27話 姉妹、兄弟
ある時、2人の来訪者が現れた
ムーンとアース
宮殿の通路を歩いて居た僕の歩む先に、笑顔を見せ待っていた
【お? どうした、お前ら?】
深々と頭を下げる両名
先に顔を上げたのはアース
そんな彼女が問いに答えた
「いえ、地球もノア様のお陰で安定して参りました♪ まだ人間同士のいさかいは在る物の、常駐せずとも問題は無さそうでしたので♪」
【そうか♪ あ! 今日はレシアが戻る日だな♪ 会って行けよ】
「本当に!? ありがたく♪」
そんな会話に割り込んだ声
「お父様! お母様!」
急ぎ足で駆け寄ってきたのは丁度良く帰宅したレシアだった
2人に抱き付いては笑顔を向ける
親子水入らずってのも粋だ
そう考えた僕は3人の為の部屋を準備し、彼等の時間を作った
しばらくした時、僕の部屋の戸がコンコンと音を立てる
【誰だ? 構わないから入れ】
僕は部屋の入口へと声を掛けた
ギィ……
そんな音を立てて開く
そこに見えた姿は久しぶりに会う8人
水星の神マーキュリー
金星の神ヴィーナス
火星の神マーズ
木星の神ジュピター
土星の神サターン
天王星の神ウラヌス
海王星の神ネプチューン
そして冥王星の神プルートゥだった
勢揃いでどうした事だ?
僕はそう思う
そしてそのまま、その言葉を掛けた
【どうしたんだ? 揃いも揃って仰々しい】
8人がお互いに笑顔で見合わせ、その内の1人が一歩前に足を進めた
1番最初に創った星の神、マーキュリーだった
「大変ご無沙汰しております、ノア様♪」
【だな♪ 何億年ぶりだ? もう忘れる程に遠く感じるわ】
「で、ございますね…… フフフッ♪」
【さて?】
「はい♪ 随分と時間はかかりましたが、それぞれの星に生物が誕生し、発展を遂げて参りましたので…… ようやく皆がご報告出来る頃合かと思いまして♪」
【おー! それは素晴らしい事だ♪ よく頑張ったな!】
僕の喜びに8人が8人共、笑顔を溢す
【順調に星を生育してくれて嬉しいよ♪】
「まぁ、アースほど順調にはいきませんでしたが…… 我等もそれぞれの進化を持つ事が出来ました♪」
【まぁ、アースはどうした事か…… 特別な発展を遂げたからな】
「ですね♪」
そう言って皆が笑った
「そういえば……」
そんな言葉を切り出したのは冥王星の神、プルートゥだ
【ん?】
「先程、侍女では無さそうな女性が部屋と廊下を行き来しておりましたが?」
【侍女では無さそうな?】
「ええ…… 服が違いましたので…… そうですね…… 永命の儀が済んでいなければ15、6の頃かと? とても可愛らしい顔立ちでした」
僕は一度天井に目を向ける
侍女では無い娘、か……
服が違う……
今日居る、それらに見合った女性といえば……
【ん…… ああ! レシアか♪】
「レシア?」
【僕の孫だ♪】
「なんと!!」
全員がどよめき立ったが、僕はそれを制する
【まぁ、落ち着け…… アースとムーンの子供が産まれてな、レシアと云う♪】
「絶対神の孫…… いずれは世界を任せるので?」
【そうなれば良いな♪】
「そう…… ですか……」
少し俯いたプルートゥ
その後上げた顔、そしてその目は僕を見る
そして言った
「あの娘…… 私の妻に頂けませんか……?」
「無礼ぞ、プルートゥ! 口を慎みなさい!」
即座に叱咤したのはマーキュリーだ
言いたい事は解る
【待て、マーキュリー…… そして皆に伝える…… レシアは本当に優しく育った♪ そして力も持っている】
「力…… で、ございますか?」
【そうさ、マーキュリー…… あの子には僕の力を与えている】
「ノア様の…… 創造と破壊の力を……」
【ああ…… そしてな、彼女が彼女なりに考え、行動し、結論を出せる環境に身を置かせた……】
「それは大変よろしゅうございますね♪」
【だろ? お前達、神々は姉妹兄弟の様な者だ…… 良く出来た姪っ子さ! 鼻が高いだろ♪】
「そうですね♪」
そう言って僕達はまた笑った
ただ、その中で笑顔を見せない者が1人
プルートゥ
【ん! 話を戻そう…… なぁ、プルートゥ…… レシアには婿に欲しい男が居る…… だからその男と結婚して欲しいと僕は望んでいる】
「それは…… 神では無く…… ですか?」
【そう、ヒトだ】
「お戯れを…… ノア様、レシアは神の子ですよ? 神と結ばれる事の方が至極自然ではありませんか? ヒトなんぞゴミ粒の様な者と婚姻とは考えられません」
