第二話『赤い少年』
『では、レッドさんデバイスの調整は全て完了しましたよ』
『ありがとうございますラビリアさん』
笑顔で私の整備したデバイスを受け取るレッドさん
戦闘で出撃の際
装備するのは、私の開発したデバイスです
データと化した世界で
最も優れたと思うのは・・・やはり転送の技術でしょうか
大型の兵器もありますが
基本的に機動力重視で、装備者が身軽に行動可能な最小限のものだったりします
戦う相手である氷機も様々な形状をしており
過去の事例でほぼ100%機械兵器を模していました
基地も含めてですが、どうやら人類の叡智を吸収したようで
昔に存在していたものが登場しています
更に能力も比較的忠実に再現されており
属性というギミック以外は、見た目と性能が同じと思って下さい
だから、当初は物理兵器扱いされていました
『ラビリアさんは、基地の情報は必要だと思いますか??』
『・・・私個人の意見ですか、でしたら不要だと思いますよ』
『そうなんですか・・・意外な意見です』
基本的に科学者である私・・・と言いますか
好奇心の塊みたいな感じでしたから
レッドさんには、今の発言は不思議だったかもしれませんね
『基地の情報もあってもいいと思いますが、未知の兵器として召喚された氷機の情報が重要じゃないかと』
『データベースで照合できないと戦いにくいからですか??』
『それもありますが・・・私自身が興味あるからです』
『そうですか、安心しましたよ・・・♪』
急にニコニコしだすレッドさん
私、変な事言いましたか??
『何で笑うんですか!!』
『あ、すいません・・・いつも通りのラビリアさんだと思って』
『何ですかそれは・・・』
『未知の兵器に興味あるのでしたら、今度データを提供しましょうか??』
『え!?』
『あなたもある程度は把握しているのでしょう・・・僕の正体について』
あなた!?
さん同士で呼び合うのもですか
私をあなたで呼ぶレッドさん、別人のようでした
『・・・と、すいませんラビリアさん・・・まだ、混乱してしまうと思うのでこれ以上は忘れて下さい』
『ん!?』
不意にキスされてしまいました
夫婦なので別に構いませんが・・・
って、あれ直前の記憶が無い!!
ああ~またレッドさんにしてやられてしまいました
『いつも核心になると・・・自分から失態をしたんじゃないの~!!』
『すいません、でも・・・まだ、今のままで居たいから』
悲しそうな表情で私を見ている
あの別人のようなレッドさんは、何を意味しているの??
二重人格ということでもなさそうだし
『そろそろ、完全な偽装は難しくなっていますね・・・僕も注意しなくては』
心を見透かされたのかしら
あまり顔には出ない感じだから
でもレッドさんには筒抜けみたいなんです
『もう少ししたら、本当の事を話しますから・・・絶対にです!!』
またキスされました
本当に14歳なんでしょうか・・・と疑問に思うのですが
母親の入れ知恵なんですよね
幼い頃より似たような感じでしたから
どんな男に育てたかったのか
直接聞いてみたい気もするわね
『レッドさんが言うなら、信じます』
『ラビリアさんは、僕の大事な存在ですから・・・』
思わず抱きしめてしまいました
こんなにも愛おしい相手は他にいませんから
だからではありませんが、特にレッドさんの装備は慎重に整備しています
独立したシステムを有するから
それに私のシステムとのリンクが常に一定の繋がりを持っているように調整もしなくてはいけないし
細かい部分での不具合も修正されにくいところもあって
『夫婦でラブシーンは構わないが、まずは氷機を倒してからにしてもらおうか!!』
二人だけの時間に割り込むように
抱き合う私とレッドさんの横へ
急にラインさんが現れて
『急にだと・・・少し前から居たんだが、レッドは気付いていたみたいだったぞ』
『はい、黙っていてすいませんラビリアさん』
どうせレッドさんは、ラインさんに内緒にするように指図されただろうから
別に悪いとは思いません
基本的に、母親大好きな若干マザコンな気質があったりするくらい
