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 三度目の入学式から、すべてが狂いだした。



「君がアンナ嬢の物を盗んだり捨てたりしていると報告が出てる」


「え?」


「とぼける気か。下位貴族たちを中心に証言が上がっているんだ」


 アルバートから呼び出されて生徒会室に来てみれば、突然身に覚えのないことで問いただされた。

ルーナは指先から体が冷え切っていくのを感じていた。

 最近、周囲の目が冷たいし避けられていると思っていたが。まさか、こんなことになっているとは。もちろん、心当たりはなかった。むしろ物がなくなったり隠されて困っていたのはルーナの方だった。



「アンナさんとは何の関わりもないわ、きっと何かの間違いよ」


 アンナから敵意を向けられて以来、ルーナは関わらないように避けて行動していた。そもそも、自分が入学から卒業までを繰り返している状況に精いっぱいで、アンナを気にする余裕もなかった。

 しかし、どれだけ訴えてもアルバートの態度は変わらない。これまで体験したことがない出来事に、どうすればいいのか分からなかった。


「ねえユリウス。最近のアルバートはずっとアンナさんと過ごしているの?」


 ある時、ルーナはアルバートの側近であり、共通の友人のユリウスに相談を持ち掛けた。

 ユリウスは王国騎士団団長であるルーナの父・レオナルドの愛弟子で、次期国王の側近…つまりアルバートの護衛として一目置かれている。ルーナとも幼少から交流があり、仲の良い友人だった。


「はじめは付きまとわれて迷惑そうだったけど、最近は一緒にいるみたいだね。アルは面倒見が良いし、太陽の少女を庇護するよう王命もあるから」


「…そう、アルはわたしのこと、何か言っていなかったかしら?」


「別に、アンナに対してちょっときついんじゃないかってことくらい。俺も令嬢方から噂は聞いてるけど」


「そんな…ユリウスもわたしが犯人だって思うの?」


「そうじゃないよ。でも、もう少し身の回りには気を付けるべきだろうね」



 そう言ってそっぽを向かれてしまった。その視線の先、つられて中庭に目をやる。

 幼い頃、ユリウスとともに野原をかけたり木登りをしたことを思い出し、今の自分が惨めに思えた。最後には「用事があるから」と冷たく教室を出て行ってしまった。一人残されたルーナは、涙をこらえることしかできなかった。


 二人目の友人、ジョシュアはもっと冷たかった。

 ジョシュアは王族の血を引く魔導士一家の長男で、宮廷魔導士長を父に持つ優秀な少年だ。

 ルーナは月の少女として王命を受け魔導士たちと各地の浄化に出向くことが多かったため、修行として共に来ていたジョシュアとも仲良くしていた。

 幼い頃から気心の知れた仲だったが、相談があると言っても「忙しいから」と時間を作ることすら断られた。手紙を出しても、返事がくることはなかった。



 ルーナは完全に孤立した。

 それでも「こんなこと卒業すれば終わるはず」そう信じてただ耐えていた。


 しかし、それも無駄だった。気が付けば入学式に逆戻りし、いつの間にかアンナをいじめていることにされて、学園で孤立する。

 ついに、ルーナが数えるのもやめたころの世界でアルバートから婚約を破棄された。

 初めて言われたときはショックだったがそれ以降の繰り返しでは婚約破棄は当たり前になり、ルーナもあらがうことをやめた。


 「いじめが本当なら」と真犯人を探そうにもアンナの周辺を探るのは疑いを深めるだけで、協力者もいない中、ルーナはなすすべもなかった。

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