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Ⅰ 旅立ち― ⅶ

 「すっげ~……」

 感嘆の声を漏らす商人たちに、ハーシェルは涼しい顔で振り向いた。


「お前……すごいな! めちゃくちゃ強えぇ……!」

「それほどでも。相手が強くなかっただけだ」


 ハーシェルは自分の名前をダリと変え、声をかけてきた男・マルヴィンが率いる商隊の護衛として、旅をしていた。


 治安は悪く、スリや盗賊にも何度か()った。そのたびにハーシェルは難なく退治、近くの治安維持部隊へと放り込んだ。一度などは賞金首で、それなりの額も手に入れた。


「まったまた~。これでまた、お前に惚れる女が増える訳だ」

「女性というのは、乱暴者が嫌いなんじゃないのか」

「ダリの場合は別だろうよ。お前には粗野なところがない。どんな理由で旅してるのかは知らねえが、金のある場所で育ったに違いねえ」


 マルヴィンの鋭い指摘に、ハーシェルは内心で舌を巻く。

「さてね」

「それにしても、その腕はどこで覚えたんだよ? 今までの護衛ん中じゃ、お前が一番強い。しかもずば抜けて」

「それはどうも。師が良かったんだよ。仲間も強かった。謙遜でなく、俺より強いのなんかごろごろしてたんだ」

「へええええ」


 感心しながら、マルヴィンは今し方の小競り合いで緩くなった荷物の紐を括りなおし、中の荷を整えた。


 集団による襲撃を、ハーシェルはいつも、こともなげに片付ける。しかも今回は、今までで一番数も多かった、それにもかかわらず、だ。

 被害は多少荷が崩れた程度。それも中身に被害はなかった。マルヴィンにしてみれば、これは驚嘆に値する。


 一方のハーシェルにしてみれば、幼い頃から世界の一柱(ひとはしら)であるセルシアを守る騎士団に出入りして鍛えた腕だ。痛め付けられるに近い対複数戦の訓練も受けた身としては、あまり無様な負け方はしたくない意地がある。幸いこの旅に出てからは、手応えに感じられるほど強い者には遭遇しなかった。


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