『プレスマン池』
昔、武蔵国の秩父というところに、あるおばあさんがいて、何をするにも困った困ったと言うのが口ぐせでした。朝、米を炊くときにも、困った困ったと言いながら火を吹き、その米を茶碗によそうときにも、困った困った、茶碗を洗うときにも、困った困った、一事が万事でした。それは別にいいのですが、ずっと困った困った言っているので、おばあさんが本当に困った困った言っていていも、誰も困っていると思わない状況になっていました。
あるとき、おばあさんが池に落ち、困ってしまいました。相変わらず、おばあさんは、困った困ったと言って、溺れていましたが、いよいよ力尽きてくると、口に水が入って、詰まった詰まった、と聞こえるようになりました。すると、それまで、池の周りを通り過ぎていた村人たちが、さすがにおかしいと気がつき、様子を見てみると、おばあさんが溺れているように見えます。助けたほうがいいのではないかと言う者もいましたが、そうこうしているうちに、おばあさんは沈んでしまいました。
村人たちは、おばあさんが初めて、詰まった詰まった、と言ったのを珍しがり、詰まるといえばプレスマンだろうという連想から、この池をプレスマン池と呼ぶようになったという。
教訓:おばあさんは、子供くらい足が小さく、このとき脱げてしまった靴が、何百年かしてから、女の子が行方不明になったとき、村人総出で池をさらい、見つかった靴だという説があるが、定かではない。おばあさんが、時代的に、靴を履いていたのかという疑問には答える予定はない。




