46話 食糧
腹を抱えながら、大声で笑う魔物達
その1体が少し冷静さを持った言葉を言った
「面白ェ…… 面白ぇヨお前…… ナぁ…… ソんナ事を言ウ必要ガあルか?」
【聞いてる事に答えるだけだ、簡単だろ? 僕が冷静に聞いている内に早く言え】
「ナら…… オ前の魂喰っタラ勝手に解ルさァぁぁァ!!!」
そう叫んだ一匹が僕に向かって跳んだ
鋭い爪を光らせて僕にかかる
右手に創った小さな太陽を掌から離し、ソコに浮かべて僕は手を向けた
飛び掛かる魔物の眼前に一瞬で移動し、顔を掴む
そして、パン!!
そんな陳腐な音色と共に頭部を消去した
ヤレヤレ……
色々と聞きそびれた……
そう思ったのも束の間、頭部を消し、力無く倒れた魔物の背後からもう一体の魔物!
ソレにも手を向ける
お前も消えるか?
そんな考えを持つが……
魔物は僕に近付く前に、動きを止めた
ダラリと手を下ろし、宙に浮いた姿
意識はもう無い
目が光りを失っていた
ソコから少し視線を移す
白い線
魔物の頭部、《こめかみ》
その両端から、白い線が突き出て居た
レイジが口を開く
「俺の主に何してんだ…… 下郎が……」
2匹目の魔物、側頭部を穿ち、串刺しにした白線
ソレは、レイジ
そして、彼の突き刺した大剣…… インフェルノだった
ズァ……
そんな音を鳴らし、魔物から引き抜く
そして、ヒュン……
何も無い空を振る剣から、パタタタタッッ……
軽い音で、頭部を穿った際に付いた魔物の血液を大剣から払い、地を鳴らす
レイジは、静かに……
ゆっくり……
僕を見て、口を開いた
「ノア様…… 交渉は決裂、ですよね?」
【ま、そうなるな】
「今度は止めませんよね?」
【ふむ…… ま…… ソウするしか無いわな】
レイジはニヤリと笑った
「ヤりますね……」
【ん…… 手加減は要らねぇぞ】
「しませんよ…… するわけが無いです」
【なら良い】
「では……」
そこまで口にして、レイジは態勢を少し下げた
そしてフワリと剣を肩に乗せる
「テメェらのゲスな行いの為に…… 俺の世界が壊れた」
「アぁ?」
「償わせたいが、ソレはもう止めだ」
「何言ッてンだ? オ前」
「俺のレシア…… クッ…… クソが…… お前ら全員ぶっ殺す」
「レシア? おイ、ガキ…… ソりゃオ前の女カ?」
「いずれは…… ちゃんと伝えるハズだった」
魔物達は笑った
「ウケんぜ、オ前! ドンな女ダよ!? 髪結っタ女カ!? 髪下ろシた女か!? 短ェ髪ノ女かヨ!? 色んナ女の魂喰ッタかラ解んネぇヤ! ゲヒヒ♪」
「コロス……」
レイジは跳んだ
魔物の群れに一足飛び
体を捻るレイジ
肩に担いだ剣を横薙ぎに一閃
3つの首が宙を舞う
向けられた爪
ソレを横に躱して切り上げる
魔物の一体が左右に二分した
レイジはまたも剣を肩に乗せる
彼に与えた剣、インフェルノ
大剣に属するソレには、それなりの重さがある
ソレをその速さで振り切るかよ、お前は……
リンリンとの戦いに見せた一撃必殺
ダイヤモンド・アイとの相性が実に素晴らしい
切れ味が増した剣
程良く張り上がる腕の筋力
面白くも有り、そして、怖い存在に成ったものだ
「来いよ…… 俺を殺したいんだろ?」
レイジは言った
無言で仲間に目を向ける魔物
ソノ眼がギラリと光った時、奴らが束になって押し寄せた
体を捻り、大きく振るレイジの剣
そのまま速度を緩めず彼は旋回した
周囲に飛び散る魔物の血と破片
それでも回転を緩めない
少し距離を取った魔物
その上空から、羽を持ち、降下した魔物!?
一瞬、レイジは上を向いた
そして、投げた
インフェルノを空飛ぶ魔物に向けて!
ゴボスッッッッ!
腹部に大穴を空け、飛び去り貫く剣
力無く墜ちる魔物
そこから更に飛び寄る別の個体、向けられた黒い爪
レイジの周囲に居た者も一気に押し寄せた
武器を手放したのだ
当然といえる
だが……
レイジは実に、冷静だった
咆えたのだ、レイジが……
「来い!! インフェルノ!!!」
空から降る、一筋の白線
黒光りした爪を振り下ろしきる直前
空から寄る魔物を穿ち、突き抜ける
レイジの足元に刺さり、戻ったインフェルノは白い炎を纏って居た
白いとはいえ、まさに地獄の業火かよ……
そんな事を僕は思った
レイジがインフェルノに手を掛けた瞬間だ
地から走り寄る魔物
そして空から飛び寄る魔物の姿を彼の瞳は捉えた
空の魔物はレイジに向けて降下する
自己の重さか、羽ばたきか……
速い
走り寄るモノも速いが、それよりは確実に速いとレイジは直感した
緩急が付く襲い方に、レイジは剣を振るよりも守りに徹することを選んだ
結果として、それは判断ミスだった
空から回り込む魔物
別動隊
大きく振りかぶり放った拳を背中に受ける
ガハッ!!
口から漏れる嗚咽
その魔物の上げた拳が開く
ソコに異様なオーラ
黒い塊
黒球
ソレをレイジに向けて放った
が、ソレを僕が止める
右手で掴み、排除
そのまま左手で首を鷲づかみにし、頭部を体から切り離した
直後、両手に込めた力
両腕に紫色の何かが光る
そのままソレを具現化した
ラピスの剣、2本
左右の手に創り、無尽に振る
体だけとなった魔物が、さしずめサイコロステーキの様にポロポロと小さな肉となり、地に堕ちた
シンと静まり返る大空洞
その中で、ザッ!
一際大きく鳴ったのは、僕の隣に戻ったレイジの足音だった
「ゲホッ……」
【大丈夫か、レイジ】
「は、はい…… ゲホッゲホッ…… 有難う…… ございます……」
【怒りはもっともだが無茶はするな】
「承知しました……」
良い才能だ
体の強度と力へ、バランスが絶妙なダイヤモンドとの相性
ダメージは有ったようだが、不安が残る程では無さそうだ
少々の安心を宿し、僕は奴らに向き直った
【僕の孫婿に…… 何してんだ、お前ら】
「テメェこそ何ダ!? ソの紫色ノ物は!」
【あ? んな事を言う必要が有るのか?】
「言エ!!」
【くだらん】
「オ前ぇェ…… ソレに仲間ヲ…… ヨくモ……」
【は? 仲間を思う気持ちが有るのか? なら、なぜ他の者にもソレを与えられん?】
「知ルか…… 食糧ノ事なンぞ!」
僕の心に黒いモノが渦巻いた
【テメェ…… もう一辺言ってみろ】
「ア? 何をダ?」
【食糧…… そう言ったな……】
「そンなモンが問題かヨ?」
【そんなモン…… だと?】
「俺らダっテ喰ワなキゃ生きラれ無イ…… 当たり前ノ事ダ」
【そうか…… 正論だな…… でも、正論と僕の理想は別物だ…… レイジ、許す…… 殺せ】
「承知!」




