22話 酒のツマミ
その一連の物事を隣で見ていた僕が彼女へと声を掛ける
【そう言えばムゥムゥ?】
「はい?」
【僕がグラスを頼んだのはニコのハズだが?】
「ああ……」
そう言うと、彼女は少し苦笑いを浮かべ、目を伏せた
「ニコは持って来れません……」
ん?
どういう事だ?
【持って来れない? また転ぶからか? なら、さっきお前が貼り付けてくれたマジックテープで問題無いだろ?】
「いえ、そういう訳では無く……」
【ん? どうした? 怪我でもしたか?】
「いえ、そういう訳でも無く……」
【じゃ、何だよ?】
「今ニコは独房に入っております故……」
は?
独房!?
牢屋にか!?
何故!?
【何だ!? 何か不手際を犯したか!?】
「はあ…… まあ……」
【何をしたんだ? 言ってみろよ?】
「実は……」
そこまで言って、彼女は一度、深呼吸をした
ソコまで重い何かか!?
「ニコは…… こちらに持ってくるはずのグラスを片っ端から……」
おいおい……
【壊したのか……?】
「はい……」
【全て、か?】
「はい…… 念の為に私が取り置いたシャンパングラス、最後の2個…… ソレがコレです……」
はあ……
帰ったら僕にはグラス修理が待ってるって事か……
ニコめ……
余計な仕事を作りやがって……
【ムゥムゥ……】
「はい?」
【でかした♪ グラス2個を守った件も含めてな……】
「あはは…… 御意に……」
そう応えた彼女はまた引きつり顔を見せた
直後、ムゥムゥが急にハッとした表情へと変える
そして片腕を上げたかと思われた時、ソレを《うなじ》から背中へと伸ばす
何やらモゾモゾと背中を探って居るように見えた
【何やってんだ?】
僕は問う
「ちょ…… っと…… 待って下さいまし……」
そう、少し体を揺らしながら彼女は答える
【何だ? 背中が痒いのか?】
「そうでは…… 無く…… 有った!!」
【何が?】
表情を明るく変えたムゥムゥは背中に入れていた手を取り出した
そして僕へとその手を向ける
その掌には紙に包まれた2つの個体が乗っていた
【コレは何だ?】
そんな問い掛けをしながら僕はその個体を受け取る
そしてムゥムゥへと視線を投げた
笑顔を見せる彼女は言った
「チーズです♪」
【お前…… 何で背中から取り出すんだよ……】
「外に持っていては手が塞がりますし♪ 万一の時には即、動けるようにしておかないと!」
【そ、そうは言っても…… 動けるようにダケなら、その服のポケットじゃダメなのか? つか、背中にポケットでも付いているのかよ?】
「はい、ありますよ?」
いや、服の内側だろ?
普通は無いだろうが……
なんだコイツ……
大した者なのか……
ソレとも少しズレてるのか?
いや、ズレているんだろう……
僕の常識人としての感覚をイチイチ別方向へと上回る
でもまぁ……
紙に包まれているんだ
問題は…… 無いか
【取りあえず、ありがとな…… ツマミまで準備してくれているとはな】
「いえいえ♪ 美味しいお酒の足しになれば♪」
【ああ♪ 助かるよ】
彼女は僕に笑顔を向けると深く一礼し、スタスタと去って行った
僕は口へとグラスを傾ける
そしてコクリとノドを鳴らした
うん……
良い味だ……
周囲に目を移す
壮麗な景色
本当にコノ世界は綺麗になったものだ……
紙に包まれたチーズをかじり、そしてまたノドを潤す
本当の贅沢って……
この事だよな、なぁ、モリサダ……
お前も飲んでるか?
うん、そうだろ?
お前の救った世界で生まれた酒だぜ?
旨いって言葉以外、浮かばないよな……
僕はモリサダに笑い掛ける
奴も僕を見て、笑っていた
さあ……
気持ちの良い酔いも回った事だ
続きを話そうか……




