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或る少女の夢
_______夢の中に居た。
広い庭だ。池には錦鯉が泳ぎ、菖蒲が咲いている。朗らかな日光が草木を照らし、風が髪を乱す。
自分はその庭を歩いている。
前では、よく知っている「誰か」が歩く。
「誰か」は、自分の方に振り返った。その顔は見覚えのあるようで酷く朧気だ。
池には静かな波が立つ。
木の葉が風に吹かれて揺れる。
「誰か」は何かを言った。
そこで夢は終わった。
鳥の囀りと共に、見知った天井が映る。
治蔵夜凪、16歳。
また今日も、いつもの一日が始まる。