51話 桃眼と水色眼
地に刺さるティラノ・クラウンに足を掛け、焦りと驚きの表情を代わる代わる変えたニコ
そんな、そびえ立つ剣に暗闇から静かに歩み寄る音が聞こえる
その者は傍らで足を止めると見上げる様に、ニコへと話し掛けた
「ニコ…… 貴女の筋力なら4、5メートル程度なら落ちても痛みは無いでしょ?」
「ムゥちゃ! 無理やぁぁ…… ココからやとメッチャ高いんよ!」
やれやれと首を振るムゥムゥ
言いたい事は解る
だが、僕にも彼女達に聞きたい事、言いたい事があった
だから僕は風を創り、空洞内を飛んでニコの元へと寄って行ったのだった
【話がある…… ニコ…… 先ずは僕に掴まれ】
そう言って手を差し出す
その手を掴んで僕の体に抱き付いたニコは、エヘヘと笑った
そして僕は空洞内、地上へと降下をした
【ニコ、降りたぞ】
「うんうん♪」
【いや、うんうんじゃ無ぇ…… 離れろよ】
「えーーー!!」
【いや、えーでも無い…… 話があるって言ったろう…… 話しづらいだろうが】
「むーーーーー……」
膨れっ面を見せながら渋々離れるニコに目を向ける
そして、僕は言った
【ムゥムゥ、ニコ…… 大したモンだった……】
「有難き御言葉……」
そう言葉を紡ぐとムゥムゥは頭を下げる
そして、顔を上げた後に……
僕はムゥムゥを見た
眼を見た
そして、改めてニコを……
ニコの眼を見た
【お前ら…… その眼は何だ……】
僕の目に映ったモノ
彼女達の眼
いつもの瞳の色では無い
ソレは当たり前だ
あんな芸当を常人が出来るわけが無い
そして……
白くも無い
ダイヤモンド・アイでは無い
ムゥムゥの瞳の色
ソレは……
桃色に輝いていた
そして、ニコは……
水色に輝いていた
僕の言葉を理解出来なかったのか、ニコはキョトンとした姿を見せる
ニコの件は解る
先程《成った》のだ
ダイヤモンド・アイを発動出来た際に、ソウ成った
ムゥムゥは理解出来たようだった
彼女は以前から……
多分、ソウ《成っていた》
彼女は…… ムゥムゥは言った
「お伝えする事を出来ずに申し訳御座いませんでした……」
【いや、もう済んだ事だ…… とやかく言うつもりは無い…… 理由だけ話せ】
「はい……」
軽く息を吸い込むと、彼女は口を開いた
「私は紅龍、紅龍様からピュア・ルビーを頂きました」
【ああ……】
「そして、ニコは蒼龍様からピュア・サファイアを……」
【ソレは理解している】
「私達は隠れて力を磨きました…… この世界を守る為にです…… そして、ある時……」
【混ざった、のか……】
「はい……」
何て事だ……
才能以外の何物でもない……
解った
全てを理解した
ムゥムゥの驚異的な力と速さ
ルビーアイで筋肉が弾けるまで膨張させた
言葉通り、弾けるまで……
もはや弾けたのに尚、膨張を止めずに発動しやがった
だが、弾けていない……
その無理とも思える使い方
ルビーで人の限界を超え、その遥か先の段階をダイヤモンドの力で無理矢理抑え込みやがったんだ
その上で筋繊維が切れるギリギリまで力を搾りきった
何て奴だ……
才能の証が眼に表れている
紅眼、ルビーアイと……
白眼、ダイヤモンド・アイを混ぜ合わせた
桃眼…… 《ピンク・ダイヤモンド》と云うべきか……
破壊の力を放ち、自己に纏う事の出来るルビー
その完成形、ピュア・ルビー
ソレをダイヤモンド・アイで更に底上げした……
完全なる破壊……
そして、ニコ……
彼女の眼は水色……
蒼眼と白眼……
水色の眼、《ターコイズ・アイ》
世界創造の完成形、ピュア・サファイア
全てを創る事が出来る上、ダイヤモンドにより力すらも持つ
ある意味、僕に近い力
そしてムゥムゥは、破壊の力だけをいえば僕を超えたかも知れない
そして、解った事はまだある
確かに彼女達は《嘘》を言っていなかった
双龍が与えたモノは、ラピスだと思っていた
だが、実際は違った
問い詰めた僕に、両者とも真実を語っていた
《ラピスは持っていない》と……
そして、前回の《ミス》を踏まえて、僕へ《この場に来る事を言わなかった》のだろう
今回、付いて行くと言えば、僕は宮殿に残れと言ったハズ……
だから口にし無かった
止められない様に、《勝手に来やがった》
チィ……
僕の事をよく解ってやがる……
そして更にもう1つ解った事
コレは結論として、僕のミスだ
ムゥムゥが、この場に来た際に放ち、レイジを救った桃色の稲妻
アレは彼女の力を纏った《苦無》だろう……
ムゥムゥの持つ魔断ち
そしてココにレシアへ僕が創った鞘があるということは……
多分、闇断ちも持っている
あの日、レシアの元に戻った時には闇断ちが姿を消していた
ムゥムゥが回収したんだ
鞘と共に……
ルビーアイを持っているなら、呪の穴を開け、オレンジ・ホームへ来る事など造作もない
そして、ニコに……
ニコのサファイアで闇断ちと魔断ちのレプリカを増産依頼した
ソレに力を乗せて、投げた……
そしてソレは、レイジがあの日レシアを助ける際に見せたムゥムゥの苦無、闇断ちから迸った桃色の光
アレと同種だ
レシアに闇断ちを授ける際には万一の時の為、苦無にも力を忍ばせ、分けていたと云う事
お前が先にピンク・ダイヤモンドの存在を教えてくれていれば、ムゥムゥが集落に着いてくる事を拒絶しなかったろう
そうすれば、レシアは……




