47話 愛ゆえに
息を整えたレイジ
大剣を構えたが、彼は足を止めた
レイジに問い掛けた魔物が居たのだ
「オ前…… アの時の男ダな」
魔物の一体が前に出る
ソレにレイジは目を向けた
「誰だ……」
「俺ノ…… 《イブァ》ガ追っテ行ッた女ノ傍に居タ男ダな」
「イブァ……?」
「とボけるナ」
「お前達に名前が有る事を知ったのだって今だ」
「クッ…… 俺ノ《イブァ》……」
「俺の? お前の恋人か…… 追って行った…… あの時の《大きな羽の女形》か?」
「ソうダ! オ前ガ殺しタのカ!?」
「結果として…… そうなる」
「結果ダと……!? 返セ! 俺ノ…… 俺の《イブァ》!!」
「じゃあ、俺のレシアも返せ」
「知ルか! 食糧ノ事なド!!」
「なら話は終わりだ…… お前は、お前事だけを言っている…… お前の女はレシアを食べる為に襲った! 俺はソレを阻止する為に殺した! お互い当たり前の事をした! テメェの理想だけをほざくな!!」
レイジが魔物へと言い放つ
【良いねぇ、レイジ…… お前の覚悟がビンビン伝わる…… ヤって来い】
「はい!」
魔物がレイジに走る
レイジも魔物に跳ぶ
奴の爪が向けられた
ソレを剣で跳ね上げる
そのまま剣を空中で止め、振り下ろす
避けられた
岩の様な足を振る
ガキャーーーン!
甲高い音と共に仰け反ったレイジ
だが、奴の足は剣が止めていた
止まる時間
睨むレイジ、睨む魔物
お互いが引くことは出来ない想いの優劣
負けた方の愛が打ち砕かれる戦いだ
レイジは目を閉じた
「やろうぜ…… どっちかが死ぬまで」
「当タり前ダ…… 絶対に殺ス」
魔物が跳ぶ
レイジは目を閉じたまま、大剣を掲げた
そして、振り下ろす
魔物の左腕が上がる
右手が黒く光る
左腕を犠牲に、右の爪で仕留める気か!?
魔物の左腕に振り下ろす大剣
カッッ!!
当たった瞬間、そんな音がした
振り上げた魔物の爪
レイジに刺さる
その前に、堕ちた
魔物の体から、離れ飛ぶ左腕
上半身
右手首
全てが宙を舞った
左肩から右足までを、斜めに白い閃光が走った
「俺の…… レシアへの想いと…… お前のソレを同格にするなよ……」
レイジは振り切った姿のまま、そう呟いた
目から光を失い、地へ落ちる魔物に向けた言葉だった
「貴様…… 殺ス…… 絶対に殺ス!!」
視界を埋め尽くす魔物が各々叫ぶ
まだ魔物の数は相当量居る
そんな奴等に体を起こし、レイジは言った
「黙ってかかって来い」
怒りをあらわにする者
全ての魔物がそうでは無い
一部のソレ達は顔を見合わせていた
「ドう殺ス……? 妙な力…… 紫ノを使ウ女のガ…… 多分、強ぇゾ」
魔物達の話し声を僕の耳が捉えた
女?
僕の事か……?
さて、どんな戦いを見せてくるか……
瞬間、魔物の表情が変わった
何かを仕掛ける
そんな雰囲気に取れた
直後
「行ケ!」
僕等の間に割って入るかの様に数十体の魔物達が飛び掛かる
左右に避けた僕とレイジ
「予定通りダ! ソのマま奴ラを《分断》スル! 男カら仕留メろ!」
分断だと!?
まんまと引き離されたか!
ラピスの剣を振る
奴等の肢体がボトボトと音を立てて地に落ちた
魔物の陰になり、見えないレイジ
だが力を込めた剣を振っているのは解る
奴等の頭部が体から次々と吹き飛ぶ様がソレを物語る
現状では問題は無い
だが、何より敵が多い!
後続に魔物が連なる
それでも振る、僕等の剣
目から光を失う魔物
その中の一体がレイジの剣、インフェルノを体に受けながら掴んだ
「取っタ! ヤれ! 男を殺セぇぇェ!」
レイジに向けて放たれた拳
グハッッッ!!
体が《く》の字に曲がった
背中にもう一撃
レイジの体が吹き飛ぶ
魔物の……
軍勢が居る方に弧を描いて!
「良イぞ! 女ヲ殺す側モ気を付ケろ! ソイツは強ェ!」
僕は剣を振りながら走った
こちらを分断した魔物達の群れ
ソレらを切り刻む僕の剣
そのスピードが、落ちた!?
何だ……!?
堅い!
急に魔物の硬度が増した気がする
コレは……
共鳴か!?
僕に向けて飛び掛かる奴等の意志
ソレが統一されたのか!?
甘く見ていた
全くのイレギュラー
ココには凄まじい数の魔物が居る
奴等の……
個々の力が大幅に増大した
ヤれる……
僕なら問題無い……
だが……
ちぃ……
多すぎる!
その間にも力無く宙を飛ぶレイジの体
体勢を変える気配が無い
気を失っているのか!?
彼が堕ちる先
その魔物がレイジに手を向けた
黒光りする禍々しい手
放つ!?
黒球!?
【レイジ!!!】
僕は叫んだ
飛んだ意識を取り戻す彼
その顔が強張る
魔物が笑った
そして、黒い玉を手に作りあげた
終わった
そう思った瞬間だった
稲妻が飛んだ
《桃色の稲妻》が……
何が起きたのかとあっけにとられる
一瞬の出来事だ
本当の一瞬
レイジが飛ばされ墜ちるハズだった場所
ソコに居た、黒球を手にする魔物
ソレらの頭部、眼球が……
十数体、一斉に桃色の稲妻を吸い付けたかの様に、当たって…… 弾けた
次に見た光景は、手から黒球を消し、両手を顔に宛てて呻き転がる、頭部が残った魔物
その手、指の隙間から突き出た何かの柄、らしき物
それを抜くことも無く、ただ這いずり回り、そして動きを完全に止めた奴らの姿だった
な、何が……
そんな考えを浮かべた時だ
《妙な気配》がした方向に振り向く
ソコに在ったのは、僕が生み出した光
小粒の太陽
それを《黒い何か》が握り潰したのを見た
「間に合いましたね……」
誰だ!?
僕の太陽を握り潰した者か!?
声からするに、《女》!
またも光閉ざされ訪れる闇
女の声に不安は有る
敵か味方かも解らない
しかし、コレでは何も見え無い!
ダメだ
先ずは、レイジを救わねば!
僕はラピスの剣を地に刺し、右手を閉じる
そしてもう一度、灯りを点ける
ハズだったものを、《止められた》
僕の閉じた右手を掴んだ、誰かの手
優しく、柔らかに包んだ両手と思われる温もり
「光は要りません♪」
そう言った声は、やはり女
直後、風が舞った
僕の周りを!?
ザザザザザザザグシュ……
気配が消える
囲んでいた魔物の気配が、一気に消えた
何だコレは……
何が起きている!?
見えない
光が欲しい!
だが、その女と思われる声の主が止めた
《光は要らない》と……




