後日談ーⅱ
ハーシェル王子が王になった日。
そろそろハーシェル王子が到着するだろうという予測のもと、ネストル団長をはじめ、先王陛下の近衛騎士たちは騎士団を辞し、朝からハーシェル王子の到着を待っていたという。
ラグナル様は、「時が来れば必ずわかる」とだけ言われ、最後の命令に従い、騎士団の人間が動くのをとどめていたそうだ。そしてその「時」は、新王が立ったときに、王宮内の空気が明らかに変わったことで理解したという。
そして玉座の間に急いでみれば、途中で、殉職したネストル団長をはじめとする騎士たちの骸に遭遇し、次の王にと目されていたクレイセス様とサンドラ様が、ハーシェル王子に対して首を垂れる姿を目撃したのだ。
このとき、自分の役目も自覚した、とラグナル様はまだ語る。
ハーシェル王が三日で戴冠式と婚姻発表、とか言ったので、とにかく城を最低限掃除すること、それからフィルセインに寝返っていない貴族に対してその日のうちに書面を書き送ること、それを無事に本人に届けること、新王即位の書類を作成すること、などがすべて、騎士団の手で行われた。
とにかく、王宮には人がいなかったからだ。後宮で王が殺戮を行ったのを機に、下働きの者たちは皆逃げ出してしまっていた。
「でも、何より悔しかったのはあれですね。クレイセス殿の情報操作が功を奏した婚姻発表です」
「情報操作?」
「言い方が悪くて申し訳ない。いまだにやっかんでいるもので」
率直なラグナル様にちょっと笑ってしまうと、ラグナル様も少し笑って、説明を続けられた。
「ハーシェル王が一気に民衆の心を掴んだのは、ユリゼラ様の功績なのですよ。それを利用したクレイセス殿の策略と申しますか」
いまひとつ飲み込めないわたしに、ラグナル様が歯がみをするようにおっしゃった。




