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Ⅵ 凱旋ーⅹⅳ

 新しい命を生むために、空と海は互いを惜しみつつ別れ、大地が生まれた。空は(いかづち)が走り、海は逆巻き、大地は火を噴いて荒れ狂い、多くの年月(としつき)を経て、産みの苦しみ、産まれた苦しみから解放された。そしてここに空の世界・ゼグリア、海の世界・フィラ・イオレ、そして大地の世界・レア・ミネルウァが誕生する。


 三者にはそれぞれに多くの命が宿った。しかし各世界に人が生まれると、人は発展するために争った。その争いは、各々の世界を(むしば)むほどのものだった。世界はそれを、裏切りと嘆いた。


 世界は様々に荒れ狂い、多くの人が命を落とした。数を減らした人は、世界に問うた。荒ぶる世界よ、どうか鎮まり給え、と。世界はその声を入れ、それぞれ一人を遣わした。


 ゼグリアには、雲間から。フィラ・イオレには、海溝から。レア・ミネルウァには、大樹から。彼らは世界と人とをつなぐ役目をもって顕現(けんげん)した。


 そしてそれぞれの人に伝えた。「人の子を統率する王を決めよ」と。人が争い、無用の血を流すことが世界を汚す。争わぬ為に、王を決めよ、と。そこで各世界の人間は、一人の王を立てた。世界は王の血に約束を与えた。人心を掌握し、争わぬ限りはおとなしくしていよう、と。しかし無用の血を流し、祈りを忘れたそのときは、容赦はしない、と。




 いったん言葉を切ったユリゼラに、マルヴィンが変な顔をする。


「大地ってのは、恵みをもたらすだけの存在じゃないのか」

「ええ。こちらが誠意を忘れたときには、代償を求める、と言っているのです」

「……もともとは、怖い存在なんだな」


 常日頃から、人は大地の恵みに感謝の祈りを捧げる。しかし「鎮まっていてくれ」と祈ったことはない。


「悪い、まだ続きがあるんだろ?」

 促すマルヴィンに頷き、ユリゼラは続けた。


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