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気が付くと、ルーナは自室のベッドに横たわっていた。予想通り、入学式の朝へ巻き戻されたのである。
また同じ朝に戻っていることを確認して、ルーナはまず、三つの仮説を立てた。
ひとつめ、アンナも記憶を持ったまま繰り返していること。ルーナにも記憶があると気が付いたかは定かではないが、夜会での態度を見るに間違いなさそうだ。
ふたつめ、巻き戻しには道具が使われていること。知るかぎりでは太陽の加護に時間を操る力はない。協力者の線も考えられるが…これはいい、一旦はこの仮説を確かめたい。
みっつめ、あれは本当のアンナではない可能性。一回目の世界も事実であれば、以降のアンナの態度はあまりにも違い過ぎている。巻き戻しを行っているのがアンナ自身というひとつめの仮説が確定したら、この仮説も真実味を帯びてくる。
動機は定かではないが、アンナが巻き戻しを行った張本人と考えた方が納得がいくことが多い。
(必ず、この地獄の繰り返しから抜け出し、わたくしを貶めた者たちに復讐する)
金色の瞳は今までとは違う冷たさを宿していた。
「……さて、まずはとことん油断していただかないとね」
何度も経験した入学式が終わり、ルーナは話しかけてくる同級生を避けて渡り廊下へと出る。わかりやすく後をつけてくる気配を無視して、別館へ用事があるかのように歩き続けていると、後ろからあの耳障りな声に呼び止められた。
「おい!!」
ルーナはその声にびっくりしたふりをして小さな悲鳴とともに振り返る。
「きゃっ…アンナさん、だったかしら…何か御用?」
そこには仁王立ちして鼻息をあらげたアンナが立っていた。姿は同じでも中身が伴わないそれをアンナと呼ぶことに少し抵抗があったが、正体不明のうちは仕方がない。
「そういう演技うざいから!どーせアンタも記憶あるんでしょ!?だから夜会であんな質問したんだろーが!?!?」
「いきなり何を…」
「とぼけんなよブス!テメーが散々邪魔するからレイファス様までたどり着けなくてずーっとやり直ししてんだよ!!ここは私のための世界なんだから自重しろッッ!!分かった!?!?アルバートもユリウスもジョシュアもみんな私の味方だから!!おとなしく魔術塔に引っ込んでろ!!」
言うだけ言って、踵を返すと足音を立てながら消えていく。ルーナは内心でその姿を馬鹿にしながら今のところ順調だと笑う。
それにしても見事に男のことしか考えていないようだ。巻き戻しの動機を知りたいと思っていたが、男遊びのためだったらと思うと余計にあれはアンナではないという考えが強くなる。
そしてもうひとつ、気になることがあった。
「レイファスって誰かしら」
学園にも存在しない名前だったがあの女の男遊びには興味がない、あまり気に留めなくていいだろう。
しかし、こうも簡単に罠にかかるとは、頭の悪さに感心する。わざわざ向こうから出向いて自分も記憶をもったまま繰り返していると自白してくれたんだから。
入学早々、公爵令嬢のルーナが護衛を払って一人で歩きまわるなど今までの巻き戻しではありえない事だった。この異変に気が付かないなど、相当頭に血が上って思考力は逆に低下しているようだ。
「うふふ、はは!嫌だわ、人がいないからってはしたない」
思わず笑みがこぼれて、抑えるように独り言をつぶやいた。