父親の居ない環境で私を含めた二十二部隊を家族同然で担ってくれた存在ですから
私もラインさんは嫌いではありませんよ
でもね・・・あまりにサプライズ的な行為を繰り返すから
反射的な感じで、つい怒鳴ってしまうのです
『またですか!!』
『何だラビリア、逆ギレするつもりか・・・私は基本的な事を言っているのだぞ』
開き直られると、こちらもどうしようもありません
出撃前に旦那とイチャイチャしていた妻ですから
隊長が注意するのは、当然だと思います
『そうですよね、私が悪いんです・・・私が、うっうう・・・』
『お、おい・・・別にダメとかではないんだぞ、夫婦ならどこでもという訳ではって事で・・・』
急に私が泣き出したから
慌てていますねラインさん
それにしても、母親大好きなレッドさんの仕業だとは思わないでしょうね
このタイミングで私のお尻を抓るなんて
どんだけ旦那ですか・・・
親子揃ってサプライズ好きなんですから~♪
『ご、ごめんなさい・・・怒られたのとサプライズとで動転してしまって』
『すまなかったな・・・私もこんなになるとは思わなかったから』
本気で心配されてしまっている
あまり流すと後で色々と大変そうだから
そろそろ、転換させましょう
『流石にお母さんでもラビリアさんを泣かせるなんて・・・僕、嫌いになってしまいますよ』
って、もういいから
それ以上の煽りは、今後に影響するから
『レッドさん、もういいのよ・・・ラインさんも反省していますから、それにお互い様だと思うの』
『・・・そうですか、ラビリアさんが言うなら仕方ないですね』
・・・レッドさん、どこまで本気かわからないから
今度しっかりとしたガイドラインを設けておきましょう
怖すぎですって・・・嫁姑問題とか絶対に嫌ですからね
それでなくても微妙な関係なのですから・・・
『取り乱してすまなかった、レッドもラビリアも私の大事な家族だから・・・変な行為を控える事にする』
ある意味、ラインさんが控えてくれる流れになった感じですね
ここまでレッドさんの思惑なんでしょうか・・・
私も注意しなくてはならないかもしれません、特にレッドさんを
『出撃の準備は完了しています、後は隊長判断でお願いします』
『了解した、司令室に戻し次第合図するからな』
『わかりました・・・』
私の手を取り
ラインさんが空間転移を行う
人類の進化の極みとも言える存在だろうか
“女神”と呼ばれ
まさしく神の技量で氷機を殲滅している
活動制限さえ無ければ
ラインさんだけで全てを終わらせる事も可能だろう
世界の維持に費やす分
ラインさんは、極端な制限があって
現段階で週間で数回程度しか出撃できません
温存される意味合いでもありますが
極端に強力な相手ではない限り
基本的にラインさんが出撃する事はありません
二十二部隊で言えば
主力はレッドさんです
同等以下で六花さんとトールさんですかね
私とエリアさんは戦闘タイプではないから、回数的には少ないですが
大多数の氷機相手にする際は
出撃したりします
他の部隊は、実際に連合的な遭遇をほぼしていませんので
把握しかねますが
今回のような場合であっても
基本的に二十二部隊は単独での出撃となります
個体が異常な強さだというのもありますが
連戦に際しの温存というのが最もな理由でしょうか
過去の事例からですが、基地の殲滅を行うと
高い確率で増援が侵攻してきて
長期戦を狙ってくる作戦を仕掛けてきます
時短狙いで複数出撃でもいいのですが
単独でもそれ程時間は要しません
『さて、作戦開始といきますか・・・』
『隊長、よろしくお願いします』
『六花とトールも連戦に備えて待機だ』
『六花さん、トールさん・・・お願いします』
別室で準備中の二人に語りかける
司令室からは、全ての施設内の箇所へ通信が可能で
任意に指定した場所にダイレクトに通信する
これも私のシステムを介しての操作ですから
よりスムーズに行えるようになっています
『ラビリア殿、こちらは準備できています』
『こちらもいつでも可能ですわ、ラビリアさん』
六花さんもトールさんも相変わらず準備が早いですね
専属の??
