春の夜の雨
なんだかわけもなく かなしく
なんだかわけもなく さみしく
なんだかわけもなく いらだち
なんだかわけもなく むなしい
ぼくの身体の中に住む いつも元気なこびとたち
きょうは全員 どこかへおでかけ
ぼくは ひとりで おるすばん
外の雨も止む気配がないまま もう日が暮れる
こっそり隠れ場所に逃げこんで
蝋燭に火を灯し
静かに 見つめていましょう
なんだか わけのわからないものを
春の夜の雨は 良い匂い
土に染みこむように
ぼくにも染みこむ
泳げるほどの雨
酸のように ぼくの輪郭を溶かし
ぼくはぼくの 内側に入ってゆける
ああ 僕と世界との間に
雨が降るよ