54話 獣
僕は独り残った別格のオーラを放つ魔物
ソレに問い掛ける
【お前…… 名は何という?】
「ソうイうノは聞イた奴ガ先に言うモンじゃナいノか?」
一気に膨れ上がるムゥムゥの殺意
それを僕は手を上げ制した
【失礼した…… お前の言い分はもっともだ…… 僕の名はノアという】
ん?
雰囲気に微妙な変化が見えた気がする
少し頭を傾ける魔物は、その後言った
「ナるホドな……」
【僕を知っているのか?】
「アあ…… 知リすギテいる」
【そうか…… で?】
「ン? 俺カ…… 俺ノ名は《ダスト》ダ」
【ほぅ…… で、ダスト…… ココに来る前の奴等に聞いたが答えなかった】
「何ヲだ?」
【この山から出た程なく先に集落が在る…… ソコを襲ったのはナゼだ?】
「……生キる為」
【生きる為、か…… 食べたんだな、魂を……】
「アア……」
【それ以外の選択は無かったのか?】
「無イな」
ソコまで話した時、奴の背後
ダストの城入り口から魔物がゾロゾロと姿を現した
結構な数だ
その中の1体が口を開く
「何ヤっテンだ、ダスト……」
「話ダ…… 見テ解るダろ」
「ダラダラ話シて無ェで殺れヨ」
「話の最中ダ」
「仲間殺ラれテんダぞ!?」
「黒鎧ノ女は冷静ダ…… イイかラ待っテろ」
「ウるセェよ! オ前のヤり方にャ付いテけネぇ! 俺ラは俺らノやリ方で殺ル!」
「死ヌぞ」
「死ナ無ェよ!」
「ヤレヤレ……」
そう言い、首を振ったダストには呆れた雰囲気が見てとれた
そして、奴は城の入り口付近にまで歩みを進める
背中越しに奴は言った
「マ、頑張レよ…… せイぜイな」
「黙ッて見テロや!」
城から溢れ出す魔物達は大空洞の時ほどでは無い
100には満たないだろうが80から90体といったところか……
直後
ソイツらが一斉に向かってきた
奴等の顔
狂気に満ちた眼
その瞳は真っ直ぐ1点を捉える
ソコに映るのは……
僕だ
ムゥムゥが飛んだ
レイジが大剣を構える
ニコは僕の前で両手を広げた
「ノアさはヤらせんよ!!」
そう叫んだニコ
左手は僕を庇うかのようにし、そして右手は空に向けて掲げた
紫色の渦が巻き上がり、ニコの右手を包む
この空洞の天井まで届く程の渦を立ち上らせた時、ソレが消えた
代わりに現れた物
《ティラノ・クラウン》
片手でその巨剣を持つだと!?
しかもストック・ゲートを詠唱無しで開きやがった!?
コイツ……
戦いの中で成長してやがる……
「ムゥちゃ! 高く飛んで!」
「え!? わかりました!」
「いっくよぉぉぉ!!」
ニコは構えた
ゆっくりと腰元に持ってきた豪剣
ソレに左手を添える
そして、吠えた
「ノアさはヤらせんて…… 言うてるやろぉぉぉ!!」
力を込めた豪剣
一気に振り切る
ゴヒュュォォォォォォォ!!
空気を切り裂いた豪剣が啼く
それと共に、ズギュボボボボボボボボボボボボボボボ!!!
ガッッッキャャャャャャャャャンンン……
魔物が切り裂かれ、破裂した音
そして何かに衝突した音が周囲に響いた
改めて目の前に視線を移す
ソコには後陣で向かってきた半数弱の魔物が残り
先陣を切っていた半数以上の敵が立っていた
ただ、先陣の半数以上
それは不思議な形で立っていた
足だけが地に立っていた
者によっては腰までが……
上半身を何か、大きな獣に喰われたような
そんな姿で、足だけを地に付けた光景
最初から脚部しか無かったかのように、ただ、自然にソコに…… 足が在った
獣に喰われた、か
正しいのだろう
奴等は、ティラノ・クラウンと云う名の獣に喰われたのだから
ゆっくりと僕は視線を横に向ける
レイジが目を丸くし、その手には大剣、インフェルノを両手で支えて居た
その剣からガリガリと鳴る音
鍔迫り合い
レイジにとって、不本意な力の押し合いをしていた
そんなレイジが口にした言葉
「に…… ニコにー……」
「ん?」
ニコはティラノ・クラウンを振り切った姿のまま、彼へ顔を向ける
レイジの顔は、苦笑いだった
そりゃそうだろう……
「ニコにー…… ノア様を守る為に一生懸命は良いんだけどさ…… 周り見て剣振らないと、俺…… 死んでるよ……」
そう
ニコが振り切ったティラノ・クラウンは、僕の隣に居たレイジまでを襲っていた
それを、いち早く察したレイジが自己をインフェルノで守っていた
その時の音が、衝突音だった
一度首を傾げたニコ
あっ、と表情を変え、
「レジさ! ごめーーーーん!」
そう言って同じ姿のまま何度も頭を下げる
「あ、謝るんだったらさ…… ティラノ・クラウン移動してから…… 言ってくれない?」
インフェルノで巨剣の一撃を受け止め、プルプル震えながら話すレイジ
振り切ったままで謝罪していたニコの巨剣であり豪剣は、いまだにレイジの剣とギリギリガリガリ音を鳴らしていた
「インフェルノがさ…… 『さすがに痛ぇ』って言ってるから……」
「あやや!」
レイジから離した豪剣を、その刀身の長さ故、斜めに地に刺し、ニコはまた何度も謝っていた
ちなみに……
急いで謝罪しなきゃならないって気持ちは解るケドよ……
気軽に地上へ刺すんじゃねぇよ……
斜めに突き刺さるティラノ・クラウン
破壊の為のラピスを纏った豪剣は大空洞内部での様に、また大地に数本の亀裂を生んでいた




