20話 アーモンド型
朝が訪れる
いつの間にやら眠ってしまった僕はレシアと共に、レシアの部屋で、レシアのベッドで瞼を開けた
チチチ……
小鳥が囀る
実に目覚めの良い朝だ
僕は隣に目を移した
ん?
レシアが居無い!?
「おはよー! ホン、ツァン♪」
居無いと思われた驚きをすぐに払拭する優しい声
僕はゆるりと体を起こし、窓際へと足を運んだ
窓の外に広がる中庭
ソコにはレシアが2匹の龍達と戯れていた
「レ、レシア様!?」
ソコに駆け寄る一人の女性の姿
「あ! ムゥちゃん♪」
彼女はレシアの元へと走り抱き寄せる
「痛いよ、ムゥちゃん♪」
「こ、これは失礼を!!」
驚き離れるムゥムゥ
「この様に長い間、お離れする事も無かったものですから……」
そう言った彼女は深く頭を垂れた
いや、5日間だがな……
あ……
6日間になるのか?
「ありがとね、ムゥちゃん♪」
「レシア様……」
そう2人は言葉を交わし、笑顔を見せた
ひとしきり言葉を交わし、笑顔を見せ合う2人に遠くから響く声
「ムゥムゥ様ぁーーーー!!!」
今はもう聞き慣れて来た声
リンリンの様だ
キョロキョロと見回す少女の表情が変わる
「あ、居た! ムゥムゥ様♪ お掃除終わりました! 次は…… あ!! レシア様!?」
ムゥムゥと共に視界に収めたレシアの元に駆け寄り、リンリンは膝を折って伏礼を見せる
ソレの体をレシアは無理矢理立ち上がらせた
「止めてよ、リンちゃん!」
「だ、だけど……」
「私達、友達でしょ!? ノア様が言ってたじゃない! 友達に《様》は要らないって♪ だからレシアで良いよ!」
そう言ってレシアはリンリンに微笑んだ
最初は硬かった表情を笑みに変えるリンリンが口を開く
「うん、レシ……」
直後だ
ゾクリと背中に走る悪寒
僕の何かが緊張に囚われる
なんだ!?
殺気か!?
僕と同じ物を感じたかのようなリンリンの顔
殺意……
彼女は途中まで言い掛けた言葉を再度言い直した
「う、うん! レシアちゃん……♪」
フッと……
殺気が消えた
僕の緊張が和らぐ
リンリンの緊張も和らぐ
何だったのだ……
アノ殺気……
いや、殺意は……
あ!
そんな表情に変えるリンリンが言った
「レシアちゃん! まだお仕事残ってるからまたね!」
「うん♪ またね!」
そう言葉を交わした2人はお互いへと手を振る
「ムゥムゥ様♪ 次は何をすれば良いですか?」
そう言ってムゥムゥに向き直ったリンリン
「次は朝食の準備ですね…… コック長、リンデロイの朝食準備をお手伝いなさい♪」
「わかりました♪」
ムゥムゥとレシアに一礼を向ける少女
そして宮殿内に向きを変えるソレを一度ムゥムゥは遮る
そしてリンリンの顔に、自分の笑顔を近付けた
ん?
僕は耳をこらす
ムゥムゥはリンリンに呟いていた
(レシア様のご意向です…… レシア《ちゃん》までは許します…… 努々忘れてはなりませんよ……)
(は、はい…… しかと心得まして……)
そう言い、彼女は厨房に凄い速さで逃げ去って行った
まぁ、なんにせよクセの多い者、少ない者も含めて宮殿内は賑やかになっていった
7つ目の昼が訪れる日にはレシアが宮殿へと一日戻る
そんな形が定着した頃には、皆が笑顔を見せ、レシアを出迎え……
そしてレシアに群がる
僕が聞いたようなオレンジ・ホームで学んだ事を侍女達が聞き入る
そんな、ただ普通の日々が流れた
ーーーー
ーーー
ーー
ー
そこまでモリサダに話した僕は一度立ち上がった
女神の丘から見下ろす風景
ソレをひとしきり眺める
その時だ!
僕の視界に入るキラリと光るナニか……
そんなバカな……!?
緊張が走る
ナニか……
いや、誰かが……
後ろに居る!!
誰だ!?
コノ僕の背後を取るだと!?
只者じゃ無い……
肩越しに光るナニかを僕に近付ける
視界に捉えろ
目を動かすな
一気に首を薙ぎ切られるかも知れない
何だ……
右肩……
ソコに光る……
ソレは何だ!?
細長いナニか……
ナイフか!?
振り向かずに奴と交渉しなければならない……
目的は何だ!?
この世界が欲しいのか?
僕が倒れれば、この世界の成長は止まる
それでもコノ世界が欲しいのか!?
いや、待て……
こんなに殺気を出さず、手を下せる物なのか!?
そもそも、この世界に僕を消そうとする輩はモウ、居ないはず……
ゆっくりと……
ゆっくりと……
覚悟を決め……
右肩に振り向く
ソコに光る物……
それは……
細長く……
アーモンド型をした……
器!?
グラス!?
コレは……
シャンパングラスか!?




