Ⅵ 凱旋ーⅹⅹⅰ
今は王宮全体が、重苦しい空気に包まれているように感じた。いつもなら動き回る宮仕たちの姿をそこかしこに見ることが出来るのに、今は誰もいない。無人の、どこか廃屋にも似た空虚さに占められている。
「これから、どうするんだ?」
マルヴィンがおどおどと周囲を見回しながら訊ねる。
「そうだな……とりあえず、現状をどうにかして知らなくてはならないな。でもマルヴィン、ここまでで大丈夫だ」
「え?」
「恐らくだが、ここから先にいるのは自分の意思で残っている者ばかりだろう。王統院にも手練れの騎士はいる。俺は王を倒すために戻って来たお尋ね者なんだろう? だったら、現王を守るための王立騎士からすれば、俺はわかりやすい敵だ。あいつらを倒しながら王座までたどり着くことが条件なら、この人数だしな、ちょっと分が悪い」
「そりゃ……俺は戦うとか出来ないけどよ……」
「ここまで連れて来てくれて、本当に感謝している。報酬だが……」
「報酬は!」
マルヴィンはハーシェルを遮る。
「お前がちゃんと、王様になってからでいい」
視線を横にしたまま言うマルヴィンに、ハーシェルは笑う。
「ならなかったら、ただ働きだぞ?」
「馬鹿かお前は。だからちゃんと王様になれって言ってんだ! 途中で殺されんじゃねえ! ……言わせんじゃねえよ」
目を赤くしてそう言ったマルヴィンに、ハーシェルは「すまなかった」と微笑む。
ここまで、命がけの旅を一緒にして来たのだ。本当は最後まで一緒にというべきなのだろうが、自分の手勢は驚くほど少ない。
「王様になったら、物入りだろ。このご時世だから何もかもって訳にはいかないが、それなりのものは揃えてやる」
「そうだな。俺は、王になるにしては何も持ってないからな。だったら……」
マルヴィンの気持ちに感謝して、ハーシェルはそっと耳打ちする。
「……わかったよ。一番映えるやつ、用意してやる」
そう言うと踵を返し、マルヴィンは姿を消した。