【だがな、プルートゥ? 神が神らしく振る舞うのも、神が神らしく世界を生育するのも当たり前の事だ…… だが、当たり前じゃ無い事がある…… 何だか解るか?】
「想像も…… 付きませんが……」
【だろうな…… じゃあ、お前は土を触った事があるか? 土を耕した事があるか? 耕し、草木を育て、そして摂取する…… プルートゥ…… お前はどうだ?】
「ありません! 服が汚れます!」
【フフフッ…… だな♪ でもな、ヒトはそれが当たり前だと思って居る…… 見た物に触れ、そして知識を生かし、己が生きる…… 僕等にとって当たり前じゃ無い事を、彼等は当たり前の様にやってのける…… ヒトって凄ぇだろ?】
「ノア様…… 我々はその様な事をせずとも生きていける…… 選ばれた者です」
【それは正論だ…… だが、正論なダケさ…… お前は神の目線から物事を考えている…… それは間違いじゃ無い♪ ただ、僕が言いたいのは、お前達の世界に居るヒトを、そのヒトの目線から親身に育てた方が優しい世界が出来る…… そういう話をしてるのさ♪ お前の世界、冥王星の民は何をどう思って生きているんだ?】
「知る必要がありません…… 私は神なのですから」
【じゃあ、お前の星は、お前の思う通りに生育しないと…… お前は消滅させて、やり直すのか?】
「私は失敗しません」
【それは誰が決めた?】
「私です」
フゥ……
そのつもりは無く、溜息が口をつく
【解った…… じゃあ、お前がやりたいようにやれば良い…… だが、レシアの件は僕の意志だ…… レシアの婿は決まっている…… 解ったな?】
「……」
【コラ…… 2度同じ事を言わせんな…… イエスかノーか言え…… コレだけはもう一度言う…… 2度同じ事を言わせんな】
「……承知しました」
【それで良い】
窓から見える景色はもはや暗がりを見せ、夜が訪れる様を僕に知らせる
そんな空の変わりゆく色合いを眺めて居た時だった
コンコン……
僕の部屋の扉をノックする音が聞こえる
扉を開けた先には長々と談笑したアース、ムーン、そしてレシアが立っていた
【随分長く話し込んだじゃ無いか♪ なぁ、ムーン?】
「ええ♪ ノア様の計らい…… オレンジ・ホームでの生活を沢山聞きましたよ! ありがとうございます…… レシアの為に素晴らしい場所を見つけて下さって♪ ……って、姉上様に兄上様!?」
僕の部屋を見回したムーンは驚く顔を見せた
そんな彼に、皆が歩み寄っては笑顔を向ける
「ムーン殿♪ 久方ぶりですね!」
「マーキュリー様! ご機嫌麗しく♪」
そう言葉を掛けたムーンは深々と頭を下げた
「ムーン殿、堅苦しいのは無しですよ♪ 我等は皆、ノア様がお創り下さった姉妹兄弟ではありませんか♪」
顔を上げたムーンに笑顔が映る
そして、
「ありがとうございます♪」
と、言葉を掛けた
「姉上♪」
次いで話し掛けたのはアース
「アース♪ 地球はとても素晴らしい発展を遂げた様ですね! 我等も其方を見習い、一定の進化がみられたので本日は報告に参ったのです♪」
「そんな…… 恐れ入ります♪」
「こらこら、貴方も堅苦しいですよ! シャンとなさいな♪」
「はい♪」
彼女達がフフフと笑う
お互い懐かしさはあるだろう
僕は椅子に腰を下ろして眺めていた
そんな2人、いや、アースに駆け寄る妹達
「姉様! ご結婚おめでとうございます♪ 長く会うことも出来ず、知らぬ事とはいえゴメンなさい!」
「良いのよ、マー、ジュピ、サタ♪ ウラにネプもありがとうね!」
「で、その子が?」
マーズが顔を向けたのはレシアだ
コクリと頷くと、アースはレシアの背中に優しく手を当て前に出す
数歩進めたレシアが皆の顔を笑顔で見回した後に深く頭を下げた
「レシアと申します! 今後とも宜しくお願いします♪」
そう言って顔を上げたレシアの目に映った皆の姿は固まって居た
あれ?
普通に挨拶したように感じるが……
そんな事を思った時だった
「メッチャ、スーパー、バリ可愛いぃぃーーー!!!」
マーズからネプチューンまでの女神達が一同に吠えた
そしてレシアの元に群がっては「歳は幾つ!?」「ドコ住み!?」と聞きまくって居た
何だっけ……
バリ可愛い…… だっけ?
どこからそんな言葉を覚えてきたんだ……
少々の疑問と彼女達の成長に不安も持ちつつ、僕はその光景に苦笑いを浮かべていた