う~ん、ある意味と言っておきましょうか
エリアさんが二人のサポートをしてくれています
ラインさんと幼馴染で
大きな胸は、ラインさんの上を・・・世界最高峰だと自慢していましたが
冗談抜きでそうかもしれませんね
ジオクロニクルという女神を記した記録史でも上から二番目のサイズだとラインさんが
悔しそうにしていましたから
(ちなみにラインさんは四番目だそうです)
エリアさんよりも凄い方がどこかの世界で存在していると考えると
一度遭遇してみたい気もしますね
『エリア、手早い準備に感謝するが・・・登山は終わってからにしろよ!!』
『・・・隊長殿、助かりました~♪』
『わたくしは、別に構わなかったのですが・・・六花さん』
『トールは六花に対しての行為を禁止するぞ』
『ううう、ライン隊長のいぢわる~!!』
これからレッドさんが出撃するのに~!!
何ですか、このイチャイチャムードは・・・
と、他人に言えた義理ではありませんが
もう少し緊張を持って・・・無理ですかね
ほぼ単独で終わる戦闘ですから
出撃するのがレッドさんですと、特にですね
彼だけは連戦しても、ほぼ劣化しない戦いを可能としていますから
独自に搭載されるシステムが無尽蔵な稼働を可能としているようです
ラインさんが世界を維持する分を皆無にした感じらしいですね
女神という存在は、どこまで凄いのですか??
なんて、無粋な質問を前にラインさんにしてしまったことがあって
凄く丁寧に説明してくれたのですが・・・
逆に申し訳なくなって、途中で中断するようにお願いしたから
その時の事は、あまり覚えていなくて
どうして中断させてしまったのか
何で無粋だと思ったのか
詳しく理解したかった女神のシステムを拒絶した形でした
現行の私たち人類の最終進化系が女神となるのですが
あまりにも無謀な存在に思えてしまって
それでですかね・・・
科学の極みを超えた状態で
非現実的な世界を生きる今
不可能だった事は可能になっている
逆に可能だった事が不可能になっている
反転したみたいに世界が新たな形をしている
『レッドすまん、手間取らせたな・・・出撃していいぞ』
『はい、いつも通りです・・・みんな変わっていませんね』
一番年下の発言ですよ
私は、こんなにも素敵な相手と結婚したのね
年齢という概念が、記号のようになっているとは言え
最年少の存在に上からで言われる私たちって・・・
なんて、思わせる勇敢な赤い少年だったりします
『では、行ってきます』
『おぅ、気をつけてなレッド』
作戦コード:000101号
出撃:レッド=ルビー単独
目的:基地および氷機の殲滅
モード:通常
ゲート:反応なし
と、特にイレギュラーな情報はないみたいね
ちなみにですが
モードとゲートに異常がある際はラインさんが出るかを判定するのです
部隊通信:通常モードから戦闘モードに移行します
ライン:「未知の基地タイプだったが、通常のようだぞレッド」
レッド:「はい、わかりました」
ラビリア:「一応、フィーバーモードの準備をしてあります」
レッド:「ありがとうございます、多分不要だと思います」
六花:「レッド殿、左側が比較的手薄かと思われます」
レッド:「はい、そのようですね・・・そちらから攻めてみます」
トール:「レッド様、頑張って下さい~♥」
エリア:「トールちゃん、無駄な通信入れないのよ~!!」
レッド:「エリアさん、いいですよ・・・トールさん、頑張ってきますよ」
同時に近い感覚で一斉にチャットするように文字情報がログとして残ります
交戦中で音声を聞き取れない場合でも
ちゃんとした、意味合いで相手の意図するように伝達されるから
多少のラグが生じても、対応可能だったりします
でも、レッドさんは確実に対応してくれるから
トールさんのような雑談気味な応援とかでも、気軽に発言してくるのだと思います
余裕があるのには
レッドさんのシステムの演算能力にあると思います
戦闘で行動をする際
全てではありませんが、基本的にシステムがサポートしてくれます
システムの稼働は任意で行われます
設定して、ある程度は自動にもできますが
スキルキャンセルを行う場合は、全ての行動を手動で操作する事になってしまいます
