57話 門番
僕達は城へと戻った
戻り方は人それぞれだ
僕はレイジを抱え、空を飛んだ
ムゥムゥには宮殿を任せている事もあり、ルビーのゲートを開き即座に帰る
ニコは風を創り、羽根のある乗り物、なのだろうか?
地球では後世、ハングライダーと呼ばれる物に似た造作物を創造し、帰った
ムゥムゥが言っていた隠れて特訓とやらの成果が見える
実に楽しそうに空を飛ぶニコの隣を僕とレイジは飛翔した
そして空、帰路の途中でニコへ語りかけた
【ニコ…… お前の持つピュア・サファイアは僕が持つ物と同じ、究極の創造眼だ】
「うんうん♪」
【だから宮殿に戻ったら、その力に鎖を施す】
「鎖? え!? 使えなくなっちゃうん!?」
【いや、以前にも言った通り、それでは双龍の恩義を取り去る事になる…… だからそこまではしない】
「よかったぁぁ♪」
【ただし、お前の気軽な願いも叶えてしまう危険性は否めない…… 《もう1個この世界が在れば良い》のに、《もう1人自分が居れば楽》なのに、割った皿やグラスを《バレる前に直さなきゃ》…… そんな大小の願いすら簡単に叶えるだろう】
「それ良いね♪」
【良くねぇよ…… だから危険なんだよ…… 特にお前は】
「何で?」
【カタストロフィが2つ…… どっちが正解の世界だ?】
「こっちやんね?」
【ああ…… だが、もう1つのカタストロフィも生まれるからには、僕が居るかも知れない】
「だから?」
【もう1つの世界の僕も、自分の世界を守るはずだ…… つまりは表裏の世界が全面戦争…… 全く同じ力の世界、つまり絶対の虚無へ陥る…… 勝ちは無い…… 負けも無い…… 在るのは2つの世界の終わりさ】
「うわ……」
【お前がお前を創った所で同じ事…… どっちがオリジナルだ? 勿論解らん…… 全てが同じなのだから】
「あ……」
【解ったろ? どちらもオリジナルと言い張るぞ? じゃ、2人を消すしか無い】
「だ、だよねー……」
【皿やグラスとて同じ事…… ニコなら割っても良いように、割った先の心配までして創りそうだ…… 宮殿中、皿だらけにしそうだな】
「う……」
【顔に出てんぞ】
「そんな事無い!! けど…… しそう……」
【素直で良いことだ♪ だから、力に鍵を掛ける…… ダイヤモンドの様にヴァジュラの詠唱のもと、発動するように鍵を掛ける…… すまないが解ってくれ…… お前の力はそれだけ危険なんだよ】
「りょ♪ 唱えれば使えるんやもんね!」
【そうだ♪ 助かるよ、ニコ……】
了承してくれて助かった
本心からそう思う
後先考えずに使われたらとんでもない
つまりは……
ニコが1番厄介なピュア・サファイア所持者だ……
神の力を持ち、彼女の性格ゆえ、望まずとも破壊神となりうる
ニコのささやかな願いが簡単に世界を滅ぼす可能性がある
そしてその可能性は実に高い……
彼女の了承により、ようやく安堵し僕等は宮殿へ向け空を飛んだ
先に到着したムゥムゥ含め、4人が揃った時を見計らい、大広間へと宮殿に仕える者を全て呼び寄せた
そして僕は壇上、神座へと座る
周りに立ち並ぶ侍女やコック達
僕の隣にはムゥムゥ
檀下にはレイジが跪く
ソレらに僕はグルリと目を向けた
結論だ
色々と考えた末の、結論
何が最善かと考え、そしてココに行き着いた
ソレを、今回の件と共に話し出した
【皆、すまない…… 待たせたな】
大広間に居る者達が各々、頭を下げる
皆が僕に目を向けた時、僕はまた話始めた
【今回の騒動…… 事は済んだが、詳細はムゥムゥに聞け…… そして、僕の件だ…… 2度言わないからよく聞けよ】
ゴクリと誰かの喉が鳴る
【僕は、僕のミスを棚上げする気は無い…… だが、僕が居無ければ世界が…… カタストロフィが崩壊する…… だから僕は死を選びはしない…… しかし、神の座は降りるつもりだ】
どよめき立つ大広間
ムゥムゥの顔が固まった
彼女に目を向けた僕
意志の強さが伝わったのだろうか
彼女は悔しさの表情で目を伏せた
【心配するな! 僕はこの世界に居る♪ 門番をしようと思うんだ…… 終焉の門の、な】
そう
ソレがベストだ
この世界を全力で守る為には、ココに僕が居てはならない
門番として生きる
魔物達の動向を見るのが目的
そして、罪の垢
ソレを選別する者
強すぎる罪は、強い魔物を産む
だから、これが必要不可欠
そしてそれは僕で無ければ無理だろう
【それでな、考えた結果なんだが…… ムゥムゥは引き続き宮殿を任せる…… そして神座は当面の間は空席にする…… 外界の構築、優しい世界創りは《ある者》に任せたいと思う】
周囲の者達が顔を見合わせる
ソレらに僕も顔を向け、立ち上がった
【少し待っててくれ…… ソイツを拝み倒してくるからよ♪】
その言葉だけを伝え、僕は中庭へと歩いた
そして、ルビーのゲートを手に創り、ある場所へ移動した
出口に開いたルビーのゲート
ちょうど直ぐ先に《彼》の姿を捉える
駆け寄り、話し、そして頭を下げた
その者は最初、動揺を隠せずに居た
断られもした
だが、細かく状況を説明すると微笑み、僕の考えになんとか賛同してくれた
ホッとしたよ
彼じゃ無きゃ……
彼がイエスと言わなければ全ては不可能だった議案だ
《彼》を抱え、空を飛んで僕達は宮殿の中庭へと戻る
そして歩き、大広間の扉を開けた
【悪ぃ、遅くなったか?】
大広間内を見渡すが皆が皆、元の位置で待っていた
僕は彼らに笑顔を向ける
そして、背後に居た《彼》を広間へと促した
そして僕に頷き、スタスタと入室する
《彼》の姿を見た者
壁際に立ち並ぶ侍女、コック達は疑問の表情が浮かぶ
侍女
その中の2人が「え?」と呟いた
それはニコとリンリン
そして神座の壇下
レイジも目を丸くしていた
僕と《彼》へ交互に目を向け、彼は言った
「ポポン爺ちゃん……」
と……




