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Ⅵ 凱旋ーⅹⅲ

 外の様子は見えなかったが、街に入ったというのに静かだった。しかも、異様に。


「ああ。ここもいい街だったんだがなあ……人が、ほとんど見当たらなかった」

 マルヴィンは疲れたように言った。


「それに、復興も進んでないみたいだしな。悪いが、今夜は野宿だ」

 その声を合図に、詮索はあとにして皆は野営の準備に動き始めた。


 昨夜、初雪を観たほどの寒さだったが、今日は幾分寒さが和らいでいる。しかし体調を崩さぬよう、しっかりと暖を取っておくことは重要だ。


 土を掘り、焚き火の準備をする。周囲の小枝を集めたり、近くの川から水を運ぶなどして、簡易ながらもあたたかい食べ物が出来上がる頃には、周囲はすっかり、夜の(とばり)に覆われていた。



「なあ、教えてくれないか」

 簡素な食事をしている間も、いつもなら口数の多いマルヴィンはずっと黙っていた。食べ終えて、焚き火に当たりながら、マルヴィンがようやく口を開く。


「なんで、こんなことになってるんだ? 王様がおかしくなっただけで、こんなにも世の中回らなくなるのか」

 検問を抜けてからは塞いだ雰囲気のマルヴィンに、ハーシェルはどう答えようか迷う。


「王様もですけど……この大きな地震が起きたのは、セルシアが不在の所為です」

 ハーシェルの逡巡を見て取ったユリゼラが、静かに言った。


「マルヴィンさんは、創世記、ご存知ですか?」

「ああ……いや、あんなのはどうせ作り話なんだろう? まともに読んでねえよ」

 少し小馬鹿にしたように答えたマルヴィンに、ユリゼラは気分を害した様子もなく続ける。


「そう思っておいでの方は多いのですが、あれは、記録として本当に残っている箇所のある、『歴史』なんですよ」

「そう、なのか?」

 頷くユリゼラに、マルヴィンは訊く。

「創世記って、じゃあ、どんな話なんだ?」

 興味を示した彼に、ユリゼラは歌うように口を開いた。


「その昔、空と海はひとつだった」


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