撃破速度を向上させるために熟練した戦士は
オートキャンセルではなくて
マニュアルキャンセルで次のスキルに繋げて
無駄な接続時間をコンマ単位で削っていくのです
0と1の羅列される無数に配列を手動で演算しなくてはならないために
ある程度の演算速度を有するシステムでなければ
逆に遅くなってしまいます
私のシステムは自由幅を設けていますから
演算能力にあまり差の出ないようにより円滑な行動が可能となっています
しかし、あくまでも私の基準をラインさんの監修で向上させた形
レッドさんは女神であるラインさんの能力をも凌駕していました
独自のシステムで世界を動かせるだけの演算能力を保有する
私は、凝縮した世界がレッドさんの中で蠢いていると仮定しています
そんなシステムを簡単に動かすレッドさんが凄すぎるだけなのですが
そこに合わせるだけの調整で精一杯で
私のシステムと同時に自分のシステムを稼働させて
圧倒的な速度で攻撃を連続で行えるようです
しかもです・・・
その最中は自我が別に稼働できていて
通常の会話程度なら、一切問題なく戦闘を行えるのです
レッド:「それでは、作戦を遂行してきますね」
ライン:「行ってこい」
ラビリア:「お願いします」
レッド:「ラビリアさんのために頑張ってきますね」
ライン:「ふふふ・・・」
エリア:「相変わらずね~レッドちゃん」
六花:「ラビリア殿が羨ましいです・・・いえ、独り言です」
トール:「六花さんには、わたくしが居りますわ・・・」
レッド:「基地内の氷機がいません??」
ライン:「どうした・・・ラビリア、わかるか??」
ラビリア:「・・・反応はあるのですが、実体が存在していないみたいです」
六花:「もしかしたら・・・」
トール:「ライン隊長、わたくしの出撃をお願いしますわ??」
ライン:「ん・・・どうする、ラビリア」
ラビリア:「レッドさん、意図わかりますか??」
レッド:「トールさんの同行を僕からもお願いします」
ラビリア:「わかりました、隊長許可を出して下さい」
ライン:「レッドがしたいなら、構わないか・・・トールいいぞ出ても」
トール:「行ってまいりますわ~」
トールさんは空間転移を用いて基地内へ移動していきました
彼女もラインさんと同等に女神だったりします
制限下で戦闘力を出せないみたいですね
ラインさんを凌駕できるだけの数値は出せるらしいです
そして、彼女のシステムも独自の稼働です
レッドさんの保有するものと類似しているますから
何かしらの関係はあるのでしょう
詳しい話は聞いていませんのでわかりませんが
トール:「わたくしも連戦可能ですわ・・・ですが、この相手では難しかもしれません」
レッド:「ラビリアさんにだけ情報共有します」
強制介入
レッドデーモン:システムジャック開始
レッドデーモン:アクセス失礼します
レッドデーモン:リンク完了
レッド:(今のラインには内緒にしたかったから、すまんなラビリア)
ラビリア:(レッドさんじゃないですね、ラインさん??)
レッド:(詳しくは詮索しないてくれ、レッドも言ってたろ・・・ちゃんと話すって)
ラビリア:(わかりました、パラドックス的な意味合いですか)
レッド:(少し違うが、似たようなものだ)
ラビリア:(そうですか、それで私だけにある話とは??)
レッド:(トールから敵の情報を提供してもらったが・・・凄く厄介な展開となりそうでな)
ラビリア:(どこまで話せるのですか??)
レッド:(思ったよりも早い段階で世界解放を要する必要が出てしまって)
ラビリア:(ラインさんを自由にする必要があるってことですよね??)
レッド:(そうなるか、私も・・・レッド自身も覚醒させることになる)
ラビリア:(無理に隠す必要はないですよ、ラインさん)
レッド:(あくまでもこの姿ではレッドなんだぞ)
ラビリア:(面倒な設定ですね“レッドさん”)
レッド:(本当に詳しい話は、レッド自身から直接聞いてくれ)
ラビリア:(わかりました、本人もそれを望むと思いますから)
レッド:(トールがしばらくの間、あまり使い物にならなくなってしまうけど、ちゃんと面倒見てやってくれ・・・いいか??)
