48話 体現
どういう事だ……
誰かは解らないが、こんな暗闇ではお前だって見えないだろう!?
「いいですね!? 小さな小さな光を創りなさい! 火花程度で構いません!」
姿の見えない女が叫ぶ
僕に言っているのか!?
いや、違う!
「りょ! 火花程度やんね!? いくよ!」
《僕の背後》から聞こえた声
2人目!
コレも女か!?
誰だ!?
ダメだ、見えない!
「どや!? こんな感じ!?」
その女が叫ぶ
到底、辺りが見えるとは思えない程の些細な光
そんなモノで見えるわけが無いだろう!?
だが、僕の前方に居る女が言った
「充分です! 《私の力》、いかがです!?」
「《見える》! すんごい見えるね!」
なんだと!?
何を言っている!?
僕には何も見えない!
「良かった♪ では例のモノを創りなさい! ひぃ…… ふぅ…… みぃ…… 最低でも500本!」
「500、りょ! ドンドンいくよぉぉ!」
「ええ! 次々と私目掛けて投げて!」
「あいさー!」
何が起きている!?
何なんだ、コレは!?
敵……
では、無さそうだ……
殺意は感じる
でも、僕やレイジに向けられたモノでは無い
「では…… 行きます……」
指示した女
その声が……
声の質が……
突如、変わった
「許しませんよ…… 絶対に…… 私を止める者は居無い…… 貴様らを殺す…… 私の……」
悔しさが滲む言葉
言葉に詰まらせながら……
絞り出す、後悔に似た想い
そんな女性が直後に放った言葉に、僕は衝撃を受けた
「私の…… レシア様を返せ!!!」
レシアを知っている!?
誰なんだ!?
直後、彼女の気配が消えた
いや、消えたわけじゃ無い!
至る所に彼女の気配が在る!?
リンリンの分身!?
この女はリンリンか!
違う、彼女じゃ無い!
落ち着いた声!
明らかに彼女よりは年上!
しかし、彼女の分身以外に考えられない気配
ソレも違う
違う!
コレは違う!
リンリンの様な《どこにでも気配が在る》のとは違う!
確かにソコに居たのに、次の瞬間、別の所に居る
そんな気配の入れ替わりに感じる!
バカな……
本当の稲妻か!?
音速……
いや、光速にも感じる動きだと!?
「殺す
殺す
殺
す殺
す!」
向こうから声が!?
手前!?
いや、そっちか!?
声が……
まばらに耳に届く
それと共に捉える音
何かを突き刺す殺傷音
「殺
す殺す
殺 す殺
す!」
どんどん減っていく
敵の気配が……
何んなんだ!?
信じられない物事に、僕は叫んで居た
【お前は誰だ!? 敵か味方か!? どっちだ!!】
周囲を埋め尽くしていた、女から感じる殺意
ソレが一瞬、消えた
そして彼女は答えた
僕の問いに少々の平静が見え隠れする声
有り得ぬ速さで移動しながら、確かに僕に向けて答えた
「勿論
私は
ノア様
の
味方
で
すよ」
その言葉も至る所から聞こえる
ソコに居たのに、もう居無い
何だコレは……
速過ぎる!
「ノ
ア様!
受け
取って
下さ
いまし!」
何かを頼まれた!?
何かが僕に向けて飛んでくる
大きな何か
僕はソレを受け取った
重い、ガッシリとしたモノを
何かを頼まれた!?
何かが僕に向けて飛んでくる
大きな何か
僕はソレを受け取った
重い、ガッシリとしたモノ
手から流れる情報
鉄板
コレは、腕?
大きな体
鉄板は鎧か!
【レイジ!】
「う…… ノア…… 様……」
【大丈夫か!?】
「は…… はい…… 何とか…… コレは……?」
【解らん…… 味方らしいが……】
「尋常じゃ無い速さ…… ですね……」
【あ、ああ……】
「感じる敵の気配が…… ドンドン消える……」
【信じられない事が…… 実際起きているな】
「はい…… ヒト…… なのでょうか……?」
【言葉を話したんだ…… ヒト…… だろうな】
「光の様な速度ですよ……? 正に稲妻の所業ですね……」
【あ…… 稲妻…… か】
「どうなさいました!?」
レイジが僕に問い掛ける
不意に思い出した事が有った
そして、そのまま僕は、口にした
【レイジ…… この大空洞に入る前…… 僕が教えた戦い方の理想理念を覚えているか?】
「はい…… 確か、風林火山…… ですよね?」
【そうだ…… そして、思い出した】
「思い出した、とは?」
【言ったろう? アレは4つに絞った言葉だと……】
「はい」
【誰かは解らないが…… 体現しやがった】
「は? 体現?」
【そうだ…… イン、ライテイ】
「イン、ライテイ……」
【そう、風林火山に続く言葉だ】
「それが……」
【ああ、陰…… そして、雷霆…… 風林火山陰雷霆……】
「つ、つまり……」
【隠れる時には、陰の様にヒッソリと…… 侵略する時には雷霆…… 稲妻の様に…… 素早く、激しく】
「ま、正に……」
【ああ…… あの女らしき者が…… やっている】
その後の言葉をレイジは口にし無かった
僕には解る
彼は、あっけにとられているのだと
姿の見えぬ女が、レイジの極論と切り捨てた究極の戦闘理想を実行していたのだから……




