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Ⅶ 新たなる王ーⅴ

 ユリゼラはこういうことかと、つられて膝をつきそうになるのをこらえた。ハーシェルが王位に()いたこの瞬間に、立場が変わったのだと、「違う」のだと、彼らから突きつけられた気がしてしまう。これまでの旅で、彼らとハーシェルの距離が如何に近いものかを見てきた分、これは「表向き」なのだと、頭ではわかっていても。


 ハーシェルは疲れに任せて、玉座に腰を降ろした。

 なんの感慨も、湧いてこない。ただの、古くて大きいだけの椅子。

 これが示す権威の大きさに、これから自分は、呑まれずにいられるのか。


 ハーシェルは自分の願いを入れて立っているユリゼラに手を伸ばし、隣に来るよう促した。

 優しいまなざしで頷いたユリゼラが登壇し、ハーシェルの手を取ったとき。


 広間に新しい手勢が入って来る。


「これは……」

 王立騎士団の、黒い騎士服を着た者たちだ。

 私服とはいえ、セルシア騎士団の長官たちが壇上の二人に頭を下げているのを認めると、軽いざわめきが走った。

 しかし。


「ネストル前団長より、引き継ぎを受けております」

 騎士団長の肩章を下げた男がそう言うと、入ってきた五十名ほどの騎士たちが、ザッと一斉に、騎士の正礼を取って片膝をつく。


「我々はハーシェル王に、誠心より恒久の忠誠を誓います」

 そう言って下げられる頭に、ハーシェルは笑った。


 ネストルは、何も持たぬまま立つ自分に、騎士団くらいはと残してくれたらしい。

 ここにいるのが、皆三十前後と年の若い者たちばかりであるのが、いい証拠だ。顔と名前が一致する者が、半数ほどもいる。


「我々セルシア騎士団も、新王の即位を心よりお慶び申し上げる。セルシア不在の今、新たなるセルシアが立極するまで、ハーシェル王の麾下(きか)に入ることをお許しいただきたい」


 騎士団は巻き込まない、と言っていたクレイセスだが、ハーシェルが王として玉座に着いた今、ヌケヌケとそう言い放つ。


 しかし、今はそれが必要だった。


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