ラビリア:(トールさんですか・・・それは構わないですが)
レッド:(では、停止した時間を戻す・・・後はラビリアとレッドに託すぞ)
強制介入解除
瞬間的な意識の隙間にレッドの中の別の事象と思われるラインさんの情報が開示されていた
ある程度の予測はできていましたが
レッドさんとラインさんが同体のような存在と考えればいいのでしょうか
あくまでも同次元では、別の存在であるみたいですね
複雑すぎて、理解できるまでに時間がかかりそうです
トール:「ラビリアさん、わたくしを頼みましたわ~また未来でお待ちしております」
ラビリア:「ええ、待ってて下さい」
ライン:「どうした二人共・・・!?」
レッド:「お母さんは、まだです!!」
一時的に隣のラインさんが気を失っている
レッドさんが意図的に操作したのね
ここではレッドさんが主体でラインさんとリンクしているみたいです
これも含めて詳しい話を聞かないといけませんね
旦那とその母親ですし
家族内となった今、私だけ知らないのは
納得がいきませんから
トール:「システムオーバードライブ」
レッド:「すいません、一旦システムを遮断しますね」
レッドさんとトールさんの反応が私のシステムから消える
基地内の反応はそのままみたいだから
別にどこかに行ったとかはないみたい
『ラビリア殿~!! 一体、何があったのですか・・・って隊長殿!?』
完全に混乱しているわね
六花が、慌てて司令室に飛び込んでくる
そして、倒れているラインさんを見るなり・・・
『隊長殿~!! しっかりして下さい』
『六花さん、一時的に気を失っているだけですから・・・心配無用ですよ』
普段は部隊でも特に冷静な方なんですが
どうも乱れる瞬間があって
今みたいな感じで、突発的な事態に対しての対応がね
なんて言いますか、極端なんです
『仕方ありませんわね~ラビリアさん、出撃できる準備だけはしてて下さいな』
そう言うと、六花を後ろから手刀で葬った
ラインさんの上に乗るように倒れてしまう
『すいませんエリアさん・・・助かりました』
『急に六花ちゃん出て行くから、覚悟してましたの』
エリアさんは、メンタル面でも六花さんとトールさんを支えていましたから
色々なシーンで救われる事が多くて
過度なスキンシップ以外は、感謝できる存在なんですよ
『ある程度はトールちゃんから聞き出しましたわ・・・で、レッドちゃんからは何て??』
『トールさんがしばらく使えないから頼むと言われました』
『エリアさんでは不足なんですのね・・・(ノД`)シクシク』
『流石に無理ありますよ・・・エリアさん、立派な女性なんですから』
『いいじゃないですか、トールちゃんの一大事なんですよ・・・少しくらい乱れても』
気丈にしているのは、わかりますが
と、これ以上は察して何も言いませんでした
『今はギリギリですわ、実際のトールちゃんを見たら普通でいられる自信がありませんの』
『それで、私に託したのかもしれませんね・・・エリアさんに負担かけたくなかったのでは??』
『・・・そうですわね、そういうことにしておきます』
私もエリアさんの悲しむ姿なんて見たくないですし
それ以上に部隊がまともに稼働できるか心配です
レッドさんに頼ってもいいのかしら・・・
氷機の基地では、どうやらトールさんが能力を解放して
一気に殲滅をするようです
そこまでしなくては倒せない相手だったのですかね
反応だけではわからない、別の何かが作用していたのでしょうか
レッド:「通信回復させました・・・聞こえていますか??」
ラビリア:「はい、レッドさん聞こえていますよ」
少しして、レッドさんからの通信がきました
どうやら基地の殲滅は完了したようです
レッド:「今のところゲートに反応はありませんか」
ラビリア:「反応はありません、二人共無事なのでしょうか??」
レッド:「トールさんは、しばらく目を覚まさないと思われますが・・・死んでいるわけではありません」
ラビリア:「一旦戻れますか??」
レッド:「いいですよ、話すこともありますから・・・戻りますね」
通信が終わると同時くらいでレッドさんが戻ってくる
空間転移は使えませんが、移動速度は異常に早いから
『エリアさん、目覚めるまで傍に居てくれますか??』
