Ⅵ 凱旋ーⅺ
「すでに主立った貴族も何人かは殺害され、王統院は機能を失っている状態だ。王都に進軍してきているフィルセインに殺された者、寝返った者もいる。大きく書き換わった勢力図の中でなら、友人たちの家柄だけで、俺のうしろ盾は十分だ」
「友人たち、ですか」
「アリアロス公爵家、ジェラルド侯爵家、レフレヴィー伯爵家の三家はすでに約束を取り付けている。他にもアルデバラ公爵、スクルーズ男爵から、内諾を得ています。ロムニア男爵、あなたにも、ご協力をいただけたらありがたい」
すでに錚々たる家柄を押さえているハーシェルに、男爵は眉間にしわを寄せる。
「それに、私の代においてのみですが、後宮を廃止します。ユリゼラ以外の妻は娶らないと約束する」
これにはユリゼラが大きな目でハーシェルを見つめた。
「そんなこと……」
「もう準備は進めている。あなたに相談しなかったのは申し訳ないが、家柄を理由にあなたを潰されるのは、俺も困るんだ」
優しく諭すように言うハーシェルに、ユリゼラはうつむく。
しかし、男爵がそっと、ユリゼラの手を取って言った。
「良かったな、ユリゼラ」
小さな頃と同じように、ぽんぽんと、ユリゼラの手を撫でる。
「ちゃんと気持ちが通じていて」
「お父様……では」
「お前が、初めて掴んだ恋だろう? 行っておいで」
体が弱く、恋のひとつも満足にしてこなかった娘に、男爵は優しいまなざしを向ける。
「殿下」
その同じまなざしを向けられ、ハーシェルはまっすぐに男爵を見返す。
「ユリゼラを大切にしていただけるとお約束くださるのでしたら、すぐにでも表明しましょう」
「ありがとうございます。私はユリゼラ殿の聡明さに、今後助けられることは多いでしょう。大切にすると、約束します」
「あなたはダリ殿のときから、誠実な方だ。それを信用出来ます」
安心したようにそう言った男爵に、ハーシェルはユリゼラと微笑みあった。
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