プロローグ 神の呟き
黒い、闇より黒い鎧
頭には同じ闇色の兜
背にはマント
僕の名はノア
この世界を創った神だ
そんな僕が歩いていた
スタスタと……
ジャリジャリと……
足元から鳴る音色
砂利が敷かれた坂を登り、森に入る
空を遮る木の葉
木々から覗く光が心地良い
僕の上部を埋め尽くす緑が清々しさを感じさせる
見上げた木には、何かの実が成っていた
いずれこの実も育ち、またこの世に住む人々を潤すだろう
これが世界だ
僕の求めていた世界……
ただ、ひたすらに歩みを進めると周囲の光量が増す
僕は森を抜けた
そこには下界を全て見渡せる程の高い丘
また少し歩くと、柵も無い断崖絶壁
後には、抜けてきた森
右には大きな岩
左や正面には美しく広大な平野が視界を埋め尽くす
田畑も見える
人が居るようだが、姿など米粒にしか見えない
そしてその平野を2分するのは大河
名は、カタストロフィ
現世と黄泉との完全な狭間
何とも美麗な光景だ
【やはりココの景色は最高だな…… この《女神の丘》ほど美しくこの世界を見渡せる場所は無い……】
そう誰に言うとも無く、僕は言葉にした
何度か顔だけでは無く、体ごとを各方面に向け、黒いマントをなびかせ世界を眺める
僕は少し、この世界の壮麗さに酔いしれていた
不意に僕は呟く
【なぁ…… 話したくなった事があるんだ】
僕はソノ世界を見ながらそう言った
【ああ…… 聞いてくれるだけで良い…… なんてゆーかさ…… ただ、話したくなったダケだ】
空を見た
蒼天が僕を見下ろす
雲一つ無い空
風も無い
ただ、青々とした姿を見せている
【黙って聞いてくれよ…… なんかさ、色々あったなぁ…… そして、全て終わったな…… 大きな仕事は全て…… 気が抜けたよ、ようやくさ…… だから…… うん…… 独り言なんだ、コレは……】
空に
平野に
大河に魅せられる
その丘に僕は腰を下ろした
【聞いてくれるか? 僕の話を……】
僕は笑う
【そんな顔するなよ…… ただ、そこに居るだけで良い…… 独り言なんだからさ】
また、僕は笑った
【ありがとな…… モリサダ……】