『トールちゃん・・・レッドちゃんありがとう』
やはり、泣いていました
お礼を言ったわけは、トールさんの衣服でしょうかね
一切乱れていない状態で
柔肌にも傷一つありません
レッドさんが防衛スキルでかばったみたいです
エリアさんがトールさんを抱き上げ自室に帰っていった
『妻に見せつけるわね・・・一応、浮気扱いにはしませんけど』
『・・・ラビリアさん、これで浮気にさえたら僕は戦えませんって』
だろうね・・・
わかっていますよ、少しだけ嫉妬したので
その意図だけでも伝わればいいです
『どのくらいの猶予があるのですか??』
『反応からすると、20分くらいですかね』
微妙な間隔ですね
でも、少しでもあるならできる限りの情報を聞いておきましょう
『可能な限りでいいわ、情報をお願いしますレッドさん』
『時間が微妙ですから、今回の敵に関してですかね・・・それ以外は、終わった後で話します』
そう言って、レッドさんは私に丁寧に話をしてくれました
敵の情報を話すために
起こっている事態について、必要な部分だけを聞きました
この情報は、戦闘後に詳しくします
流れで把握した方が理解しやすいと私も思いますから
『次は、直接的に侵攻してくると思いますから・・・僕が一気に殲滅に出ます』
『レッドさんの思うようにして下さい、ラインさんを制してまでですから』
妻として信じるのみです
どんな形でもついて行くからねレッドさん
『トールさんのようには、なりませんよ・・・ラビリアさんを介してこちらに残るつもりですから』
『どういう事ですか??』
凄く怖い事を軽く言いましたよね、レッドさんは・・・
トールさんは自らを犠牲にした事になりますよ
それに私を介して残るとは??
『やはり情報が乏しいですね・・・私にも女神の叡智を閲覧できる権限が欲しいです』
『候補なので権限はあると思いますが、一時的に不可状態となっているようですね』
候補??
レッドさんから発せられる言葉は、不明な部分が多すぎて
私は戸惑いのみですが
今は、あまり時間がありませんから
『簡潔に、勝利を優先します・・・私はどうすればいいですかレッドさん??』
指揮は、臨時で副隊長へ譲渡されている
レッドさんが今は二十二部隊のリーダー代行です
純粋に部隊は、勝ちにこだわった采配を
これはラインさんの基本理念だったりします
でも、優しすぎるラインさんには
常に徹する事はできません
だからでしょうか、あらゆる女神のスキルを奪取できるようになったのは
優しさで世界を導く存在へと進化していったみたいです
『僕のアンカーとなって下さい、それだけでいいです・・・少しだけ無茶をしてしまいますが、確実に世界は防衛できると思いますから』
『アンカーですか、トールさんの二の舞を防ぐためですか??』
『あれは、防ぐ事はできませんよ自爆に近い行為ですから・・・でも僕は自爆ではありませんよ』
『精神世界の話ですか??』
『理解しているのでしたら、説明はいりませんかね』
レッドさんが保有するシックスカラーシステム
“頂点を司る赤い悪魔”
強力な破壊を齎す終末の存在らしいです
精神に巣喰い、強靭な心をも蝕む
そんな脅威を押さえつけるレッドさんの宝石は最強なんでしょうね
その制御を攻撃に傾けなくてはならないから
その間を私に頼ってくれるみたいです
『ラビリアさんのシステムが世界管理を主体としている事が、幸いです』
『私ではなくて、この世界そのもので固定させるのですね・・・少しだけ悲しくなりました』
とは、言いましたが
強い繋がりを持つ私でなくては、まず固定自体は無理ですから
利用対象が世界だとしても
その直接的な媒介は・・・私なんですよ
『折角のラビリアさんと記憶を犠牲にはしたくありません・・・絶対に残ります!!』
『そうですね、私もレッドさんと心で離れるのは考えたくありません』
単純に記憶喪失状態となるのでしょう
それ以外は、特に支障はないみたいな感じですかね
周囲が一番ダメージがあるのです
『・・・確率半分くらいかもしれません、ライン・・・お母さんを頼みますね』
『え!? レッドさん・・・』
数日の間、ラインさんが寄り添って私を慰めるのでしょう
トールさんといい、レッドさんといい
残された存在の事をもう少し考えて欲しいものです・・・