独りで探しに行った


だが、気配は勿論、痕跡が見付かる事は無かった


煙の様に……


彼等の全てが消えた様に感じた


あの男女は幻かと思える程に……









そんな彼等が…… 何億と過ぎ去った時を経て、オレンジ・ホームを訪れた





時を、越えた?


それも…… 有り得ないと思うし、信じることは出来無い


僕とてそんな事は不可能だ


有り得ない不条理が起きた


ソレは民が《霊峰》と呼び始めたエアロス山の力なのだろうか……





そんな事を思い、僕は山に振り返る



ソレは何も答えず、ただ悠然と(そび)え立って居た








宮殿に戻ってからムゥムゥはずっと部屋に閉じ籠もり、(ふさ)ぎ込んだ


食も取らず、ただ居るだけ……


永命の儀を済ませている彼女は食べなくても生きていける


だが、体よりも心が心配だ






時折、彼女の部屋を訪れて声を掛けるが、返答は無い






鍵を掛けられ表情すら見えない






しかし、生きている事だけは認識出来た






(すす)り泣く声






それだけが()()()()()()だった






心配は尽きないが侍女は彼女だけでは無い


僕はまんべんなく他の侍女達にも接しなければならない


(かたよ)りがあっては不満に変わる


だから顔の見えない、部屋の扉越しに行う見舞いがムゥムゥと唯一の接点だった






そんな彼女の部屋






ソレがある時、開いた






笑顔を見せるムゥムゥ


どこか吹っ切れた様な(たたず)まい


それが安心よりも不安を掻き立てる






極々たまに映る作り笑いに心が痛む






そんな心配とは裏腹に、彼女はそれからというもの熱心に力を、特に速さを磨いていった





いや、熱心というのは語弊がある





鬼気迫る恐ろしいまでに殺気を含ませた修練


力ばかりを望んだ物だ


しかし、侍女達も負けては居無い


憧れの存在に、いかに近付けるか……


そして、ムゥムゥの心持ちを理解した侍女達はケンシンの事を追求することも無く、力を磨き合う


その中で彼女の《速さ》は、類を見ない程の完成度へと遂げる事となった






修練が終われば一変する笑顔






誰にでも優しく接する彼女






大切な者が居無くなる悲しみを知ったムゥムゥは、人として大きく成長した






カリスマ的な人材と認知した時、僕は彼女へ《侍女長》の役割を与える






それからの事は知ってるよな、モリサダ?


前にも言った話さ


彼女は宮殿侍女達に力の必要性を説いた


そして、得意な分野を極限まで高める戦闘教育を実践した


外界には知られることの無い部隊


秘密(シークレット)部隊(・フォース)が生まれたんだ






ケンシンとメル捜索の折、僕等2人だけが(おもむ)いた


それを誰にでも任せて安心出来る強さを持った者の育成が必要不可欠と考えたようだった


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