Ⅵ 凱旋ーⅹⅹⅱ
「とりあえず、一つ目の人望か?」
マルヴィンのうしろ姿を見送りながら微笑むサンドラに、ハーシェルは言う。
「一つ目とかいうな。お前たちが付き合ってるのも俺に対する人望だろ」
「腐れ縁だ」
ガゼルに即答され、可愛くねえ奴、とひとりごちる。
ひとまずは王宮内の警備がどうなっているのか、自分は父の元に行くことが出来るのかを把握しなければならない。ガゼルかサンドラか、現状を探りに行ってもらうか否かと思案していると。
「ハーシェル!」
懐かしい声がした。
「無事で良かった……!」
振り返ると、従弟であり、セルシア騎士団の団長であるクレイセスが、ぐっとハーシェルを抱きしめた。
「フィルセインに捕まるんじゃないかと、冷や冷やしていた」
すぐに離れると安堵した顔でそう言われ、こいつ仏頂面以外も出来るんだな、などとずれた感想を抱いてしまう。仲は良いが、表情は読みにくい。
そうしてユリゼラに目を留めると、貴族の倣いに従い、手を取って軽く掲げる。
「クレイセスと申します。よく、おいでくださいました」
ユリゼラも名乗って軽く腰を落とした礼を返すと、クレイセスは少しだけ笑んで手を離した。
「ハーシェルが戻って来るならここからだろうと踏んで、自主巡回してた甲斐があった」
「一人でか?」
「当然だ。俺一人の立場でお前に加担しようとしてるんだ。騎士団を巻き込むのは本意じゃない」
「まあ、そうだな」
言われて、クレイセスが団服でないことに気が付く。帯剣しただけの緩い私服に、その配慮が見てとれた。
「陛下は、お前を待ってる」
不意に言われ、ハーシェルはクレイセスを見つめる。彼の深い青は、真剣だった。
「医師によれば、恐らく長くもないという診立てだ」
「父に、会えているのか」
目を伏せて首を振り、クレイセスは説明する。




