9話 感謝の言葉
僕は機を待った
タイミングだ
僕はいつものように中庭を眺める
目の前ではレシアが、ホンとツァンが戯れる
その光景を見ると、心が揺らぐ
いつまでも見ていたい
いつまでも見ていたいが……
それはレシアの為になら無い
いつかは僕に、ささやかな好意を持つ気持ちも薄れ、誰かを好きになるだろう
だが、祖父として……
くだらぬ輩へ嫁にやるつもりは一欠片も無い……
それが僕の最低限所持するプライドと真理
この子の幸せを願う気持ちがソウさせる
僕が決めた男だ
レイジ……
お前なら……
ある日、僕は問い掛けた
【なぁ、レシア? 友達が欲しくないか?】
彼女は言った
「友達?」
【そうだ、友達さ…… ココで親身になってくれるのは宮殿侍女だろ? それは友達とは違うしな…… それに勉強もしなきゃならない……】
彼女は首を傾げる
「皆が友達とは違う? でも、勉強ならムゥちゃんが教えてくれるよ?」
【それは解っている…… だが、他の人と共に勉学をする事によって、より効率も上がるってモンさ♪ レシアは自分しか知らないからな……】
「自分しか知らないのは、ダメなの?」
【ダメでは無い…… だが人を知る事は、これからの世界を担うレシアには必要になる】
「ふーーーん…… わかった♪ 他の人と勉強してみる!」
そう言って、彼女は笑った
僕も笑った
僕のは……
僕の笑顔は……
少々複雑な想いが滲み出た苦笑いだったと……
今ならソウ、感じる
ふと、いつもの様に宮殿内を歩いていた
そしてまたいつもの様に中庭へと足を運ぶ
そこではレシアが、これまたいつもの様に花と、2匹の龍と戯れる
だが、いつもとは違う
一人の女性
そして一人の男性がレシアの傍らに腰を下ろして居た
僕は、どちらも見知ったその者らに声を掛けた
【なんだ? アースにムーンか? 地球はどうした?】
その問い掛けに振り向いた2人
「シャド…… いえ、ノア様♪ ご無沙汰しております」
【シャドウでもノアでも呼びやすい方でいいぞ、アース♪ お前はむしろシャドウの方が言い慣れてるだろう? まあいい…… とりあえず元気そうで何よりだ♪ 今日はどうした? ムーンまでココに来るとは?】
僕はムーンに目を向ける
「いや、娘の顔が見たくなったんですよ♪」
【やれやれ…… それで僕への挨拶も無しにレシアの元へか?】
「あはは…… すみません……」
【いや、いいさ♪ 久しぶりに会えたんだ、堪能していけよ】
「ありがとうございます♪」
「ありがとうございます♪」
僕は踵を返した
その背にアースが声を掛ける
「ノア様……」
僕は顔だけ振り向きアースを見た
悲しそうに少し歪んだ表情を見せるアース
隣に立つムーンもまた、同じ表情をしていた
【…… そうか…… こっちへ来いよ】
僕は正面に顔を戻す
そして歩き始めた
背後にタタタと走り寄り、その後、僕に歩調を合わせる2人
僕達3人は、とある一室に足を踏み入れた
部屋の中央に位置する丸いテーブル
ソレをを囲み、椅子に腰掛ける
【ふう…… で、何か問題でも有ったのか?】
2人を交互に見た僕の目に、やはり歪んだ表情をまた見せる彼等
「話が早くて助かります、ノア様…… 実は地球で困った事に……」
【どうした、アース…… 困った事とは?】
「はい…… 地球が出来てから既に何億と時が経ちます……」
【ああ、そうだな? だから何だと?】
「はい、今まで生まれ、死んでいった者達…… その魂が彷徨っては生き人に害を……」
【なるほどな……】
「はい…… もはや生き人の方が死者の魂の数パーセント…… 遙かに少なく…… 心の強い者以外は墜ちて行く始末なのです」
僕は部屋の天井へと視線を向ける
そして目を閉じた
何が最善か考えを巡らす
一時の後、僕は話し始めた
【解った…… ふむ…… ではこうしよう】
「こう、ですか?」
そう聞き返すアースは疑問の表情を浮かべた
【ああ…… 死者の魂はこの世界、カタストロフィに誘導する…… 他の星々もいずれ同じ様になるだろう…… 試験的な感じではあるが、死者の為の門を僕が創る】
「はい……」
【そしてこの世界で御祓をし、罪の垢を流す…… そしてまた星々に返そう…… 無垢にして、な♪】
「その様な事が簡単に出来るのでしょうか……」
【出来るか、出来無いかじゃ無い…… するんだよ、僕がな♪ この世界を創ったのは僕だぞ?】
アースとムーンは顔を見合わせた
そして僕に向けた表情は笑顔だった
「ありがとうございます、よろしくお願いします♪」
「ありがとうございます、よろしくお願いします♪」
2人はそう言った
ホッとしたのだろう
不安に対して、多分で返すのは不安を煽る
だから僕は決定した事を伝えた
不安を解消すると断言した
ソレも、コレも……
僕がレシアに会えたから
レシアに優しさを与え、そして僕に優しさをくれたから
ありがとうございます、か……
むしろソレは……
僕の言葉だ




