表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/97

Ⅵ 凱旋ーⅹⅵ

「俺の本当の名前はハーシェルだ。マルヴィンに会ったあの日、城を出たところだった。皇太子が降ろされて、次に立てる王についての争いが始まっていた。俺はその争いを少しでも小さくしようと思って、城を出たんだ。王位に就く気はないという、意思表示のつもりもあった」


 放心したように聞いているマルヴィンに、ハーシェルは言う。


「だが、兄も姉も、皆殺された。父上の心神喪失も、もう見過ごせないところまで来ている。だから俺は、父を倒して、王位に就く」


 何も言わずに固まっていたマルヴィンは、やがてへなへなとそこに腰を下ろした。


「ハーシェルっていや、フィルセインが探してるお尋ね王子じゃねえか……」

「だから、知らなかったことにしろ」

「いや、無理だろ」

 泣きそうな目でハーシェルを睨んだマルヴィンだったが、すぐに肩を落としてチラリとガゼルたちを見遣った。


「長官が護衛してたのは、姫さんじゃなくてこいつだったのか」

「まとめてだな。ユリゼラ殿は、界王妃になる方だ」


「なに……?」

「こんなに器量と頭脳が備わった姫も珍しいからな。ハーシェルの女を見る目が確かで安心した」

 戸惑うマルヴィンに、サンドラが気安い口調で言う。


「俺はてっきり、あんたと姫さんが出来てるんだとばかり思ってた」


 移動中、ユリゼラはずっとサンドラと会話を愉しんでいた。傍目から見ると、そのように見えたのは仕方がないだろう。ユリゼラは、「レフレヴィー様」とサンドラのことを家名で呼ぶし、騎士服を着込んだ外見からは、サンドラが女性であるとは判断しにくい。


「悪いが、わたしは女だ」

「へ?!」

 目を丸くしたマルヴィンは、「あんたが、かの女騎士か……」とまじまじとサンドラを見つめた。声も低いし、女性が好みそうな綺麗な男、くらいにしか思っていなかった。


「王都では、女騎士に焦がれて道ならぬ恋を覚える姫さんたちがいるって、吟遊詩人が歌ってるくらいだから、どんなんだと思ってたんだが……」

 なるほど、と得心する。


「その吟遊詩人てのは誰だ? よく覚えておきたいな」

「いや、それは……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