14話 伝えたい想い
老人を見ながらレイジが声を掛ける
不思議そうな面持ちだった
「ポポン爺ちゃん…… 病気治ったって……? それに奇蹟の女神って何?」
今尚、両手をレシアに向けて擦り合わせる老人がその手を止める
そしてレイジに顔を向けた
「この世界の神であるノア様の力をお継ぎになられたお方じゃ」
その言葉に首を傾げる少年
「じゃあ、レシアは神様なの?」
「いずれは…… そうなるじゃろうて♪」
そう言葉にしたポポンはレシアでは無く、僕を見た
僕はYesともNoとも現段階では言葉には出来無い
そうなれば良いと思っているのは確かだ
でもイレギュラーは考慮しなければならない
だから僕は、その問いには答えず、笑顔で首を少し、斜めに向けた
その答えで充分だったのだろうか
ポポンは膝を地に着けたままの姿で笑顔を見せた
「しかしレシア様…… 如何様にしてお治し下さったのじゃて……?」
そう今度はレシアに顔を向ける
彼女も笑顔を見せた
「要らない物…… 病気だけを取り出して、元のポポンお爺ちゃんの体を持ってきたんだよ♪」
「その様な事が……」
「うん! ノア様がアルトロンを救ってくれた時の事を思い出したの♪」
「あ、アルトロン…… で、ございますか?」
僕はそこまでの会話を遮った
【待て、レシア…… あの力は説明が付くものでは無い】
「あ、そうだね……」
そう悲しそうな表情を浮かべるレシア
僕はその頭を撫でる
そしてレイジを見た
今も何が起きたのか解らない表情を浮かべる少年
【レイジ、恐かったろう……? アレは…… あの魔物は何だったのか僕にも解らない……】
「うん…… あ! いえ、ハイ……」
僕は笑った
【今まで通りの会話で良いさ♪ うん、で良い】
「うん……」
【レシアを…… 子供達皆を助けようとしてくれた事に感謝するよ♪】
「でも…… 当たり前の事だし……」
【良い子だ…… なあ、レイジ?】
「ん?」
【当たり前の事を、当たり前の様に出来る人間は少ない…… 今回の場合は特にだ♪ 自分よりも他人を救う事に向けられる人間は少ないんだ】
「……うん」
【君は大した者だよ♪ 恐怖も持ちながら…… でも…… 正しい事をした…… 僕はね、レイジ……】
そこまで言って、僕は口を閉じた
レイジに言って良いのか……
そう、考えてしまった
でも……
やはり……
伝えたい
そう思う
【僕はね…… 本当は君の噂を聞き、君に会いたいと思ってこの集落に来たんだよ】
「僕に? 何で?」
【それは……】
君が噂通りの子供だったから
そして優しさも兼ね備えた者だったから
レシアの婿に欲しいと……
いや……
【レシアの大切な友達になってくれるかな…… って思ったのさ】
「僕が…… 良いのかな……」
【何故だい? レシアが恐いか?】
大きく何度も首を振るレイジ
そして口を開いては、また口を閉じた
そして考えが纏まったのか、言葉にした
「でも…… レシアは…… レシア様は……神様なんでしょ……? そんな方と…… 良いのかなって……」
本当に聡明な子だ
子供には似付かわしくない礼儀まで持っている
やはり……
お前だよ、レイジ
【君がレシアを大切な友達と思ってくれるなら…… 僕は嬉しいよ♪】
「うん」
【それにな、レイジ……】
「ん?」
【レシアを特別扱いしないでくれ♪ レシアに《様》は要らない…… 友達に《様》は付けないだろ?】
レイジは無言でレシアを見た
そして表情を明るく変える
「うん! そうだね!」
【うん、そうさ♪】
「ねぇ、レシア……」
そう言った彼はレシアに向き直る
レシアはキョトンとした顔をレイジに向けた
「僕と…… 僕達と…… ちゃんと友達になろう!」
「うん♪」
レシアはレイジに笑顔を向ける
そして子供達にも同じ様に笑顔を向けた
誰から発したのか解らない
でも所々で
集落民から自然に……
実に自然に……
拍手が湧いた




